- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784777828258
作品紹介・あらすじ
一子相伝でなく、血縁以外に門戸を広げている師匠と弟子の“リアル”な関係を、16組に取材して描き出していきます。そこには、長年の作業で身に付けた確固たる思想や、引き継いでいく金言があります。日本美術や工芸に興味がある人はもちろん、職人という生き方に興味を持っている多くの人たちにも手に取ってもらえる一冊です。
感想・レビュー・書評
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この手の本には 目がない
ついつい 手が出てしまいます
本当に大事なものは
目に見えないんだよ
そのことは
「職人」さんの世界では
ごくごく当たり前のこと
いろいろなところで
耳にしてしまう
「後継者が居ない」
そんなことを吹き飛ばしてしまう
力強い一冊です
つい数十年前には
ごくごく当たり前のことであったことが
いまでは…
それゆえに話題なっている
なにか釈然としない
気持は残ります -
『師弟百景』
井上理津子
2023年
辰巳出版
職人とは気難しく寡黙で
「師の背中を見て仕事を覚える」
といった一昔前のイメージは全くなく、
気さくで大らかな師匠と、
仕事に真剣で夢中な弟子たちの姿を
丁寧に取材した大変読みやすい本だった。
本書で取り上げられた
庭師や仏師、佐官に文化財修理装潢(こう)師、
刀匠に英国靴職人など、
16組の師弟たちそれぞれの人物の人生が
どれも興味深かった。
個人的に興味のある分野、
仏師の項目では、
鎌倉時代の仏師、運慶・快慶の流れをくむ
「慶派」唯一の継承者であり
仏師の最高位、大佛師の称号を持つ
松本明慶(みょうけい)氏の言葉が印象的だった。
「私は仏さんをつくろうと思って彫っていくのではなく、
木から要らないところを削り落としていくと、
そこに仏さんがいはるんですね」
これはルネサンス期を代表する
彫刻家ミケランジェロの
「すべて大理石の塊の中にはあらかじめ
像が内包されているのだ。
彫刻家の仕事はそれを発見する事」
と共通している思考だし、
夏目漱石が『夢十夜』で
運慶を登場させた際に出てくる言葉とも
共通している。
それを踏まえた上で松本明慶氏は
伝説的な「慶派」の長に倣った
言い回しをしたのかもしれない。
もう一つ印象に残った言葉に、
文化財修理装潢(こう)師の半田昌規氏の
「我々がおこなっているのは、
九十歳のおばあさんを二十歳に戻すのでなくて、
九十歳のままの姿を保ってもらうことなんですね」
がある。
偉大な作品の歴史をつなぐという
重大な仕事であり、
気が遠くなるような地道な作業であり、
繊細な技術が求められる世界において
大らかで説得力のある言葉だと感じた。
閉鎖的で師匠の檄が飛ぶような光景を
イメージしがちな職人という世界において、
深刻な人手不足が叫ばれる昨今、
師匠と弟子の関係も柔軟に変化してきた。
これからも本書で紹介された師弟関係、
そして職人という仕事が
後世に伝えられていくことを願ってやまない。
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⚫︎目次情報⚫︎
はじめに
1 庭師
2 釜師
3 仏師
4 染織家
5 左官
6 刀匠
7 江戸切子職人
8 文化財修理装潢師
9 江戸小紋染織人
10 宮大工
11 江戸木版画彫師
12 洋傘職人
13 英国靴職人
14 硯職人
15 宮絵師
16 茅葺き職人
あとがき
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写真が豊富なので師匠と弟子が並ぶ時の笑い顔が眩しく、そしてどこか似通ってる
背中を見て覚えろはない。手取り足取りでも職人としての矜持は失われず、無給の仕事でもやる
なぜやるか?楽しいからだ。誇りを持っているからだ
そういう人たちの伝えたい思いとその思いを受け取る姿勢は頼もしく美しい -
いつも聴いているpodcastの番組に著者の井上理津子さんがゲスト出演していて紹介していた著作です。
内容は、今日に続く“職人” の世界を舞台に、“伝統的技芸”を伝えていく師弟関係の「今」を紹介した著作です。丹念な取材で描き出された“職人の世界”のエピソードはどれもとても興味深いものでした。
登場する職人芸はどれも素晴らしく見事なものですが、それを自分が修行で会得するのは、並大抵の決意では無理ですね・・・。 -
厳しい世界であることはもちろんですが、高学歴の世界でもあると感じました。
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750-I
閲覧 -
宮大工や陶芸など職人からイメージするものから洋傘や絵画修復までさまざまな分野の師弟が紹介されている
弟子になるきっかけ
師匠の教え方
師匠のまた師匠との出会い
多くの師弟が描かれ、この本の何倍もの濃密な師弟の関係が日本中にあることを想わせる
伝統と革新に感銘を受ける弟子と、弟子に真摯に向き合う師匠
日本の底力はまだまだあるなと感じた