文章理解の心理学: 認知,発達,教育の広がりの中で

制作 : 秋田 喜代美  久野 雅樹 
  • 北大路書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762822285

作品紹介・あらすじ

70年代から現在までの、「文章理解」に関する認知心理学、教育心理学の成果を概観し、「文章を読む」ことにかかわる心理学的内容を、体系的にまとめた初めての書。文章を読むことはあらゆる活動の基礎となり、教育的、応用的なトピックまで論じることにより、実際的な応用まで展望する。

感想・レビュー・書評

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  • うちのクラスの女の子が、「少年の日の思い出」を読んだ際に、「全く内容が頭に入ってこない」と言っていたことを受けて読もうと思った本の二冊目。以前に読んだ『読む心・書く心』と比べると、専門性が高く、少し読みづらい。そして、最初の「全く内容が頭に入ってこない」中学生の状態を理解するのに、初読では有益な情報を抜き出すことができなかった。再読の必要がある。

    どうしても、第1部で説明される「文章理解の認知過程」から、第2部「読むことの発達・熟達」、第3部「教育における文章と活動」への関係が、自分の中でしっくり落とし込めない。第1部で、人間が語の連なりから文章の意味を形成していく認知過程が細かく説明されているのであるが、結局、そうした認知過程が、どのように発達していくのか、第2部での子どもの絵本や文章への関わり方や読みの生涯発達といった話と繋がらないのである。第3部の個々のテキストの学習や、具体的な授業実践の話までになってくると、もはや、最初の認知処理の話とは無関係に、よく見る授業活動の話だなあ、となってしまう……。

    実際のところ、文章の認知プロセスについて理解することで、子どもたちの読んでいる姿の解釈が、どのように変わるのだろうか。ここのあたりを明確にしていきたい。

  • 幅広い分野で、よくまとまっている。文章理解研究はこれ1冊でOKなんじゃないかと思うくらい。欲を言えば、「どう育てるか」のところ、特に、児童ではなく高校生以上の読解力をどう伸ばすか、というところに焦点を当てた論考を読みたかったな、と思う。

  • 文章理解研究の基礎文献。各論ともに掘り下げ方は浅いので、参考文献をさらにあたる必要があるが、それぞれの入り口としてはよくまとまっている。

    ・目次をしっかり読み、全体構成をある程度把握してから本文を読むと理解が促進されることが今までの文章理解研究で分かっている。
    ・接続語をたくさん挿入することは、推理能力の低い学生に対しては文章全体の意味をつかむ助けとなり、文章内容の記憶を促進する。
    ・虚偽の記憶:捜査などの尋問への応用。
    ・嘘をつくことの善悪は日本では相手の気持ちの問題であるのに対して、アメリカでは社会的ルールを違反しているかどうかの問題。
    ・知的好奇心=既有知識と関連、情動的興味=生理的覚醒の強さに関連
    ・『大きな木』の文化による相違(P86)
    ・中2生徒の読解力の差は5学年
    ・女性は一貫して男性より読むことに対して肯定的態度を持つ(P154)
    ・文法中心の教授法は知的能力の高い生徒、コミュニケーション中心の教授法はあまり高くない生徒によい。
    ・criticalというのは、じっくりと慎重に検討する、というのが本来の意味。
    ・批判的読解のためのチェックリスト(井上 1998)P248

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著者プロフィール

大村 彰道
東京大学名誉教授,元慶應義塾大学文学部教授。教育心理学,認知心理学。
『教育心理学Ⅰ―発達と学習指導の心理学』(編著,東京大学出版会,1996年),『文章理解の心理学―認知,発達,教育の広がりの中で』(監修,北大路書房,2001年),『教育心理学研究の技法』(編著,福村出版,2000年)。


「2013年 『教育心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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