- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774407654
作品紹介・あらすじ
別れ難く理想語りてありしかな気づけば空に 暁の星
雪山に倒れし友は老いもせず若さのままにわが胸に棲む
別れるため抱き合う国境ウクライナまたパレスチナな重なり見ゆる
(本書より)
元日本赤軍リーダー・重信房子が21年に及ぶ刑期を終え、この5月に出獄する。本書は、この間、日記を書くよう書き溜めてきた短歌をまとめた、第二歌集となる。
著者は、連合赤軍事件で粛清された友・遠山美枝子を「雪山に倒れし友は……」と歌い、世界の悲惨を「別れるために……」と嘆じる。本書の歌は、著者の踠きと葛藤の発露であると同時に、歴史の証言でもある。
感想・レビュー・書評
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世界から見詰められつつ見捨てられつ不条理許さぬ闘う友ら
重信房子
日本赤軍の元最高幹部重信房子が、5月28日、服役していた医療刑務所を満期出所した。それに合わせて刊行された「暁の星」は、2005年刊の第一歌集「ジャスミンを銃口に」(幻冬舎)に継ぐ、2冊目の歌集である。
会員である歌誌「月光」に発表された、2019年以降の約3年間の短歌が収録されている。折しもロシアによるウクライナ侵攻のニュースが重なり、新聞等で目にしたのだろうか、さっそく歌われていた。
・パレスチナの民と重なるウクライナの母と子供の哀しい眼に遭う
パレスチナの親子を長く見続けてきたため、ウクライナを歌うにも、まず「母と子供」に関心が向いている。今後停戦になったとしても、不発弾や、子どもたちが負った精神的苦痛を消し去ることは難しい。冒頭の歌のように、世界から注視されてはいても、「見捨てられ」てしまう部分があることに敏感なのだ。
20年という刑期を経て、短歌という詩型自体も再発見したようだ。
・不自由な三十一文字で不自由な獄をいでては自由を詠みぬ
散文に比べれば、短歌には制限がある。けれども、その「不自由な三十一文字」こそ、精神的な「自由」を歌える型であり、その型にしばし救われたのだろう。現在76歳。
(2022年7月10日掲載)
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