言語が違えば、世界も違って見えるわけ

  • インターシフト
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772695336

感想・レビュー・書評

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  • 文化人類学を大学で学んだ私にとってバイブルと呼べる一冊。文明が高次か低次か比べることは出来るが、文化というものに次元、優劣をつけることは出来ないという基本的な考えをもてた。また、生まれが関西、育ちは東京と同じ国内において大きな文化の違いに驚き疑問を持った自分自身に対する答えとなる内容であった。

  • 「ホメロスの叙事詩は、色に関する記述に現在と奇妙に異なるところがある。古代ギリシャ人には、世界が我々とは全く違う色に見えていたのではないだろうか?」-ある英国政治家が抱いた奇想から、本書の楽しくも長い旅が始まる。紹介されるエピソードや実験はどれも興味深い上、語り口はユーモアに溢れ全く読む者を飽きさせない。また最近の海外の科学啓蒙書にありがちな、同じようなエピソードをだらだらと並べ、同種の主張を何度も繰り返すといった悪質なページ数の底上げもない。専門的知識は全く必要なく気軽に読める。

    テーマは、大きく前半の「色彩語彙を決定するのは自然か文化か」と、後半の「言語は知覚や思考に影響するか」に分かれる。後半、最も興味を掻き立てられたのは「前後左右」を用いずに「東西南北」でのみ位置的情報を処理するオーストラリア先住民のエピソードだが(カーナビのノースアップで日常生活を送るなんて!)、そこで前半の議論の帰結である「自然は言語に制約を与えるが、その中で文化が裁量を持つ」という命題が再び立ち現れてるくる瞬間には興奮を覚えた。また、終章のテーマもまた「色」であり、読者を議論の連環に巧妙に誘う構造になっていることにも感心させられる。

    エピローグも殺し文句が満載で、読後感良し。

  • ホメロスの作品に現れる、「葡萄酒色の海」「すみれ色の牛」「赤い馬」などの奇妙な色彩表現。また、例えば空のことを描写するときでも、インドの古詩や聖書にも著しく欠けている青系の色彩語彙。…古代人は色覚異常だったのでは? という疑問からこの本は始まる。
    やや専門的だが、冗談やおもしろい例を多く交えて書かれ、言語学に詳しくない人でも興味深く読めそう。

  • 空が青いのはなぜだろうか。古代ギリシャのホメロスでは、空は青くない。言語は自分たちの感覚を制限しているわけではないが、ある感じ方を習慣化させてはいる。そのことに自覚的になることで、空はより鮮やかに、高く澄みわたる。

  • プロローグからかなり面白い!大学での研究の主題だったので、とても興味深い。言語と思考の関係はどの観点から解かれるべきか--生得主義と文化主義、普遍主義と相対主義、氏と育ち--本書の結論が楽しみである。

    読了。
    かなり興味深い内容だった。具体的な実験や論説を数多く取り上げ、言語と認知に関する研究の変遷がとてもわかりやすく、且つ面白くまとまっていた。時折みせる筆者の皮肉混じりの反駁やユーモア溢れる問題提起に、ページを捲る手が止まらなかった。

    本書のテーマは、「異なる言語の話し手が、それぞれの母語のあり方ゆえに、同じひとつの現実を違うやり方で知覚することがありうるか」ということだ。その問いに答えを与えるべく、位置関係の表現や、文法性、色の概念を取り上げ、それぞれが知覚に及ぼす影響をつぶさに観察している。ちなみに、答えは一貫してNOである。
    「それぞれの言語が話し手になにを考えるのを許すかによるのではなく、それぞれの言語が話し手に習慣的に、どんな情報について考えるのを強いるか」によって母語と記憶・知覚・連想の関係を説明できるという。母語にない概念を理解できるのも思考がベースにあるからこそ。言語は後天的な文化のひとつとして、思考を導くだけにすぎない。しかしどのように導いているのか、脳内の働きについては未知数で今後の研究に期待したい。

    本書に引用された文献にも今後目を通してみたいと思う。特に、聾唖者や言語野に障害のある人の認知について調べてみたいと思った。

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