星くずクライミング (くもんの児童文学)

著者 :
  • くもん出版
4.09
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774330273

作品紹介・あらすじ

ふたりでなら 見えない壁だって 登り切れる

 中学1年生のあかりは、小学4年生でスポーツクライミングに出会って以来、毎日のように練習を重ねてきたが、年明けの大会で、スランプにおちいってしまう。スポーツクライミングをやめてしまおうか、とまで考えていたあかりだったが、ひょんなことから、目の不自由な人たちのスポーツクライミング、パラクライミングと出会う。
 ナビゲーターとクライマーが2人1組となり、ウォールをのぼっていくパラクライミング。目の不自由な人が本当に壁を登れるのか、と半信半疑な気もちだったあかりは、実際に壁をのぼっていくクライマーの姿を目にし、感動を覚える。
 ナビゲーター役として体験イベントに参加したあかりが、ペアを組むことになったのは、同い年の昴というクライマーだった。態度も口も悪い昴のことを、はじめは嫌っていたあかりだったが……

2020年にむけて読者の関心の高まる「パラスポーツ」をテーマにした創作児童文学。主人公・あかりとパラクライマー・昴の物語を通して、「視覚障害やパラスポーツへの理解」をうながす、ほかにはない児童文学です。

感想・レビュー・書評

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  • 中学一年生のあかりは、小学四年生の頃から始めたクライミングを、大会で優勝できなくなったことで自分の限界を思い知らされやめようと思っていた。
    その時に通っていたクライミングスクールで催されていたブラインドクライミングのイベントで、同い年の少年昴と出会い、ブラインドクライミングの奥深さを知り、だんだんクライミングの楽しさを思い出していった。
    まだパラスポーツとしても認知度が低いブラインドクライミング。目が見える晴眼者と視覚障害者との隔たり、それを乗り越えてともにブラインドクライミングをする。ブラインドクライミングは晴眼者が指示出しをして、それを頼りに視覚障害者が高い壁を登っていく。信頼関係が非常に重要だ。
    あかりと昴がどんどん絆を深めて、まっすぐに競技に打ち込んでいく様はとてもアツい。
    カラフルなクライミングの壁を星空に表現する感性の美しさも楽しめる。
    読むとクライミングにチャレンジしたくなる。
    また視覚障害者の気持ちや立場についても考えさせられる、ぜひ小学校中学年から様々な人に読んで欲しい一冊だ。

  • 母と二人で暮らす中学1年のあかりは、怪我を機会に3年間熱中したスポーツクライミングを止めようとしていたところ、視覚障害者のブラインドクライミングへの挑戦を渋る同い年の少年昴と出会う。突然昴のナビゲーターをやることになったあかりは戸惑うが、これを機に視覚障害の世界を知り、関心を湧かせ始める。昴のやる気の無さと自身の復帰意欲のなさとを重ね合わせる彼女は、彼の大会参加に意欲を感じ始めるのだった。

    スポーツクライミングを軸に、視覚障害者の世界と気持ちを知って、チャレンジする気持ちを取り戻す少女の物語。



    *******ここからはネタバレ*******

    スポーツクライミング、ブラインドクライミング、視覚障害者の世界の解説書のような本。これらの世界に興味を抱かせるにはちょうどよいのではないか。

    ただその分、物語としては不自然な点が多い。
    昴と出会ったあかりが、順調とは言えないスタートを切ったにもかかわらず、彼とブラインドクライミングに固執したのはなぜなのか(そんなイケメンとも書かれていなかったし)?
    周りの大人が、あかりに昴を更衣室まで案内させたのに、事故が起きるまでその方法を伝えなかったのは、大人の責任でしょ。
    中学1年で、異性と体が接触することに抵抗のない人は少ないはず。あかりがなんの抵抗もなく彼の背中にホールドの絵を描いたところには、ちょっと驚く。

    人物の心理描写や物語の運びは教科書的で面白みに欠けますが、教科書的だからこそ描けているところも多くて、これを「良書」として推薦できるのか?と、問われたら、とりあえず及第点なでしょう、と応えるかもしれない一冊です。
    ただ、10年後に残っているか?と問われると難しいのかも。人の心に残るには、強い感情とセットでなくては。

