空海『三教指帰』:桓武天皇への必死の諫言(かんげん) (世界を読み解く一冊の本)
- 慶應義塾大学出版会 (2022年4月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766425611
作品紹介・あらすじ
▼日本の最高峰の思想家、空海が若き時代に抱いた切実な想いとは――。
官僚を目指して大学で学んでいた空海は24歳の頃、『三教指帰(さんごうしいき)』を著わした。この書には、儒教、道教、仏教の三教を擬人化した人物が登場し、ある乱暴者をそれぞれの立場から矯正しようと説教をし、最後に述べられる仏教の教えに皆が感服する。序文には官僚になることを親戚に勧められた語り手が仏門へ入る決意を述べることから、この書はこれまで空海の「出家宣言書」と考えられてきた。
本書では、時代背景に照らし合わせて、空海が没落しつつある自己の祖先に抱いていた強烈な氏族意識を読み解き、この書の隠れたメッセージが、希代の専制君主・桓武天皇への命を懸けた忠言であったことを明らかにする、画期的でスリリングな一冊!
感想・レビュー・書評
-
学生時代の空海が本当に桓武天皇をいさめるために、上質の紙を使い形式をととのえて「聾瞽指帰」を書いたのかどうか、私には判断できません。
もし本当に書いたとしてもそれを桓武天皇に渡して読んでもらうつてがあったのかどうかもわからないですし。
まあ、空海くらいになるともう一般人とは考えの枠組みが違うんだろうし、若いころならなおさら中二病をこじらして本当に直訴をたくらんだとしても面白いかもしれません。
それよりも桓武天皇のほうに興味がわきました。
山部王。天智天皇系で、大学頭・侍従をやっていたとか。
母親は高野新笠。このかたの母親が土師氏であったそうで、この時点で土師氏は菅原・大江氏に装いを改める。
WIKIPEDIAで後宮のメンツを拝見してみたけど、特段政治性があって選択しているわけではなさそうに感じました。まあ深い理由があるのかもしれません。
交野は百済王氏の拠点であったとか。
天智ー天武の抗争が、この時代まで尾を引いているというのが、興味深いです。
その当時の大伴・佐伯氏の実直な人たち、あおりをくらって虐殺された東北の蝦夷といわれた皆様には気の毒としかいいようがないです。
戦争は、人間の仕業です。
後巻末にネットでアクセスできる情報の一覧が載っていました。これも助かります。
https://ja.wikisource.org/wiki/%E8%A9%A9%E7%B5%8C
詩経
文選
萬葉集
遊仙
https://zh.wikisource.org/wiki/%E7%99%BD%E6%B0%8F%E6%96%87%E9%9B%86
白氏文集
https://miko.org/~uraki/kuon/furu/text/waka/keikoku/keikoku.htm
經國集
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1119912
弘法大師真蹟全集. 第1帖 - 国立国会図書館デジタルコレクション詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
プロローグ──憤ふん懣まんの書──
第1章 空海の決意──天皇への忠と祖先への孝
1 空海とは誰か──これまでのイメージ
2 来歴──誰に向けて書かれたか
3 時代背景
4 空海の時代の儒・道・仏
第2章 『聾ろう瞽こ指しい帰き』を読み解く
1 表と裏のメッセージ
2 儒教の篇──暴君は誰か
3 道教の篇──風狂の隠者たち
4 仏教の篇──真の忠孝とは何か
第3章 忠孝の行ゆく末すえ
1 『聾瞽指帰』のその後
2 密教との出会い
3 完成の日──天皇即位の伝承
4 忠孝の行く末