- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768316030
作品紹介・あらすじ
これまで言葉と絵で「物語」を表現してきた作家、安達茉莉子の初エッセイ集。日々の出来事や感情を丁寧に瑞々しく掬い上げた文章と、心に明かりを灯すようなイラストレーションで確実にファンを増やし続けてきた彼女が満を持して送り出す本書はきっと多くの人に自分自身を真っ直ぐに見つめるきっかけを生み出す、毛布のようにあたたかな1冊です。
装丁:惣田紗希
校正:牟田都子
感想・レビュー・書評
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アーノルド•ローベルが妻子ある身でありながら晩年ボーイフレンドと共に過ごしエイズで亡くなった話が衝撃的だった。
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なんて柔らかくて、優しく、素敵な言葉たちだろう
こんなふうにゆっくり、丁寧に、時を生きていたいと思った
――思っていたことを、思い出した。
それも日常に生まれるように、無くなっていく感覚があって、抗うように、言葉を求めていたこともあった。
私の言葉はバズらないし、誰かに向けて、というより、私の中で鳴っているものだった。それは私を守り、支え、生きるために必要な言葉たちだった。こんなにも多くの人たちを照らせるようなものではなくて、ひっそりと私の中で燃えて温めている言葉だった。
今は、もういいかな、という思いがある。だって、こんなにも美しい言葉を紡いでくれる人がいる。私がこうありたいと思った理想を地で行く人が、彼方を行き、灯火のように照らしてくれている。だから、きっと大丈夫。そう思っている。きっと私にしかできないことがある。
悩み相談室を受け付けていることから、色んな人が訪れる。その人の数だけの悩みがある。その人たちの話を聞きながら、私は本など形にすることを選んだのではなく、その人にとって大事な言葉をその時に即興で差し出すことに特化させたのだった。私のもとに訪れる人は待つことのできない「今」悩んでいて、「今」言葉がほしいのだった。私は本という形にあこがれていたが、私の本領とはその応答の中にあった。スタイルが違うのだ。どちらが良いということではなく。でも私が励まされて、そのスタイルに進めたのは、美しくも眩しい言葉を紡ぐ人が勇気をくれたからだ。間違いなく、その優しさを受け継ぐように、私は出会う人に、できる限りの言葉を考える。
この本には、安達氏の言葉の成分が詰まってる。毛布、火、哀しみ、夜、月、死、祈、大切な人の記憶、日常、宝物。安達氏の言葉は、丁寧に寸分の狂いもなく、ぴたりと自己に一致しようとする。それは正直で誠実であり、とてもまっすぐな光みたいだ。
だから、私は、その言葉の形に共感したのだ。
それは同時に、まっすぐ過ぎて、時々眩しすぎて直視できないというか、
思わず、手で遮るかのように、顔を背けてしまうようなところもある。
抜き身の生々しい言葉たちだ。
自分の在り方について、生き方、仕事、性色んな要因の一つ一つに、安達氏はまっすぐに向き合う。ごまかしなどない。透明な湖かのように。私はそのひたむきさに、少し怯んでしまった。
男である自分にどれだけ自信があるだろう。むしろ男らしさなんてたいしてないし、きっと私も否定している。いや、絶対。でも自分が男であることに救われてきたのも事実だ。私の在り方は、女性性の要素が多く、男性的な部分は意識して使うようにしている。それが社会で生きる術だ。「男として」もとめられたら途端に自信をなくして、へたをしたら存在だって揺らいでしまう。こう書いていて、なんて中途半端なんだろう、とか思ったりしたけど、この男性性は間違いなく、私の人生にとって、必要なものだった。それは絶対。そして、その一人義理の男性性が、私を、そして私と関わる多くの人を支えている。それだけは自分に信じてあげたい。
私は私でいいのだ。私の形は、永遠に私を形作っている。言葉はいつだって二次的だ。それは手段であって、目的じゃない。私は人と分かり合えたり渡せたり、繋がれる言葉を求めているのだ。だからこそ、こんなにも心を動かされる言葉を描く人を、羨ましいと思う。その関心は、きっと人との繋がりの呼び水になるのだから。
繋がりがなければ駄目とは言わない。私が私らしくあることを言葉にして確かめたい。できることなら、それを誰かのように美しく瑞々しい言葉で描いてみたい。詩とかではなく。
でも私は言葉を詩に全振りしているから、それもできない。というなんて不器用な形なんだろう、みたいなことになっている。「いつか。」なれたらいいな。と思いながら、やっぱり私は私のままで、生きていく勇気を。
