新装版 うつから帰って参りました

著者 :
  • アスコム
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本棚登録 : 21
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776205418

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りて読みました。ちなみに、この本を知ったきっかけは『うつぬけ』です。

    事実として「うつ病闘病記」ではあるのですが、その「うつ病闘病記」という字面のネガティブさを一色さんの軸である「面白くありたい」という信念によって、面白おかしく読める本になっています。「うつ病漫遊記」を書きたいのだとはっきり書いてますしね。
    ただし、面白おかしく書くからといって事実を捻じ曲げる脚色はしない。
    だから、読んでいてすごく陰と陽のはっきりしている読み物だと感じました。

    一色さんなりの、自身のうつ病との付き合いと、脚本の仕事の向き合い方の変化がつながっているところも面白い。この本の視点から一色作品のドラマや映画を観るとまた違った視点で感じられるようにも思いました。
    何より、生きたキャラクターが自分の心の中に住み着いていく感じ、すごく私も分かります。何なんでしょうね。こればっかりは。

  • 「一色くん。きみは、うつ病だと思う」 びっくりした。この気鬱は、「気のせい」ではなかったのだ…。映画「病院へ行こう」など数々の作品を手がける人気脚本家による、笑いと涙のうつ病体験記。

    当人の説明出来ない気持ちが良く伝わる内容でした。

  • 916

  • 読後のこのとめどなく時間に比例して増幅しながら溢れ出す何かを言葉にしようとしてもきっと陳腐でサランラップに包まれた言葉しか浮かんでこない無力さに悲しみながら、でも1ミリでも残ってくれればと書く。安曇祐子と出会って20年、石井ゆかりと出会って1ヶ月。まさかの偶然にどきりとした。悪い予感は的中した。ハルシオン、ホテルから一歩も出れない一人旅、家族の嗚咽。読み進めるほどに痛かった。痛くて痛くて泣いた。人より痛く転んでる真っ只中、表紙の色みたいなグランブルーの世界が訪れるにはまだもう少しかかりそうだ。

  • 昔仲間内でだいぶはやったアニメ、『宇宙船サジタリウス』の初期の脚本家。
    その筆力は確かで、巧みな文章にぐいぐい引き込まれる。
    「うつ」の苦しみをうまく描いているし、他に薬物などに対する「依存」の問題にも言及している。「依存」もまた一種の病気であり自業自得といった突き放す態度はよろしくないとのこと。そういう著者は睡眠薬に依存してアジアの薬屋を訪れたりするほどになる。
    うつ病の治療で睡眠薬依存は解消されるが、ハマったことがあるだけに薬への言及は面白い。リタリンは原稿を書くために一時期頼ったが、その鮮烈な効き目ゆえに、原稿を書き上げた後残りは捨てたとのこと。
    著者のうつ病は身体症状はあまり強くは出なかったようだ。うつ病の療養中に毎月パリに通うような、ちょっと見無茶なことをしている。そのパリ通いの様子から病気の回復が分かったというが。回復してからは再発はとくになくダイビングを楽しんでいるとのこと。TV出演したときは「うつ病は後遺症はない」と語っていた。
    身体症状がきつい自分と比べて、かなり違う様子に、「うつ病は100人いたら100通り違う」ということを実感した。amazonの書評(新装版じゃない方)によると、著者の場合双極性障害ではないかという指摘があった。素人が断片的な情報から安易に判断すべきではないが、これはこれで無視できない指摘ではないかと思った。
    追記:気分安定薬を飲まずに寛解に至っているところから、双極性障害の可能性は低いと思うようになった。

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著者プロフィール

一色伸幸(いっしき・のぶゆき)
1960年東京都生まれ。脚本家、小説家。
1980年前半から『宇宙船サジタリウス』『私をスキーに連れてって』をはじめ『七人のおたく』『波の数だけ抱きしめて』などアニメ、映画、ドラマと幅広い分野で次々とヒット作を生み出す。
『僕らはみんな生きている』『病院へ行こう』は日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。
多忙を極める中、うつ病を患い仕事を中断。無気力と自殺願望に苦しむ毎日を送るが、2年間の療養生活を経て復帰する。

2004年の連続ドラマ『彼女が死んじゃった。』(日本テレビ)や、2007年のエッセイ『うつから帰って参りました』(アスコム)、後にドラマ化、舞台化された小説『配達されたい私たち』(小学館、後に角川書店から文庫化)でうつ病患者の心情を表現するなど、復帰後は人の内面に深く入り込んだ作風で高い評価を受ける。

NHK特集ドラマ『ラジオ』は、2013年に文化庁芸術祭大賞、ギャラクシー賞優秀賞、シカゴ国際映画祭テレビ賞金賞、菊島隆三賞など数多くの賞を受賞。2014年には国際エミー賞にもノミネートされた。

「2018年 『感動コミックエッセイ さよなら、うつ。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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