京大式DEEP THINKING

著者 :
  • サンマーク出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763136411

作品紹介・あらすじ

「浅い思考」でよしとしていないか?現役・京大デザイン学教授が伝授!「考え抜く力」を深め、「課題と解決法」を見抜く力を養うすべての思考法のエッセンスを凝縮した究極の「思考の書」。

感想・レビュー・書評

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  • 「深く考える」について論じた一冊。
    はじめの方はひたすら鉛筆の話をしていて、「何の本だこれ」と思っていたのだけど、最後まで読み通すと、「便利なこと、早いことばかりが良しとされる現代に警鐘を鳴らす本」であったし、「『不便益』の一端を垣間見れる本で、とても興味深く読んだ。


    文中で、AIの「ディープラーニング」の話が出てきて、「AIはディープラーニングにより、かつて人間が行なっていたように『深く考える』ことを必死にやろうとしている」と論じられる。
    「人間は考える葦である」とパスカルは言ったけど、「便利」や「スピード」に流されて考えることをやめてしまったら、我々は人間で無くなるのかもしれない。

  • 【感想】
    「深く考えること」そのものの重要性をもっと考えようと思い、手にした1冊。

    作者は京大の教授のようで、確かに深く考えられる事が必要な職業だと思う。
    対して自分は、決して浅はかな思考や言動はNGだけど、やはりある程度は見切り発車で進めて都度々々の修正を行なう事が要求されている。
    理由として、ビジネスにおいてスピードが遅いと、いくら熟考したとはいっても、その頃にはそれをアウトプット(発揮)できる場はなくなっている可能性があるからだ。
    なんてことはない。全否定するつもりも毛頭ない。
    どちらが正しいとかではなく、筆者と僕では身分や職業として「深く考える」必要性や方向性が違う。それだけのことだ。
    少なくとも今の自分には、これほど哲学的に物事を深く考える時間なんて、正直あまり用意されていないなーとも読んでいて感じた。

    だが、僕のようなスタイルで仕事を進めていく上で、気を付けなければいけない点は3点ある。
    ・安直に何も考えずに物事を判断し、進捗する点
    ・エビデンスがしっかりしていない、ウケウリの薄い知識だけで突撃してしまう点
    ・PC的な説明になってしまい、論理的にはOKだが相手の実感を得られない点

    以上のことを考え、総じて感じたのは、ステレオタイプを脱却できる程度には深考し、ウケウリや教科書通りではない「自分の言葉」でうまく物事を進める事ができるかどうか、だろう。
    プロセスを省いて答えばかり教えてもらったその先には、人としての経験値はそれなりのモノでしかなくなってしまう。
    そうならないためにも熟考や失敗・挑戦を繰り返し、ぶつかりながらも色んな寄り道をして、思考回路や経験という自身の「道筋」そのものを広くしていくことが大切なのかもしれない。

    スピードだけを意識するのではなく、しっかりと自分自身振り返りを持って思考を繰り返し、定期的なメンテナンスを行なっていこうと思いました。


    【内容まとめ】
    1.頭が良いとは、「=深く考えられること」である。
    頭の良さとは、決して点数だけでは測れない。
    仕事の上でも生きていく上でも、役に立つのは「深く考える力」なのである。

    2.「think < action」の落とし穴
    安直に何も考えず、どこかの本やセミナーで得た「受け売りの理由」に、一方向かつ一心不乱に邁進していくと、「自分らしさ」を放棄してしまうこととなる。
    頭は空っぽになり、行動はスピーディになるが、果たしてそれでいいのか?

    3.「PC的な説明」と「鉛筆の手書き的な説明」併用の必要性
    不特定多数の人に伝えるには、「PC的な説明」が適しており、デフォルトである。
    しかし、「論理的であればOK」ではない。
    いくら論理的でも「実感」が伴っていなかったり、相手にとって気に食わない意見だと、結局は受け入れられず、思った通り「論理的」には届かない。

    4.「わざ言語」を用いて思考することは、深く考えながら「自分ならではのユニークさ」を生み出す訓練
    マニュアルを用いると、成長や上達には限りがあり、わざ言語はマニュアルとは対極にあるといえる。
    わざ言語で思考して何かを学ぼうとしたり、人に伝えようとすれば、必然的に時間がかかる。
    だからこそ独自性が生まれるし、オリジナルなやり方や自分なりの工夫を生み出す喜びがあり、その喜びに身をひたすことができれば「考えること」への苦手意識も弱まっていくだろう。

