パートナーシップ・マネジメント

著者 :
  • ゴマブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784777103751

感想・レビュー・書評

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  • P22
    インターネット証券会社という新しい業界を切り開いた、松井証券の松井道夫社長
    は語る。「これからの時代は『組織』 の時代ではない。『個』 の時代です。『個』 の時代の組織
    のあり方は、これまでのパラダイムとは大きく変わってきます。これからの組織は、
    パートナーシップに向かうでしょう」
    P26
    パートナーシップを、「共に何事かを成す仲間との、信頼に基づく対等な関係」と定義したい
    P25
    仕組みを変えるのではなく、そこで働く人々の「マインド」を変えることができれば、
    そこには何かが起こる。いくつかの組織の成功例は、我々が進むべき一つの方向性を、
    明確に示している。
    P30
    重要なのは、箱ではない。重要なのは、箱の内部にいる人々のマインドなのだ。組
    織の生み出す価値はすべて人が生み出している。自動化された製造工程やサービス工
    程が、人の手を離れて価値を生み出しているように見えるのは錯覚にすぎない。最終
    的にはすべては人によって生み出されている。
    P30
    米国の投資会社バークシャー・ハザウェイ社のCEOウォーレン・パフエツトは、
    「経営者の仕事とは、優秀な人材を集めて良い状態に保っておくことである」
    と述べている。「良い状態」とは、すなわち心の状態である
    P31
    人と人とを結びつけるものを、紐帯と呼ぶ′組織には、その構成員を結びつける紐
    帯が必要だ。さもなければ、遠心力が働いて組織は崩壊してしまう。
    P35
    働く人々の意識の変化を表す上で重要なキーワードが三つ存在する。
    ●「組織」から「個」 へ
    ●「ヒエラルキー」から「ネットワーク」 へ
    ●「デット(Debt)」から「エクイティ (Equity)」 へ
    P44
    パートナーシップを成功に導くためには、どういったことが求められるのだろうか。
    1.価値観と情報をしっかりと共有すること
    2.パートナーシップ・マインドをもつこと
    3.価値(アウトプット) に注力すること
    4.お金の話に正面から取り組むこと
    P45
    信頼とは、相手に委ね、相手に任せることである。一週間、一カ月、顔を見る機会
    がなかったとしても、「あいつならば大丈夫」と思えるかどうかである。自らが戦い
    の前線に赴いている際に、迷うことなく金庫の鍵と自宅の鍵とを預けられるかという
    ことである。
    P47
    「パートナーシップ・マインド」と呼ぶ。
    パートナーシップ・マインドとは、大きく三つの心から構成される。①自立・自助
    の心(セルフ・ヘルプ)、②まず与える心(バリュー・ファースト)③複眼の心 (マル
    チ・ビューポイント) である。
    P48
    「自分の給料を上げたければ、自ら価値を作り出せばいいのです」(ザリッツカールトン)
    P51
    顧客のニーズを満たすアウトプットでは不十分である。顧客のニーズを上回るアウ
    トプットを出すことが求められる。
    アウトプットと顧客の事前期待との間の開きのことを、「スプレッド」と呼ぶ。ス
    プレッドがプラスであって初めて、顧客は驚きを感じる。感謝を覚え、報酬に跳ね返
    る。しかし、当たり前のアウトプットに、何らの驚きも発生しない
    P72
    人と人とは最終的にはリアルなやり取りを経て、お互いの存在を肌で感じ、お互い
    への信頼を形成していく。しかし、結びつける部分については、バーチャルで充分な
    のだ。ブログによる情報発信は、己の価値観を知ってもらう極めて有効な方法である。
    SNSは、何らのコストをかけることなく、同好の士によるコミュニティをかたちづ
    くつていく。バーチャルな場では、人と人とが従来の何分の一の時間と手間とで結び
    つけられていく
    P80
    組織固有のスキルを時間をかけて身につけていくことは、時として大きなリスクですらあることが認識されるようになってきている。組織固有のスキルは、組織の外にひとたび出ると、まったく役に立たないのだ
    P93
    シリコルバレー在住のコンサルタントである梅田望夫氏は、オープンソースの本質
