ためらいのリアル医療倫理 ~命の価値は等しいか? (生きる技術!叢書)
- 技術評論社 (2011年9月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774148373
感想・レビュー・書評
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タイトル通りの話。理想論を持つ事は重要だけど、実際の医療現場でそれを振りかざすのは逆に悪になりかねない。白黒で決着つけられない世界だからこその難しさがある。正解がないって怖い。患者さんとためらいながら真摯に向き合って、その都度ベストな選択をしていける様努力しなきゃなぁ。
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通常の医療場面で考えさせられる倫理について書いています。
医療者にとってあまりにも近すぎて素通りしていた視点です。
http://ameblo.jp/nancli/entry-11624663558.html -
命を考える、生活を考える、価値を考える。一概に言えないですよね。
程度として捉える、ためらいつつ捉える。
別著の人が『マニュアルは、現場の個々の問題を無視してる』を具体的に表した本だと思います。 -
「医者はすべての患者を平等に扱うべし」等の倫理規定を絶対視するのではなく,より現場にフィットした形で考えていこうという好感の持てる本。医療倫理に限らず社会問題を考える上でも示唆に富む。
医師といえども時間的・空間的に近い関係の人を思うのが当然であり,そのことを無視して理想論を言っても仕方ない。そういう制約の中で,患者をそれなりに平等に扱うように,なんとかやりくりしていこう。なるほど実に現実的だ。大きな病気をしたら,こういう医者に診てもらいたいかも。「仁術」としての医療に関して語られる,医者にとっても患者にとってもためにならないうわべだけのきれいごとを排除していく。「患者の気持ちがわかる医者になる」なんてまず無理だ,と著者は言う。患者の気持ちがわかると思ってる医者は,その時点で自分を上位に位置づけるており自己矛盾を来している。
著者の著作に通底するのは,徹底した二元論の否定,価値相対主義。死の定義が次第に変遷していったように,文化や社会的合意が境界を決める一つの基準になることはある。しかし,脳死を死と認めるか否の選択が個人にゆだねられているように,グレーゾーンは常にある。著者がロールモデルとする内田樹の影響が色濃く出ている。「理路」などの内田用語も頻出。本書のタイトルも,内田樹のデビュー作『ためらいの倫理学』をふまえたものだという(p.203)。ちなみに「醸成」のことを「醸造」(p.161他)というのは内田先生も使ってなかったと思うけど。
喫煙と健康,延命と苦痛の緩和,すべてはトレードオフで,何を重視するかは個人個人さまざま。また他人の事情をすべて理解し推し量ることもできない。だから医師は患者の価値観を尊重し,「ためらい」ながら対峙する。 -
内田樹氏からの影響がその著作から強く感じられる多作の大先生による医療倫理本。指摘の通り、医療倫理を定型にはめないことは大切だと思う。また、(おそらく永遠に)結論に至らないのであろうが、時間的、空間的、多面的に考えることが臨床現場ではリアルなのだ思う。
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2011.10.10読了。
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岩田健太郎先生の最新刊。大きなサイドチェンジあり、鋭いスルーパスあり、しかし、最後のシュートは読者の自由な発想で。そんな堅苦しくない、ディベート感あふれる本でした。