トム・アンデルセン 会話哲学の軌跡ーリフレクティング・チームからリフレクティング・プロセスへ
- 金剛出版 (2022年12月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784772419444
作品紹介・あらすじ
1985年3月のある晩、ノルウェー北極圏の都市トロムソで、精神科医トム・アンデルセンがセラピーの場の〈居心地の悪さ〉に導かれ実行に移したある転換。当初「リフレクティング・チーム」と呼ばれたその実践は、「二つ以上のコミュニケーション・システムの相互観察」を面接に実装する会話形式として話題となる。
しかし「自らの発した声をききとり、他者にうつし込まれた自身のことばをながめる」この会話は、より大きな文脈の探求を見据えた〈開けゆくプロセス〉であった。
自らの実践を「平和活動」と称し、フィンランドの精神医療保健システム「オープン・ダイアローグ」やスウェーデンの刑務所実践「トライアローグ」をはじめ、北欧から世界中の会話実践を友として支えるなかで彫琢されたアンデルセンの会話哲学に、代表的な論文二編と精緻な解説を通して接近する。
感想・レビュー・書評
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ナラティヴ関係で今年一番刺激的だった本。
リフレクティングについては、その重要性はわかるのだけど、なんだか概念がゆるくて、そんなに「自然体」で、大丈夫なの?というのが正直な感想だった。
その印象は、マイケル・ホワイトの「リフレクティング」に対して、セラピストとクライアント間の権力関係に対してナイーヴすぎるといった批判を読んで、さらに強まった。
が、この本で、トム・アンデルセンの最初の論文と最後の論文を読んで、これらの印象はほぼ吹っ飛んでしまった。
とくに最初の論文を読むとかなり理論的背景と技法がしっかりと言語化されていて、それがスタート地点にあることにとても刺激があった。
もちろん、そこはスタートで、徐々にさまざまな形のリフレクティングがあっていいオープンなものになっていくわけなのだが、スタート地点をしらずに「リフレクティング・チーム」ではない「リフレクティング・プロセス」をしるのとでは大きな違いがあると思いました。
この2つの論文をつなぐために、著者によるリフレクティングをめぐるトムとその周りの人々との思索の深まりの物語を読むと、かなりわたしの関心事と重なることがわかった。
アンデルセンの主著?の「リフレクティング・プロセス」は、ある意味、アンデルセンの到達点に近い本なのだが、それも完成形ではなくて、つねにそれについてのリフレクティング、さらにそのリフレクティングと無限に続いていくプロセスを暗示している。
で、それを読むと、リフレクティングを固定的なものにしたくないという意図は伝わるものの、あまり細かいガイドはないので、なんでもありなものになってしまう印象をもった。
あと、オープン・ダイアログとの関係もモヤモヤしていた。
この辺りが、実にすっきりした感じ。さらに、ナラティブ系全体を通して、位置付けがわかりにくい身体性についても、つながるヒントがあると思う。
長くなるので、どこがどう面白いかはまたの機会に。詳細をみるコメント0件をすべて表示