    について、「モチベーションの高い優秀な才能が自発的に結びついた状態では、司令塔にあたる集権的リーダーシップが中央になくとも、解決すべき課題 (たとえそれがどんな難題であれ) に関する情報が共有されるだけで、その課題が次々と解決されていくことがある」と書いている (『ウェブ進化論』筑摩書房)。
    P102
    サラリーマンは、もはやかつてのようにローリスクな生き方ではなくなってきてい
    るのだ。しかし、内包するリスクが大きくなってきているにもかかわらず、それに見
    合ってリターンが大きくなっているわけではない。サラリーマンという存在が、徐々
    に徐々に、ハイリスク・ローリターンの方向へとシフトしつつあるという事実
    P120
    価値観とは何か?
    それは、その人が、何のために生きているのか、何を大切にしているのか、何を譲
    れないのか、何を恥と思い、何を誇りに思い、何のために命をかけ、何のために命を
    投げ出せるのか。つまり、その人の生き様そのものである。
    P121
    【図表12】価値観の共有化をすべきポイント
    ●人生において何を大切に思っているのか
    ●何のためにこの活動をしたいと思っているのか
    ●どれくらいの時間軸を頭の中で考えているのか
    ●人生において重要なものは、この活動以外に何があるのか
    ●重要なものをどの程度犠牲にできるのか
    ●人生において譲れないものは何か
    ●活動の結果として、どの程度のお金を稼ぎたいのか
    ●活動の結果として、どんな状態になっていたいのか
    ●その時どんな感情を抱いていたいのか
    P124
    少し感情的なやり取りがあった後に、「最小の価値で最大の報酬を得ることほどおいしいものはないじゃないか」と彼が言った瞬間、私はそのパートナーシップが崩壊したのを感じた。この打ち合わせの後に帰宅するまでの電車の中で感じたなんともいえない感情は、忘れることができない。それは、我々を信頼してくれた顧客に対しての申し訳なさと、スタートの段階でしっかりと価値観のすり合わ
    せをしておかなかった自分自身への情けなさだった
    P128
    ピーター・ドラッカーは言う。
    「組織は、もはや権力によっては成立しない。信頼によって成立する。信頼とは好き
    嫌いではない。信じ合うことである。そのためには、互いに理解していなければなら
    ない。互いの関係について互いに責任をもたねばならない。それは義務である。』(『明
    日を支配するもの』)
    P130
    「モチベーションの高いメンバーだけで構成される小さな組織で、すべての情報が共
    有されると、ものすごいスピードで物事が進み、それが大きなパワーを生む。仕事の
    生産性が著しく向上する。誰かが提示した問題点が別の誰かによって解決されるまで
    の時間や面白いアイデアが現実に執行されるまでの時間は、ときに数分という場合さ
    えある。情報共有を前提とした組織原理によって、従来型組織の時間についての常識
    を破壊するスピード感が出る」(『ウェブ進化論』ちくま新書)
    P131
    その情報を伝えることが相手を煩わせるかどうかは、相手が判断することである。
    情報の受け手が必要ないと思えばそれなりの対応をする。情報の出し手が勝手にスク
    リーニングをかけてはいけないのだ
    P133
    ジョン・F・ケネディは、一九六一年一月二〇日の大統領就任演説で有名な言葉を
    述べた。
    Ask not what your country con do for you,ask what you can do for your country
    (国があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考え
    て欲しい)
    P134
    パートナーシップ・マインドは、具体的には、三つの心に集約される。
    すなわち、
    「自立・自助の心 (セルフ・ヘルプ)」
    「まず与える心(バリュー・ファースト)」
    「複眼の心 (マルチ・ビューポイント)」 
    の三つの心だ。
    P149
    常にクリティカルな視点を確保し、自らの頭でものごとを考えるためには、自社の
    ものだけではない視点を多くもっていることが重要だ。そのためにも、社外にどれだ
    け頼りになるネットワークをもっているか、が極めて重要になる
    P152
    パートナーシップの本質は、「Give&Take」(与えた分をもらう)ではない。「Give
    &Give」(与え、そして与えられる)なのだ
    P169
    成功するパートナーシップの5つのタイプ
