- Amazon.co.jp ・本 (60ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776401094
作品紹介・あらすじ
ぼくが乗った気球はあらしにさらわれ、プラハの街に舞い降りた。どこからともなく不思議な猫があらわれ、その猫について街をさまよい、街にまつわる伝説を読み進めていく。読みおわるたび、ぼくの手には金の鍵が残り…。
チェコのプラハで育った作者が描く、プラハの夢と闇。
感想・レビュー・書評
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共産主義下のチェコに生まれたピーター・シスが、アメリカに渡ってから娘のためにプラハを思い出して書いた絵本だ。
正確さよりも、この街の雰囲気を描くことをまず優先しているのだろう、街の俯瞰図にはよく見ると大きな猫が隠れている。
どのページにも、異形の者たちがひっそりと、あるいはあからさまに、漂っている。アルチンボルドの描いた、果物でできた顔の人間なども登場する。
かつての「ぼくの家」の扉(この扉にも顔がある)には3つの南京錠がかかっている。
「ぼく」は黒猫にいざなわれ、鍵を探しにでかける。
この鍵はまた、プラハの古い歴史をも開く。
そのひとつがゴーレム伝説。ルドルフ2世の庇護をうけ、16世紀プラハは、錬金術とオカルト学の中心地になったようだ。
このゴーレムの記述に興味深いくだりがあった。
安息日に、お腹をすかせた少年がゴーレムに粥を作れと命じるのだが、そのやめさせかたを知らず、粥づくりはえんえんと続き、粥は天井までのぼり、扉を抜けて外にあふれていく。
これを読んで、以前読んだ、トミー・デ・パオラ作だったかの、パスタが町を埋め尽くす話を思い出した。
いったいなんだこのへんな話はと不思議だったが、「安息日」を破ったことに対する罰と考えればしっくりとくる。
なるほど、背後にユダヤ教的世界観があったのだ。
これも以前読んだ、ピーター・シスのダーウィンとガリレオ・ガリレイの伝記絵本と同様、絵が驚くほど細かく描きこまれていてとても贅沢な絵本。
思えばプラハはカフカの街でもあるのだな。この妖しいイメージを念頭にカフカの小説を読めば、また違った楽しみ方ができそうだ。というか、たとえばカフカの短編集とかの挿絵をピーター・シスが描いてくれたらと夢想する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魔法と伝説の街プラハ。
うっとりするほど緻密で美しく、幻想的で、そして不気味にも感じられる絵が、物語をさらに魅力的に仕上げている。
本書はプラハ出身ニューヨーク在住(当時)の作者が、幼い愛しい娘のために、自分の生まれ育ったプラハの街と、プラハに伝わる伝説を描いたものである。
主人公の僕が、黒い猫に導かれ、金の鍵を、伝説の物語とともに受け取っていく描写には、ドキドキワクワクさせられ、意匠を凝らした画面描写や、絵の中に盛り込まれたメッセージに思いを馳せながら読むことができ、素晴らしい。
伝説の中身もワクワク…だけでなく、考えさせられるところもある。
獅子を従えたいにしえの騎士ブルンツヴィーク、迫害されたユダヤの民の涙と夢で作られた人造人間ゴーレムとその末路、魔法のように美しい、信じられぬほど精巧な時計を街に作った職人ハヌシュ……
絵の描写の中では特に図書館…とりわけ図書館員のデザインが好きだ。
いや、青を基調とした街並みや、赤を基調とした街並み、猫の形の迷路のようになっている街並みなどなど、惹きつけられ、幻想的で美しい街並みの描写はどれも好きだ。
実際のプラハの街並みや歴史、伝説までもが知りたくなってきた。こんな素晴らしい絵本を生み出させる街とは。
"歴史上ずっと、訪れる人に
街の鍵を渡すならわしが続いてきた。
特別な客には二つの鍵を、
とりわけ特別な客には三つの鍵を。"
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ひとりの若者が乗った熱気球が、荒れ狂う嵐にさらわれて降り立った先は、魔法と伝説の街プラハだった・・・黒猫に導かれながら懐かしい街をさまよう。 若者はプラハに纏わる伝説(古の騎士ブルンツヴィ-ク、人造人間ゴーレム、時計職人ハヌシュ)の物語を読み終えるごとに、家の扉を開ける金の鍵が渡されていく・・・。 プラハで生まれ育ったピ-タ-・シスの少年の日の思い出を描いた大型絵本。 愛しの娘マデリンに伝えるプラハの光と闇の世界。
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ここは〈とりわけ特別な客〉のためのプラハ。すべてが夢を孕んで微睡み、夜の果てではあるけれど夜明けではない、絶妙な時間の薄闇に覆われている。この街が作り出した歴史が層をなして空気を澄ませている。街角に刻まれた長いながい歳月の痕跡をたどる逍遙へ。ぼくがこの街をおぼえていなくても、街がぼくをおぼえているから。プラハ城、カレル橋、オルロイ天文時計へと。 土地の精霊たちは用心深く、捉えがたく、威厳に満ち、秘密めいているけれど、友好的だ。
街が無意識のうちに備えもつ巨大な記憶というのは、案外、黒猫の姿をしていたりして。 -
作者がみずからの少年時代を回顧して描いたという絵本。猫を案内人として街の伝説に触れつつ歩くところは一風変わった街歩き番組を見ているみたい。しっとりとした雰囲気の古都というイメージを抱いていたが、薄闇の中のプラハは幻想的で恐ろしい。
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金の鍵を集めるたびに,一つの物語が語られる.ゴーレムはまさしくプラハという感じ.また彷徨い,黒猫に導かれて辿るプラハの街の様子が絵のなかに蘇っている.
芸術作品のような絵本だ. -
絵が何とも言えない雰囲気で流れて行きます。金の鍵の意味合いがよく分かりませんでした。
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「ピーター・シスの闇と夢」
2021.9.23~11.14
練馬区立美術館
展覧会で知ったアーティスト。
細かく描かれていて圧倒される。
ヨーロッパに行ったのに、プラハに寄らなかったのを後悔。
天文時計見てみたい。 -
ピーター・シスの原画展を観に行き、気に入ったので購入。
プラハに降り立った少年が、黒猫に導かれながらプラハの伝説を読み解いて行きます。
絵もステキで文章も読み応えがあって大人が楽しめる絵本