    5.「自分だけのユニーク」こそが、これからの社会を生き抜く「自分だけの強み」になるのではないだろうか。
    「深く考えること」で自ずと得られる益の一つが、プロセスを味わうこと、すなわち経験をすることである。

    6.マイクロスリップ
    発達心理の研究分野では、「しまった」と言うほどでもない小さなスリップ(失敗)を「マイクロスリップ」といい、人間の成長に非常に大切なものだという。
    失敗せずに毎回同じタスクを同じ行動でこなしていると、人は成長せず、新しいことが見つからない。
    マイクロスリップをきっかけに新たな発見をし、成果を果たす。
    そのプロセスこそ、あなたの経験と実感の痕跡なのである。


    【引用】
    ・「深く考える」ことを考え、1冊を通して「考え抜く力」を高める本。
    頭が良いとは、「=深く考えられること」である。
    頭の良さとは、決して点数だけでは測れない。
    仕事の上でも生きていく上でも、役に立つのは「深く考える力」なのである。


    p26
    「深く考える」とは、たとえば未知のものを目にしたときに、それは何なのかを考え抜いた末に、まったく新しい概念が自分の中に形作られること。
    新たな面を見ようと模索・思案する道筋そのものが「深い思考」となる。


    p33
    ・「think < action」の落とし穴
    安直に何も考えず、どこかの本やセミナーで得た「受け売りの理由」に、一方向かつ一心不乱に邁進していくと、「自分らしさ」を放棄してしまうこととなる。
    頭は空っぽになり、行動はスピーディになるが、果たしてそれでいいのか?


    p52
    この世で絶対に破られないと言えるのは、「物との約束」「物のコトワリ」だけだ。
    この世に万有引力が存在する限り地球はバラバラにはならない。

    しかし、「人との約束」には、いつ何時「嘘をつかれる」かは分からない。
    それを知らず知らずに呑んでしまっている状態は、その分思考を省いてしまっているといえ、思考を深める機会も逃している。


    p64
    ・「仕事ができる人」とは、具体的にどういう人なのだろうか?
    頭がいい人
    =深く考えられる
    →仕事に役立つ答えを出す可能性が高まる
    →その答えを使って仕事で結果を出す
    →仕事のスキルが上がって「できる人間」になる


    p78
    ・リスクホメオスタシス
    →危険がありそうだと慎重になるが、危険を感じないとリスクを冒す。

    ・ホメオスタシス(恒常性)
    外部がどう変化しようと一定を保とうとすること。

    人がどれだけモノにつられやすいのか。
    安全性が高ければ高い分、差し引きゼロにするためにリスクを自身で高めてしまう。


    p89
    ・「PC的な説明」と「鉛筆の手書き的な説明」併用の必要性
    不特定多数の人に伝えるには、「PC的な説明」が適しており、デフォルトである。
    しかし、「論理的であればOK」ではない。
    いくら論理的でも「実感」が伴っていなかったり、相手にとって気に食わない意見だと、結局は受け入れられず、思った通り「論理的」には届かない。


    p96
    「わざ言語」を用いて思考することは、深く考えながら「自分ならではのユニークさ」を生み出す訓練といえる。
    経験も要らず、解釈もいらず、誰がやっても同じように再現できるマニュアルは非常に便利なものだ。
    しかし、成長や上達には限りがあり、わざ言語はマニュアルとは対極にあるといえよう。

    わざ言語で思考して何かを学ぼうとしたり、人に伝えようとすれば、必然的に時間がかかる。
    しかし、だからこそ独自性が生まれるし、オリジナルなやり方や自分なりの工夫を生み出す喜びがあり、その喜びに身をひたすことができれば「考えること」への苦手意識も弱まっていくだろう。


    p133
    「この方法1つですべてうまくいく」と教えられたら確かに楽だし、買う理由にもなりやすい。
    自分に合ったやり方を探してあれこれ試行錯誤し、失敗したり遠回りをしたりしなくて済む。
    効率良く「正解」に辿り着けるのだ。
    だから人は「1つの解決法」に惹かれるのかもしれない。

