オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題

著者 :
  • アスコム
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776212348

作品紹介・あらすじ

オンラインでのコミュニケーションは、今後、私たちの社会に大いなる悪影響を及ぼす可能性があるのではないか? こうした危機感を抱いた私は、それを証明するために実験を重ね、驚くべき結果を得ることができました。
一刻でも早くみなさんに知っていただくべく、私は本書『オンライン脳』を緊急出版することにしたのです。

オンラインなら、会社にも個人にもメリットが大きい、と思われているかもしれません。ところが、ここに大きな落とし穴があるのです。「便利になった」のと、私たちの「脳がどう感じているか」は、まったく関連性がないことだったのです。

なぜ、「オンラインコミュニケーション」が問題なのでしょうか。
ひとつは、オンラインは「楽だ」ということです。肉体の移動をともなわずにコミュニケーションできるのですから、とても「楽」です。
一方、対面コミュニケーションでは、実際に人と接することで、脳がさまざまな刺激を受け、活発に働きます。オンラインでは「楽」をした分だけ刺激が少なく、脳の一部しか働かないのです。

また、対面でお互い顔を見ながらよいコミュニケーションがとれた場合には、お互いの脳活動が「同期する」という現象が起きます。ところが、オンラインでは脳が「同期しない」という実験結果が出たのです。
これは、重要なことを示しています。脳活動が同期しないことは、脳にとっては、「オンラインでは、コミュニケーションになっていない」のです。情報は伝達できるが、感情は「共感」していない。つまり、相手と心がつながっていない、ということを意味します。

一刻も早く、対面でのコミュニケーションができる社会に戻さなければいけません。しかしながら、私は、オンラインはやめてコロナ前に全面的に戻れ、と言っているのではありません。オンラインの便利さは享受しながらも、私たちや子どもたちの脳にできるだけ悪影響が出ないような生活をしていかなければなりません。

本書で言うところの「オンライン脳」とは、「スマホ・タブレット・パソコンなどのデジタル機器を、オンラインで長時間使いすぎることによって、脳にダメージが蓄積され、脳本来のパフォーマンスを発揮できなくなった状態」を指します。
本書では、オンラインと脳の賢い付き合い方についても書きました。ぜひ、参考になさってください。(「まえがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • 前々作「スマホが学力を破壊する」では、スマホを使ってると成績が下がることを。前作「スマホが脳を破壊する」では、スマホを使っていると脳の成長が抑制されることのエビデンスを示していました。今回はさらに突っ込んで「オンライン」を使っていると前頭前野が働いていないことを示しました。

    オンライン化が進む中で、飲み会やらなくても大丈夫じゃん!別に集まらなくても大丈夫な会議って結構あるじゃん!と思いました。あの時間はなんだったんだと思うことしきり。
    一方で、実物に勝るものはないと言うことも実感されます。実物や直接人に会っていると、脳に引っ掛かりが多くなります。実体験として、経験値が積みあがることが実感されるのです。

    脳は一億数千万画素くらいないと、バーチャルだと見破ってしまうのだそうです。結果、脳が働かなくなると述べられています。これは現代の科学力では再現できません。
    特に成長期の小中高校生への影響は深刻であるとしています。確かにiPhone を作ったスティーブジョブズ自身、我が子にiPhone を使わせなかったことは有名です。実体験や、人と人との温かな関わりこそが心を育てることを知っていたからだとも言われています。

    私たちも薄々感じていたことを、科学的に裏付けしてくれている点で納得がいきました。(もちろんまだ、仮説の段階のものもあります。)
    やはり、スマホ、ゲーム、テレビは時間を決めて行うのがよいと思います。
    そして、重要度の低い会議や集まりはどんどんオンラインで行うのがよいと思われます。
    こうしたことはマスコミでは大々的に取り上げられません。自分の首を占めることになるからです。
    ですので、本書のような主張は見逃せないものだと思います。
    やはり、きちんと対策をたて、啓発していくことが大切だと思いました。

  • 偶然だが、斎藤環と佐藤優の『なぜ人に会うのはつらいのか』を読んだ後にこの本。斎藤環の対談本は、対面の暴力性を解説し、オンラインと対面の両立が良いという話だった。本著は、オンラインの危険性を説く本。両面から考える事で、より理解が深まった。ただ、結論としては、私はオンラインで十分だ。

    オンラインでは脳の刺激が少なくお互いの脳が同期して共感すると言うプロセスが損なわれている。OECDの学習到達度調査によると学校にコンピューターが配置されればされるほど数学や国語の成績が下がると言うデータがあるらしい。

    共感を齎す一つの因子が、視線。他者の視線が自分に当たったとき、脳の扁桃核が強く反応する。嫌なことや怖いことに直面したときに働く部位だ。脳が様々な感覚を処理する領域の中で、視覚情報を処理する領域が最も大きい。対面により、視線を得て、脳が働くという理屈だ。

    著者は実際に東北大の生徒と共に、これを実験して立証している。リアルの方が脳が働く。それはそうだろう、と直感的にも理解できる。ゲーム麻雀よりも、リアル麻雀の方が緊張感があり、脳は疲れる。雑談を含む麻雀という目的以外の無数の行為、気遣い、肉体的な要素。当たり前では、とも思う。脳が楽する代替手段はオンライン以外に多数もある。洗濯だってボタン一つより、川で洗う方が脳が働くだろう。問題は、著者が言うように、〝それで脳が劣化するのか”という事だ。

