- Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776410423
作品紹介・あらすじ
1938年、第二次大戦開戦前夜のチェコスロバキアでは、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の危機がせまっていました。そんななか、子どもたちをイギリスに脱出させようと力を尽くしたニコラス・ウィントンと、彼に救われた669人の子どもたちの一人、ヴィエラ・ギッシングを描いた絵本です。株の仲買人をしていたニッキーがなぜ、多くの子どもたちを救ったのか、そしてなぜその功績を長い間誰にも語らなかったのか。ピーター・シスが10年の月日をかけて完成させた、心に深くささる作品です。
感想・レビュー・書評
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ピーター・シス作。恥ずかしながら泣いてしまった。
ニッキーことニコラス・ウィントンは1909年ロンドン生まれ。両親はドイツ系ユダヤ人のイギリス移民。
ヴィエラことヴィエルシカ・ディアマントヴァーは1928年プラハ近郊のチェラコヴィツェという町に生まれ育った。
2人の人生がどのように交錯するのか。それが本書に描かれた物語であり事実だ。
ニッキーは1938年の12月に友人とスキーに行くことになっていたが、その友人が彼に、プラハで会おうと言ってきた。
じつはこれは、ナチスによる「水晶の夜」事件などにより難民となりプラハにやってきたユダヤ人たちを救うための計画だった。
その頃、イギリスは17歳までのユダヤ系難民を受け入れていた。ニッキーはさっそく、子どもたちの写真と名前を集め始めた。そしてイギリス本国に戻り子どもたちを受け入れる里親を探し、資金を集め、政府の対応が遅いと書類の偽造さえした。
こうして、やがてチェコスロヴァキアの国境がナチスによって封鎖されるまで、子どもたちを列車に乗せてイギリスに逃した。結果、669人の子どもたちが救われた。そして、250人の子どもたちを乗せた9番目の列車は国境を越えられなかった。
ヴィエラはその子どもたちの1人だ。きっと作者ピーター・シスは自身の娘の姿を投影しているのだろう。
両親から離れ、ひとりロンドンに着いたヴィエラのシルエットに、彼女のチェコスロヴァキアでの思い出が投影されているページがたまらなく辛かった。
戦争後にふるさとに帰ったヴィエラは、両親、いとこ、みなが強制収容所で亡くなったことを知る。
「みつかったのは、昔飼っていたネコの子ども1ぴきだけでした」
彼女は4年後にイギリスに戻り、結婚する。
一方ニッキーは、この一連の出来事を50年間誰にも話さなかった。彼の妻がたまたま、屋根裏で救った子どもたちの記録を見つけなければ、この物語も描かれなかっただろう。
ニッキーは、その記録を捨ててしまうように妻グレーテに言った。
しかしグレーテは、子どもたちの消息を調べ始めた。
ある日、ニッキーのもとに電話がかかってくる。
「昔の知り合いに会ってみませんか?」
ヴィエラにも電話がかかってくる。
「昔の友人たちに会ってみませんか?」
ニッキーはテレビ番組に呼ばれた。彼の周りには見知らぬ大人たちが座っていた。その中に、ヴィエラの姿もあった。 -
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かとのひもさん
最近此の話を知り震えています。イザと言う時に動ける猫でありたい、、、かとのひもさん
最近此の話を知り震えています。イザと言う時に動ける猫でありたい、、、2022/05/22 -
猫丸(nyancomaru)さん
コメント、各本の細やかな関連情報をありがとうございます。
無力感に苛まれる世界情勢ですが、同じく動ける雀で...猫丸(nyancomaru)さん
コメント、各本の細やかな関連情報をありがとうございます。
無力感に苛まれる世界情勢ですが、同じく動ける雀でありたいです2022/05/23
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第二次世界大戦の直前、イギリス政府の17歳までの難民受入れに呼応し、ナチス・ドイツによるユダヤ人強制収容所に送られようとしていたチェコスロヴァキアのユダヤ人の子たち669人を英国本土に避難させる偉業を成し遂げ、戦後も長きに亘り沈黙を続けていたニコラス・ウィントン(Sir Nicholas Winton 1909-2015)の<英国のシンドラ->と呼ばれた、愛と勇気の真実の物語。 「ウィントンの子どもたち」のひとりヴィエラの日記や著書、インタビュ-記事に着想を得て出版された感涙の絵本。
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ナチスによるユダヤ人迫害は、ドイツ国内、そしてポーランドあたりかと思っていましたが、チェコスロバキアにも及んでいたことを初めて知りました。
ズデーテン地方という名前は、世界史で勉強した記憶がありますが。
というわけで、この時代のヨーロッパの地図と合わせて読みたい。
解説をよく読んで、子どもに読ませる場合は、背景知識も説明したほうがいいと思います。 -
感動的なストーリーです。ホロコーストで子どもたちを救ってイギリスに送った方の感動物語。
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ニッキーは、イギリスで銀行員として働いていました。スキー旅行にいこうとしていたとき、友達からチェコスロバキアのプラハにきてほしいと言われました。
一方、ヴィエラはチェコスロバキアの小さな町で生まれました。ネコが大好きで、家族と幸せにくらしていました……。
この本の発売が2022年3月。おそらく、出版の準備をしているときには、こんな情勢になるなんて思ってもいなかったことだろう……。
淡々とした語りを読み、ピーター・シスの独特な絵をじっくり見ていると、じわじわと物語が心に染みてくる。
どうしても、「ドイツ軍がチェコスロバキアの国境をこえ、ズデーテン地方にはいってきました」という部分が重く感じられる。
669人の子どもを助けたニッキー。それを誰にも言わず、心にしまいこんでいたニッキー。こんな人がいるんだな。ニッキーは、何にでも関心をもって、いろいろなことをやってみなさいと言われて育った。だからこそ、大人になってからも自らにできることを考えて行動し、それを特別なことだと思わなかったのかもしれない。 -
ホロコーストのことを書いた海外の作品の多いこと。日本で暮らしているとあまりなじみがないけれど、他人事ですませてはいけない歴史。とても勉強になりました。
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毎年8月になると第二次世界大戦の事についての本を読みたくなります。自分は大勢に流され安いので確固とした自分の考えを推し進める人に尊敬と憧れを覚えます。特にヒットラーのホロコーストに抵抗した人々に.........この本はイギリスに住むドイツのユダヤ系のルーツを持つ人がチェコのユダヤ人の子供たちをイギリスへ迎えることに奔走して多くの子供達を救い出しました。しかしそれを誰にも話さずたまたま彼の妻がスクラップブックの中に綴ってあるのを見つけて子供たちの消息を調べてもらい50年後に助けられた子供たちも自分の命を救ってくれた人に会うことができたと言う感動的な話です。
穏やかな絵と文で読み終えて何か心温まる思いがしました。 -
第二次世界大戦中、
静かな英雄イギリス人ニッキーと、
助けられた669人のユダヤ人子ども達の1人ヴィエラの物語。
戦争は絶対ダメ!
https://www.nhk.jp/p/wd...
https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/B3LY5X86JK/