資本の世界史 (atプラス叢書12)

  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778314866

作品紹介・あらすじ

資本主義はイングランドの片田舎で偶然生まれ、その後幾度もの危機に直面してきた。にもかかわらず、いまや資本主義はわれわれの世界を規定さえしているように見える。しかしそれはほんとうだろうか。資本主義の寿命はどのあたりまできているのか。多くの危機はその欠陥によるものなのか。ドイツの気鋭経済ジャーナリストが歴史から資本主義の輪郭を浮かび上がらせる。

感想・レビュー・書評

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  • 世界史(特に覇権絡み、近代以降)マニアとしては、「○○の世界史」「○○で読み解く歴史」の類は「○○」のレンズから世界史を一気に眺められるので、既知の知識を心地よくマッサージされている感覚になれて心地よい。

  • 流読。
    具体例がやや長く散文的な文章であるが、資本を軸とした通史の復習として。

    資本主義は成長を必要とし、持続的な成長はなし得ない。
    新たなシステムが予期せぬ形で生まれる。

  • 興味深かった内容3つ。
    低賃金が成長を生むのではなく、高賃金がトリガーになる。
    イギリスでの産業革命は賃金が高くなってきたために、機械での代用がわりにあった。

    貯蓄は悪。
    個人の貯蓄→消費量の減少→収益の低下→企業は投資を躊躇う→経済成長の低下

    持続的な成長などない。
    資本主義のおかげで富がもたらされ、技術の進歩も可能となり、少ない労働力でやっていけるようになった。
    例として、カーシェアリング。
    車一台を複数の家計で共有する。家計的には良いだろうが、車はあまり買われなくなる。産業の収縮が起きるのでは?

  • 経済史の概説を通して資本主義を丁寧に再定義している。資本主義と市場経済、実体経済と金融経済、金融危機と経済危機といった概念間の明確な分離の上で、資本主義の本質を洞察しようとする試みは秀逸で、個人的には靄が晴れるような体験であった。終盤では未来についての記述も、資本主義の枠組みの内外でそれぞれ数頁ずつ割かれており、短いながらも一貫性があり納得のいく内容であった。著者はドイツ人であり、ドイツを中心とした記述も見られたが、その多くが一般化可能な内容であった。経済学を専攻しなかった人こそ読むべき一冊。

  • 資本主義経済体制の世界史 産業革命を機に未曾有の経済発展を実現した
    その成功ゆえに「地球環境の制約」という新たな本質的課題に直面している
    加えて「コロナ禍」が加わり、経済体制の見直し・改革論が噴出してきている
    マルクス資本論ブームはその象徴である
    著者は軽々に資本主義経済体制の終焉論には与しない
    代わり得る体制が明らか出ないこともあるが、資本主義はまだまだ使える体制と評価
    しかし新自由主義の行き過ぎは是正しなければならない
    ケインズ的な「マクロ管理」の強化を主張する
    地球という視点で、社会インフラ・ネットワークの再構築を行うと言うことである
    短期的効率主義により、電力・鉄道・通信・道路・教育・医療といった「社会共通資本」は社会的公正からは乖離してきた
    これを民主主義により改革していくことが現下の課題
    バイデン米国大統領の施政方針と重なるものがある
    民主主義の信頼・信認を取り戻さなければ人類に未来はない
    ①世界のバセンスシートの拡大には警鐘 「スーパーバブル」ははじける
    ②世界史では「中国一強」かほとんど 1840年から植民地化が異例
     習近平は世界史の流れを元に戻す 回帰させ正すという考えではないか

  • 私たちは、過剰な消費社会を生きており、その過剰を持て余している
    という一節に共感

  • 18.2.3 NHK 欲望の経済史 ルールが変わる時

  • エキサイティングな良書

  • ギリシャやローマでは、生産の効率化のために資金を借りるという発想がなかった。
    遠隔地貿易は昔からあった。
    労働力が安かったため、ローマやギリシャでは、技術革新をする必要がなく、資本家は育たなかった。

    中国は海洋帝国になれる力はあったが、商業には興味がなく皇帝への貢物だけに興味があった。

    馬にできること(荷物を運ぶこと)をわざわざ機会がやることもないだろう=セイ。
    工業化はひっそりと始まった。
    イギリスで産業革命が始まったのは、賃金が高かったから。
    機械に変えるだけの投資の意味があった。
    資本主義を駆動するのは高い賃金。
    フォード「自動車が自動車を買うわけではない」

    資本主義に対する誤解。1、資本主義は市場経済と同一ではない。2、国家は自由な市場を脅かす攪乱者、ではない。3、グローバリゼーションは21世紀の発明、ではない。

    資本主義は、統合を目指すことになる=市場経済とは反する動き。
    農業補助金がなければ農業は滅びる。
    自営業者のみが競争の中で生きている。

    実質的な意味での自由な労働、は無制限の契約の自由を制限したことで、可能になった。

    放送大学

  • 読了

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著者プロフィール

ドイツの経済ジャーナリスト。1964年生まれ。銀行勤務を経て、ベルリン自由大学で歴史学と哲学を専攻。2006年より日刊紙『taz』で経済部門を担当。著書にHurra, wir dürfen zahlen - Der Selbstbetrug der Mittelschicht, Frankfurt a.M., 2010(『バンザイ、払ってもいいんだね――中間層の自己欺瞞』)、『資本の世界史』(猪俣和夫訳、太田出版)、『スミス・マルクス・ケインズ――よみがえる危機の処方箋』(鈴木直訳)、Deutschland, ein Wirtschaftsmärchen: Warum es kein Wunder ist, dass wir reich wurden, Frankfurt a.M., 2019(『ドイツ・経済物語――われわれが豊かになったことは、なぜ奇跡ではないのか』)などがある。

「2020年 『スミス・マルクス・ケインズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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