    (1)価値観主導型:始めから、共通の価値観を原因として集まったパートナーシップ
    (2)プルフェッショナルファーム型:共有のプラットフォーム上にプロフェッショナルが集まって活動する。ブランド、バックオフィス、セールス機能等を共有化
    (3)期間限定プロジェクト型:あらかじめ期間を区切ってメンバーが集まるパートナーシップ
    (4)リーダーシップ型:強力なリーダーが打ち出すビジョンによって結べつけられたパートナーシップ
    (5)組織内パートナーシップ型;ヒエラルキー組織内で、パートナーシップスタイルのマネジメントを実現したもの
    P175
    マネジメント、従業員、サプライヤー、顧客、投資家、すべてが同じ価値観でつな
    がっている。一つの価値観のもとにすべてのステークホルダーがつながり、パートナー
    シップを構成する。その一つの理想像が、パタゴニアである。
    P194
    板倉雄一郎事務所の九名のパートナーも、もとをたどればすべてこのエッセーによ
    る情報発信が引きつけたのだ。
    「リーダーの役割は、優秀な人々を集めること。そして、彼らを良い状態に保つこと。
    それだけです。優秀な人々は、お金なんかじゃ集まりません。どれだけ価値のある、
    どれだけ楽しい活動をしているかじゃないでしょうか。楽しいことに、人は集まって
    くるんだと思います。」
    P197
    「人生でもっとも時間を使うのは仕事だから、そこでも『fun(楽しさ)』を追求して
    みたい」と語る田中氏
    P198
    組織内パートナーシップにおける大きな特徴は、従業員を命令に従うべき「部下」
    ではなく、対等な存在の「パートナー」として扱うということである。唯々諾々と命令に従うべき部下ではなく、対等なパートナーとして扱うということは、つまり多くの権限を与えるエンパワーメントを行うということでもある
    P201
    エンパワーメントで従業貞に認められている権利は、以下の三点である。
    ①上司の判断を仰がずに自分の判断で行動できる権利
    ②セクションの壁を越えて仕事を手伝う時は、自分の通常業務を離れる権利
    ③一日二〇〇〇ドルの決裁権
    P204
    星野佳路社長は強いリーダーシップにあふれた経営者である。しかし、同社長は社
    員に次々に命令を下していくわけではない。各社員の判断を尊重し、社員をパートナー
    として尊重し、最終的な意思決定までを社員にゆだねる。経営方針を決める会議でさ
    え、社長は決定を下さない。「どうしますか」と問いかけ、社員が議論を深め結論を
    出すように誘導していくだけだ
    P213
    フェイス・タイムという言葉がある。顔を見せるためにオフィスにいる時間。「私
    は働いていますよ」とアピールするための時間、というような意味だ。
    企業というものには、多かれ少なかれ、フェイス・タイムというものが存在する。
    P220
    コンサルティング会社では、「アップ・オア・アウト」という言葉がある。「昇進す
    るか、さもなくば去れ」という意味である。
    P235
    教育というのは、「あれをしちゃいけない」と植えつけることではない。人間とは
    何のために生きていて、誰のおかげで生きていて、だから何をしないといけないんだ、
    と知らせることだ、と僕は思うんですね。
    P242
    本来、価値は自分でつくるものであり、価格は他人が決めるものなんですよ。本の
    値段は出版社が自分でつけてるじゃないか、といっても、その価格を相手が認めてく
    れなければ成り立ちません。
    そう考えると、企業が、お客さんからいただく価格を増やす唯一の方法は、提供す
    る価値を増やすしかない。その価値を高めるものは何かといえば、哲学や思想であっ
    て、まずは、その部分を社内で共有化していかなくてはならない。
    P246
    雇用であれ、男女関係であれ、人間関係は、その関係を定義した瞬間に壊れる、と
    僕は考えているんですよ。関係を定義すると、関係の維持を重んじるようになる。す
    ると、お互いが本当のことを言わなくなりますから。関係のかたちは維持できたとし
    ても、ハート・トウ・ハートな関係は壊れていく。

  • ヒエラルキー形組織か、パートナーシップ方組織か。本来モチベーションを源泉に働く組織はパートナーのほうがいい、という納得感。

  • パートナーシップという概念は、専門職である自分には非常に共感できるものでした。
    独立を志向する専門職向けには非常にためになる一冊です。

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