オールドレンズの奇跡 (玄光社MOOK)

著者 :
  • 玄光社
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  • Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768304198

感想・レビュー・書評

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  • 2013/1/21読了。
    散歩の共に使っているレンジファインダー機のボディを修理に出したら1ヶ月かかると言われたので、その留守の間に遊んでみようと、ミラーレス一眼の型落ちを中古で買った。わずか2年前の傷ひとつない1200万画素機が7000円だった。恐ろしい時代になったものだ。
    これにアダプターをかませて古いジャンクレンズを取り付けて、試写がてら散歩に出た途中、立ち寄った書店でタイムリーに出会ったのが本書である。
    オールドレンズにはどうしてもクモリや変色、キズやカビなどが付き物で、そうなると描写性能は本来よりも落ちるわけだが、それを熟成した個性として楽しむというのが本書のテーマ。
    昨今はわざわざ「アートフィルター」なるものをカメラが掛けてくれたり、iPhoneなどでもレトロな雰囲気に加工してくれる写真アプリが人気だったりするが、それらがある種のCG化であるのに対して、こちらは光学的に生み出された本物の写真効果である。しかもその効果はそれぞれのレンズが数十年を経るうち偶然に醸成されたダメージによるものだから、時間という職人が手作りした一点もののビンテージ工芸品とも言える。
    本書はレンズの来歴、製造された時代の背景、そして筆者によって撮影された作例(のレベルを超えた、もはや作品)で構成される。優しく品のある描写のカビ玉、びしりと芯の決まった描写を残す名玉、トイカメラ顔負けのファンタジックな描写をする油まみれ玉(?)など、どれも個性的。見ているだけでも楽しいが、真似をしたくなるのも人情。だがそこは自己責任で。カビを味方にするなんて、実は相当なテクニックがいるはずだし、リスクの高い博打になる。
    ちなみに僕の試写散歩の戦果だが、50年前のカビ玉にも関わらず、まったく普通の写真が普通に撮れてしまった。昔の光学技術が凄いのか、今のデジタル技術が凄いのか、それはそれで驚くべきことだが、撮影者の腕が凡庸であることが際立つ結果となった。レンズが古ければいいというものではない。この世界は奥が深い。

著者プロフィール

米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学びながら、CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後、写真家 塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー、映像作家として活動開始。新しい技術をいち早く取り入れ、写真や映像表現に活かしている。現在は、雑誌、広告を中心に、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。講演や執筆活動も行っているほか、ニコンカレッジなどでも講師を務める。また、YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」で写真、旅、カメラについて情報発信中。

「2023年 『Nikon ニコン NX Studio パーフェクトガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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