- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768435922
作品紹介・あらすじ
その人は『モナ・リザ』にスプレーを噴射した。
理由を知るには人生を語る覚悟がいる。
1974年4月20日、東京国立博物館で開催された「モナ・リザ展」一般公開初日。人類の至宝と称される絵画「モナ・リザ」(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)に、一人の女性が赤いスプレー塗料を噴射した。女性の名前は米津知子。当時25歳。「女性解放」を掲げたウーマン・リブの運動家だった。取り調べのために連行される警察車両の中で、彼女はクスクス笑いが込み上げていた。極度の緊張と、やっと落とし前をつけられたうれしさの中で。女として、障害者として、差別の被害と加害の狭間を彷徨いながら、その苦しみを「わたしごと」として生きるひとりの、輝きの足跡。
「第15回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞後初の書き下ろし作品!
感想・レビュー・書評
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モナリザにスプレー噴射、何も知らない人から見たらただのヤバい過激な人ってなってしまうけれど、すべての行動には意味がある。その背景を考えずに表面だけの浅い発言をしないような人になりたい。
この本を読み終わった後にもう一度この事件を考えると、そうまでしないと気づいてもらえないこの社会のせいであの行動を起こしたのだと感じた。
凛として灯る、排除のない社会への米津さんの想いが心に熱く残った。
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もう、とにかく、一冊の本としての力の入れ具合が本当によくわかる。後世大事にしたい一冊。
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モナリザ
実際にルーブル美術館で見たことはありますが、あの絵にスプレーをかけたとは
どんな事情があったのだろうと、読んでみると思った以上の深い理由
差別や偏見は、決して今の時代でも無くなってはいない
なくそう、なくそうと声をあげていてもなくなる気配は見当たらない
障がい者だから、可哀想な存在でなければならない
こんな風潮は今でも続いている
私も、誰もが排除されない世界がきて欲しいと思います
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凛として灯る、何が?
女性の権利を解放すること、子を産み育てること、障害を持って生きること。それを諦めないで解放運動をした1970年代の人の話。今子どもを育てている男の私も、その戦いの延長線上にいるのだなと感じた。苦しみはどこから来るのだろうと思っていたが、子育てはある意味で社会との戦いなのだなと思った。 -
普通の人ではない方、男ではない方として、名前を与えられない人たち。
一見、突拍子もない行動に隠された、その人にしかわからない意味。
「人には、人生を語ることでしか語り得ない動機や理由があるはずです」 -
レポートの課題図書として読んだが、読んでよかった。女は一度、ウーマンリブを読むべきかもしれないと思った。(もちろん男にも)
あの時代にウーマンリブを通して彼女たちが伝えたかった、男たちへ、社会へ、権力者たちへ向けた「女の叫び」をこの本から浴びた。今はフェミニズムという言葉に置き換えられているかもしれない。それでも女であること、社会に染みついた「女」をしてしまう己や社会を恨んだ彼女たちの言葉は現代を生きる私にも深く響いた。「妻」や「母」という型にはめられ続けた女の歴史の先に生きているからには、真っ向から女たち男たち権力者たちと向かい合った彼女たちを忘れてはならない。何故なら今も解決していないから。 -
障害者運動と女性運動を繋ぐ米津知子。
モナ・リザ展のことは知っていたが、彼女の背景は知らず。 -
369.2
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「ハンチバック」で第169回芥川賞を獲った市川沙央さんが影響を受けたという米津知子さん。
モナ・リザに赤いスプレーをかけようとして逮捕されたウーマン・リブ活動家であり、障害者でもあった彼女を知りたくて、この本を手に取った。
「ハンチバック」の主人公が “妊娠して中絶したい” という思いの源流を見た。
市川沙央さんから「凛として灯る」の荒井裕樹さんへの往復書簡(往)
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《だからおそらく、『ハンチバック』は私なりの、「モナ・リザ」にスプレーをかける試みだった、という読み方もできると思います。》
「プロテストノベル」という表現は素敵だ。
この本は市川沙央さんの文脈で手に取ったわけだが、それを抜きにしても素晴らしく、出会えてよかった!