    だが、不便益を研究している私に言わせれば、そんな便利は許されない。
    一足飛びの解決は、プラスばかりではない。
    試すほうの「試行」も、考えるほうの「思考」も不要になってしまう。そこから生まれる「ユニークさ」や「あなたらしさ」は獲得できないだろう。
    実感や達成感も生まれない。
    要は「飛躍」がないのだ。


    p135
    「自分だけのユニーク」こそが、これからの社会を生き抜く「自分だけの強み」になるのではないだろうか。
    「深く考えること」で自ずと得られる益の一つが、プロセスを味わうこと、すなわち経験をすることである。


    p148
    ・3つの「見る」でプロセスの質を考える。
    1.「現在地」を見る。
    「悩む」とは「思考のプロセス」を辿ったことを示すのに他ならない。
    「今何をしていて、次は何をするか、今わからないことは何か」を明らかにして自分の現在地を明確にすること。

    2.「プチゴール」を見る。
    自分で自分のプチゴールを設定し、自分の本気度や習熟具合をチェックしよう!

    3.やりたくてやっているのか、「実感」を見る。
    自己感覚レベルでOKなので、一生懸命なのか否かをチェックすること。
    プロセスの質が高いものかどうかは、自分で簡単にわかる!


    p153
    ・マイクロスリップ
    発達心理の研究分野では、「しまった」と言うほどでもない小さなスリップ(失敗)を「マイクロスリップ」といい、人間の成長に非常に大切なものだという。
    失敗せずに毎回同じタスクを同じ行動でこなしていると、人は成長せず、新しいことが見つからない。
    マイクロスリップをきっかけに新たな発見をし、成果を果たす。
    そのプロセスこそ、あなたの経験と実感の痕跡なのである。


    p193
    深く考えるとは、思考の海には底がないからできることだ。
    すぐに底に足がつく「思考のプール」では、深い思考はできない。
    果てのない思考の海に深く潜り、「深く考える」ことを体得して新しい発見をしよう。


    p198
    「これで解決!」という便利さが思考を奪う。
    たった一つの方法でなんでも解決するなど、不便益学からすればそんな便利は許されない。
    たった一つの解決法だと思考停止に陥るため、分野を問わず科学者と呼ばれる人は「100%」というワードにはとても慎重である。

  • 物事の本質を見極めるために、どんなプロセスを踏むべきかを記した本。
    アイデアを生み出すには、足し算ではなく引き算していくと本質が見えてくる、という考えは納得。
    この時代、科学的、効率的なことを求めがちだが、深く考えることも必要。
    デジタルとアナログの融合を目指そう。

  • 鉛筆を相棒に深く考えようみたいな主旨でしたが、全く共感、納得できませんでした。
    書く内容がそれほどないのか、ただページをカサ増ししたいだけの駄文や、それを筆者も実感してるのか読者のツッコミを予想したセルフフォローがとてもイタかったです。

    残念ながら買わなくてよかった本でした…

  • 即答こそ仕事ができる人、と思っていると思考力が身につかない。
    鉛筆で書きながら考える。

    ドラえもん、未来の宇宙船で引き算を電卓に任せていたため誰一人引き算ができず、のび太が引き算をして脱出できた話。考える力だけを重視するとこういうことになる。

    素数物差し。

  • 手に取るのがすこしはばかられるタイトルで、内容はごく当たり前のこと(時間をかけて思考することの重要性)を訴えるのみで、これをやればよい、というハウツー本ではない(鉛筆の利用の推奨はあるが)。
    しかし「ものとの約束」
    (ー物理法則に基づく約束。鉛筆でものを描く、重力で手を離したものが落ちる、など。これに対するのが人との約束で、スマホをタッチすると画面が反応するというのはエンジニアリングによる複数の処理(=人)を介在。思考は実感に基づく行為に宿る)
    「不便益」
    (計算の話。簡単な計算方法なんてどうせ機械がやるからと端折って教育したら数学者は育たない。不便であるからこそイノベーションは起こる、リバースイノベーションに通ずる話)
    などAI研究者がたどり着い「人間らしさ」の解釈が面白かった。