「毛布」からもらったのです。 -
作家という職業をとても尊敬する。
気持ちを言葉にする、とても難しいと思う。安達茉莉子氏も書けない時期があり、職場関係でメンタルダウンしそうになるたび、なんとか立て直してきている。海外でも生活や落ちた時の気持ちまで言葉で表し、光を指す一言にうるっとくる。
毛布、というタイトル、素敵だ。
組織とは別のチャンネルを作っていくこと…組織の中にいても自己決定権を高めることに繋がるから。
もう二度と誰にもあなたを所有させないで
小説を書けるということは、人間的な、ホリスティックな見方ができるという証明になる。必ずそれは人と比較してのあなたの強みになるから、生かしなさい p.80
自分の内側からの声にきちんと耳を傾けている人は、少なくとも自分自身と一致しようている
國分功一郎 p.87
許す、というのは、忘れることを許すという話なのかもね。その人を許す、ことよりも、あなたがその人にされたことを、許す、ことを自分に許す、っていうこと p.94
☆その人がその人自身を愛せない時、信じられない時に、その人よりもその人のことを強く信じていること- それこそが人間関係でできる最大のことで、それはそのまま、愛、というものなのかもしれない。愛をもって、待っているということ。 p.106
その大学院の研究者が打ち出した概念に、エンパワメント(内なる力)、とは、女性達が、自分達には力がある、と思っていることだ、と説明された
ことばは種になる。その時はわからなくても、いつか絶望した時に、芽吹く種になるかもしれないのに。
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装丁がかわいくて。
なかなか内に秘めた想いが伝わってくるが、初読みではまだ理解が足りないようだ。
ZINEなる言葉を初めて知る。
いろいろな考え方や発想がある中、共感が生まれていくんだなと。
書籍化されないまだ見ぬ本やアートを探せる世界を覗いてみよう。 -
泣いた。自分と重なるところがある。私も思考の整理に時間がかかるから、それがコンプレックスだけれど、この本が毛布みたいだ。
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雑誌「婦人之友』で、敬愛する若松英輔さんが書評していたのが縁で手に取った。
元気がない時に手に取って読める本というのは、意外に数少ない。これはそんな時にも心の奥底に染み込んで行くような言葉が溢れた本だった。
エッセイでありながら、詩を紡ぐように編まれているからなのか、何度も文章を噛み締めて、それこそ毛布を掻き上げるように読み耽った。
続けて筆者の作品を読んでみたい。 -
綴られているすべての言葉をやさしくなぞりたいし、それらに柔らかく抱きしめてもらった。本当に、手元にあったら豊かになる一冊。
面白い本はたくさんあるけれど、そこに在るだけで豊かになる本というのは、なかなかない。パワーがあるんだけど、肩肘はっていない。あったかいんだけど、甘やかされてるわけではない。ふしぎ! -
いつもそばに置いておきたい本。
ときどき開いて読み返したい本。
言葉を噛みしめるように読みたい本。
つらいときに寄り添ってくれる本。
生きる勇気をくれる本。 -
前半と後半で、少し間が空いてしまっての読了。
本編も勿論良いのだが、付録「Free at Last」が全て総括しているような内容で、とてもグッときた。
そのグッと掴まれた部分は、元から持っていた想いや感情もあるし、本編で培われた新たな土壌であるようにも思う。
エンパワメントの話が印象的だった。
エンパワー=内なる力とは、外部から与えるものではなく、「自分達には何かを達成する力がある」と思っていること。
それ、私、持ってない。
そしてそれを持っていない自分を肯定できなかかった。
それは普通の人が当たり前に持っている物だと思っていたから(少なくとも私の周りでは)
でも、著者によるとそうじゃない。著者自身もそうだし、日本の社会に生きる女性や若者、その他多くの人々が持ってないんじゃないか、と。
それなら、と思った。
それなら、私だって持ちたいし、持ちたいと思って行動していいし、持っている姿が理想として、周りにも広げていきたいと思った。
そうしたら、今の生きづらい自分や社会が変わると思ったから。
こんな感じで、この本は傷ついてきた私を温かく包み込んでくれたし、これから帰ってこれる温かい場所として、外に出る勇気をくれた。
毛布はいつだって、家に帰ればそこにあるし、何ならザックに詰めて旅に出る事だって出来る。
いつでもそばにいてくれる、そして必要な時に温かい場所を作って休ませてくれる、そんな本です。