    中学生が主人公ですが、内容は平易。過激な描写もないので、中学年からイケます。

  • すっごい単純でありがちなんだけれどわたしも宇宙の散歩してみたいなって、思わず途中で近くにクライミングスタジオがないかスマホで検索してしまいました。笑

    読んでる中でふっと不安定に、泣きたくなるような気持ちに何度もなりながら…2時間ほどで読み終えました。

    ダイアログインザダークなんて、この本を読まずに知ることがこの先の人生にあったかな…
    こんなwithコロナ時世でなければ、今すぐに東京に体験しに旅行計画を立てたいところ。

  • 見えないからって何もかも見えないと思うなよ。
    見えないからこそ見えるものがある。
    見えないと思って甘く見ると見透かされる。
    むしろ見えることで甘く見られる。
    私は池内さん好きになれません。

  • 「ふたりでなら 見えない壁だって 登り切れる

     中学1年生のあかりは、小学4年生でスポーツクライミングに出会って以来、毎日のように練習を重ねてきたが、年明けの大会で、スランプにおちいってしまう。スポーツクライミングをやめてしまおうか、とまで考えていたあかりだったが、ひょんなことから、目の不自由な人たちのスポーツクライミング、パラクライミングと出会う。」

  • クライミングのコースを星空に例えるという発想が素敵です。ケガでクライミングから離れている少女と、目の見えない少年が協力してブラインドクライミングに取り組むお話。小学校高学年から中学生向け。

  • 娘と一緒に図書館の児童書コーナーで遊ぶうちにすっかり樫崎茜の作品のファンになった。児童文学なんて分類を超えた素晴らしい作品。これからもたくさん描いてください。

  • この頃、小説を読む事が少なくなったので、リフレッシュも兼ねて児童文学を。
    ブラインドクライミングというスポーツは初めて知りました。また、障害者スポーツ自体、知っていることが少なくて、オリンピックイヤーでもあるのにもったいない。これを機会に色々調べてみよう。

  • スポーツクライミングスの魅力だけではなく、視覚障害者の気持ち、パラスポーツの認知度の低さなどなどいろんなことが丁寧に描かれていて、とても良かったです。
    何気なく私たちが行なっている言動で、視覚障害者の方達を傷つけている事実には、ショックを受けたけど何も知らないとそのまま。
    時代に合わせて、児童書の世界でもジェンダーや貧困、宗教、障害、認知症などなど様々なテーマのものがたくさん出版されています。
    こういう本を通じて、日常で出会わなければ体験できないことを知り、周りには色んな人がいることを学ぶことができる。
    しかもそれが教科書などの眠くなるような文章ではなく、お話の世界に入り込み夢中になれるような魅力的な小説で読めるなんて!
    学びと楽しさを両方味わえるなんて、すごいと思います。そんな本の魅力を改めて感じました。

  • 中学1年生になったあかり
    4年生から始めたスポーツクライミングで結果を出してきたが、ケガをしたブランクで自信を失い、復帰をためらっている

    やめるつもりで行ったジムで出会ったのがブラインドクライミング
    同い年で視覚障害のある昴と組みナビゲーターを務めるが、うまくいかず、昴は帰ってしまう

    あかりは視覚障害のことを学び、パラクライミングの全国大会に出場しようと昴を誘うが……

    「わたしはクライミングウォールは夜空だと思ってて、ホールドは星くずだと思ってる。だから、ウォールにしがみついているときは宇宙を散歩しているみたいで、すっごく楽しいの!」

    晴眼者・健常者と障害者のあいだにある無知と無理解による深い溝
    あかりと昴は互いを理解してカベを乗り越え、大会当日を迎える

    「No sight But On sight!」
     そうだ。見えなくたって、一撃で決めてみせる!

    パラクライミングを題材にした友情と成長の物語
    スポーツクライミング、ブラインドクライミングの理解も深まる一冊、2019年11月刊

    『カーネーション』『てのひらに未来』『拝啓パンクスノットデッドさま』『with you』とYAの意欲作が並ぶ「くもんの児童文学」から

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著者プロフィール

長野県生まれ。2006年講談社児童文学新人賞佳作を受賞。デビュー作『ボクシング・デイ』(講談社)で、第18回椋鳩十児童文学賞、『満月のさじかげん』(講談社)で、日本児童文学者協会新人賞を受賞。その他の作品に、『ぼくたちの骨』『声をきかせて』(以上 講談社)、『ヴンダーカンマ― ここは魅惑の博物館』『星の町騒動記』(以上 理論社)、『星くずクライミング』(くもん出版)などがある。

「2022年 『手で見るぼくの世界は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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