- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784770410467
作品紹介・あらすじ
本書では、天皇制のかかえている「男系世襲」の問題を考える前提として、近代における女官制度の変遷や女官たちの言動を跡づけた。「菊のカーテン」の向う側に隠された女官世界を、限られた情報から再現した。
感想・レビュー・書評
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明治天皇は皇后以外の5人の女性との間に15人の皇子・皇女を産んだ。そして女官制度が皇統の維持という観点からずっと維持されていたが、どのように一夫一妻制に変化していったのか、戦後の民主改革を待たず、大正時代からの女官制度改革は偶々、大正天皇の病気、貞明皇后の不遇の幼小時代、そして昭和天皇の「女官通勤制度導入」というアイディアから出てきたものであったとしても世界史から見ても必然であったのだろうと思います。貴族出身の独身女性が天皇に仕えるという女官制度が大正まで続いていたということが信じられない気がします。女官出身で異色の存在であったという下田歌子(実践女学院の創立者)、岸田俊子(民権運動・女子解放運動の闘士)、また大正天皇の実の母・柳原愛子の姪でありながら美人歌人としてスキャンダルを産んだ柳原白蓮(燁子)らの一生が印象に残ります。
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明治から昭和にかけての女官制度について書かれたもの。明治の頃、上級の女官は天皇の側室要員でもあったのが、大正天皇は、慣例としてもつことを容認されていた側室をもつことなく、昭和天皇に至っては女官の通勤制を求め、その後、明仁皇太子の結婚にあたっては、旧平民から妃を迎えたという。読んでいくと、女官制度(近現代の側室制度)を例に皇室の変革ぶりが感じられる。歴史が、伝統が、と周囲はごちゃごちゃ言うし、最近その声が高まりつつある嫌な雰囲気を感じるけれど、皇室は時代にあわせて柔軟に変化、それも自ら変革してきたことを証明するものでもあると思う。もっとゴシップ的な宮中の裏話が収められているのかと思ったが、こんな読後感を抱くように、意外と根底で骨太なところに迫っている本だった。
ただ、退官後に活躍した下田歌子と岸田俊子の項が一番面白かったことからも、女官が裏方の存在、もの言わぬ存在であるがゆえに、宮中の女官そのものには迫りきれていない感じもあり。