差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」

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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768435526

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  • 「まとまらない言葉を生きる」荒井裕樹

  • 青い芝の会の行動綱領をテーマにしているが、起草者である横田弘氏の思想を追うのが主である本。現代的な、穿った言い方をすれば耳障りのよい共生、そのための障害者(脳性まひ者)の妥協をよしとしない、という苛烈な意思が感じられる。
    脳性まひの中でも、重度であり他者の介助なしには生活が困難であった横田氏だからこそ、自分たちが「ただ生きる」ことそのものの価値と社会、健全者とのギャップを激しく感じ、そこから目を背けようとしなかったのだな、と。
    社会に問題がある、という考え方は広まってきていると思うし自分もそういう立ち位置だが、その「社会」の中に、明確にあなたも含まれているのだ、ということを突きつけてくるような印象。
    こういった障害者運動が活発となった60年〜70年代とは、さすがに状況が変わっているので、同じ主張を現代において声高に叫んでいたら、障害者の間でも共感・理解を得ることは難しくなっているのだろうと思うし、社会自体がそこにとどまっていない「はず」とも思う。
    でも、重度脳性まひ者の視点で、生きることの苛烈さを表現し続けた横田氏の視点は、忘れてはならないひとつの思考の足場になるのではないか。
    いっぽうで、やはり「本人の意思」を中核の中核においている発想もある。あくまで、脳性まひという、知的には問題のない障害であるからこそ、ここまで徹底的に自身の障害の自覚と絶望という中核を表現しているわけだが、知的障害や障害児、意思疎通の難しい障害者について、どのように考えるのか?という視点も出てくる。その問いは、終わりがないなと思う。

  • 時代を感じる。

  • 非常に充実した内容で、ひとつひとつの言葉が迫ってくる。「障害者運動」というものを学ぶ上で、この上ない良書であると,思われる。
    話には聞いていたがよく知らなかった「青い芝の会」について詳しく知ることができた。他の本ではなかなか知り得なかったことが多い。

  • あきる野本館蔵書あり

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著者プロフィール

荒井 裕樹(あらい・ゆうき):1980年東京都生まれ。二松學舍大学文学部准教授。専門は障害者文化論、日本近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。著書に『隔離の文学──ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『障害と文学──「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館)、『障害者差別を問いなおす』(ちくま新書)、『車椅子の横に立つ人──障害から見つめる「生きにくさ」』(青土社)、『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)、『凜として灯る』(現代書館)、『障害者ってだれのこと?──「わからない」からはじめよう』(平凡社)などがある。2022年、「第15回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。

「2023年 『生きていく絵 アートが人を〈癒す〉とき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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