    指摘を読み続けよう。著者はスマホによる集中力の低下にも言及する。何かに集中しているときに妨害が入り、別のことをやり始めるスイッチング。スマホの長時間使用による学力低下の大きな原因の一つはこのスイッチングだと。LINEやSNSで散漫になる。これは確かに。私も読書をしながらスマホで調べ物をすると、ついつい余計なサイトを見ている。よく分かる。

    最後、スマホやパソコンなど双方向型のデジタル機器を長時間使用する子供たちの脳は大脳灰白質と大脳白質の発達が遅れるのだと。毎日の使用が3、4時間以上の子供はほとんど発達が止まっているとか。んー、いや、実感としてこれは言い過ぎだろう。と思っていたら、回復可能だという。回復可能!それはそうだろう。社会にゾンビが増えているという実感は無い。結局、脳は働かない時間と働く時間を切り替えているだけで、スマホでアイドル時間になった部分を切り抜いて研究結果と言っているだけではないのか。脳トレ理論、ご健在。

  • あ、これが2023年初読了の本だった。

    オンライン、フルリモートは人間の脳にとって有害という本。

    でも、私は何がなんでもオンラインがいい。

    猫と働きたい。
    猫は脳にいいっていうのもどっかで読んだもん( ;∀;)

  • 通信回線を使ったオンラインコミュニケーションが人間の脳に与える悪影響をまとめた本。
    自分の仕事がほとんどオンライン化する中、なかなか厳しくごもっともなご指摘である。対面の重要性と経済的合理性を天秤にかけるのは難しいそうなので、やはり交渉、創造、営業などの業務と情報交換の業務などで面直、オンライン会議を切り替えていくのが妥当かなと感じた。
    何にせよ、暇つぶしで電子機器を触るのは辞めようと思う。

  • ネットの過剰依存の弊害が語られています。しかしその対策にはそれほど紙面を割かれてません。ともかくデジタルデトックスをテーマにするしかないな、と思いました

  • スマホを使う時間が長ければ、その分勉強していないのだから、学力が下がると思うのは当然だろう。しかし、学力低下は「学習時間」の長さとは直接に関連していない。また、「睡眠時間」とも直接に関連していない。スマホが直接的に学力を低下させているのだ。

  • この感想もスマホで書いていますが、やっぱりスマホは良くないことがよく分かります。対面でのコミュニケーションの大切さについてもサイエンスとして説明されていて納得です。

  • 初めてスマホを持ったころ、パソコンを立ち上げなくても、掌でインターネットサーフィンができる手軽さに、ついつい時間を消費していました。
    今は、特に目的もないのに、スマホでネットをしないように心がけてはいますが、ガラケーからスマホに買えて、本を読む時間は減ったことは実感しています。

    恐ろしいのは、スマホを高頻度で使うと、3年間で大脳全体の発達がほぼ止まってしまうとのこと、この事実は、もっと世間に周知されるべきではないでしょうか。今、小学校でも、タブレットが配布されるようですが、慎重にすべきと思いました。

    この本では、オンラインを批判していますが、他方で、現場に赴かなくても、オンラインで研修が受けられたり、会議ができるのは、便利であることは否定できません。
    要は全てをオンラインにすべきではなく、物はやはり使いようなのだと思います。

    あと、まともな企業がオンラインからの離脱を進めているとか、対面にしたり、パソコンを使うのを控えめにしたところ、業績が非常にあがったと記載されていますが、個人的にはあっさりした記述になりすぎていて、物足りなさを感じました。重要な部分ですので、因果関係やエビデンスを示して、もう少し深くつっこんでいただきたかったと思います。
    この点については、続報を期待しています。

  • エビデンスとともに非常に考えさせられる内容だった。
    親として子供にどう扱わせるのかも考えないといけないし、仕事面でもオンラインの利便性を意識しつつ、オフラインというか、コロナ以前のやり方に戻すところはしっかり戻さないと勝ち残れないなと感じる1冊でした。

  • オンライン会議などに対して警鐘を鳴らしている。主張において著者の研究結果をエビデンスとしており納得感が高い。学力とスマホ使用時間で、スマホ時間も勉強時間も長い人より、両時間が短いほうが学力が良いという結果には驚いたが、スイッチングによる集中力維持ができていないとの内容には納得。おそらくsnsが気になって勉強時間がだらだら長くなっているのだろうと。

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著者プロフィール

東北大学加齢医学研究所所長。
1959年千葉県生まれ。東北大学医学部卒業後、同大学院医学研究科修了。医学博士。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学助手、同専講師を経て、同大学教授として、高次脳機能の解明研究を行う。人の脳活動のしくみを研究する「脳機能イメージング」のパイオニアであり、脳機能開発研究の国内第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」シリーズの監修者。学習療法を応用した『脳が活性化する100日間パズル』シリーズ(学研)や『楽しい!脳活パズル120日』(学研)など著書多数。

「2022年 『美しい日本の祭礼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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