    この本を手に取ってよかった。本書はあくまでも彼の概念を普及させるため、軽いノリで手に取ってもらえる、一般受けを狙ったタイトルなのでしょうか
    川上教授のウェブサイトで不便益メーカーを利用したが、20分ほどかかって入力した結果website not foundとなり、最強の不便(益)であった。他の本も読んでみる

  • 全体(203頁)をパラパラ読みし、各章のポイント頁を読み、0章の途中までで読むのを止めてしまった。
    深くじっくりと考え抜くことの大切さについて「不便益(=不便のメリット)」の立場から説いた本だと思われる。
    即答したAさんが、その場だけの頭の回転で答えたというのは著者の思い込みで、実は日ごろから自ら問いを立てて考え続けていたのかもしれず、プロトタイピングを早くというのも、そこで小さな失敗を発見しながら製品化を考えるための行為と考えられる。こうしたことを深く考えていない例として提示していることで、著者の一面的な思い込み、実は深く考えていないのではないかといったことが見える気がする。
    思考に関して「物との約束」と「人との約束」という切り口が紹介され、不変の物理法則とは異なり、故障やエラーが生じうる人為的ルールの介在が思考の省略につながるといった論が展開されているが、思考・言語が人為的約束事だと思うと、どこかこじつけ臭さが感じられた。すべてを読んでもいないのに批判的なコメントを書いたが、的外れだったら申し訳ない。
    著者がつけたものではないかもしれないが、京大式というタイトル自体が大げさだし、売れ筋を狙った無思考の最たるネーミングだと思う。しっかり、じっくりと反省した方がいいのではないだろうか。
    18-19

  • 【読書メモ】
    即決即答だけでは「浅い思考」になってしまう
    だから、ときには、深く考えることが必要、その解ではなくプロセスが大切など
    有用な点は多い

    ただ、上田正仁著「東大物理学者が教える『考える力』の鍛え方 想定外の時代を生き抜くためのヒント」 (PHP文庫)のほうがよかったかな
    シャープペンシルやボールペンではなくえんぴつをつかって思考する理由を1章まるまる使って説明したり、他のHowto本を見当違いの理由で批判したり
    やや微妙

    【以下再読のための備忘】
    ・深く考える力をつけるには、深く考えるしかない
    ・「深く考える」とは「プロセス」であり、必ずしも「最適解」を出すことではない
    =プロセスを省略せず存分にたどり、さまざまな発見をし、自分なりの答えを導き出すという営み
    ・単一の経験は成長につながらない可能性が高い、バリエーション豊かな1000通りのやり方を試して自分にとっての正しいや行方に出会える
    =経験前後で何が違っているかを意識することが必要
    ・質の高いプロセスのため、①「現在地」、②「プチゴール」を見る、③「実感」を見る

    【内容:アマゾン等から転記】
    「浅い思考」でよしとしていないか?現役・京大デザイン学教授が伝授!「考え抜く力」を深め、「課題と解決法」を見抜く力を養うすべての思考法のエッセンスを凝縮した究極の「思考の書」。

  • f.2023/1/7
    p.2022/6/17

  • 物事を深く考える癖がないので、思考力をつけるためにこの本を読んだ。

    率直に言ってビジネスの場では中々応用が出来ない内容だった。

    大学入試の評論文を読んでる感じだった。笑

    著者の言っていることもわからなくはない。
    ただ研究者など、ある種一般人な社会組織とは少し違った状況にある人向けの内容に感じた。

    そんな中でも良いなと思った部分は下記の通り

    ○バリエーション豊かな1000通りのやり方を実践し、失敗もすることでようやく自分に合ったやり方に出会う。
    ※ただ回数をこなせば良いと言うことではなく、様々なアプローチを行うことで、過程が経験となる。

    ○経験に実感が伴うには、経験前と経験後で何が違うかを明確に実感する必要がある。

    ○経験のプロセスを推し量るための3つの指標は「現在の立ち位置」「プチゴール」「やりたくてやっているかの実感」


    日常生活に活かしていきたいこと

    1つの事について、固定観念にとらわれず色々なアプローチを行なって効果を検証していく必要性があると感じた。パッと思いついたのは、ストレス発散法とか?

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著者プロフィール

川上 浩司(かわかみ ひろし)
代表著者
京都大学情報学研究科特定教授,京都先端科学大学教授,博士(工学)

「2020年 『不便益の実装』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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