巨乳の誕生 大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか

著者 :
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778316051

感想・レビュー・書評

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  • 牧場に行った時、種付け用に針金で作った粗末な人形に馬が興奮するのを見て哀れだなぁって思ったけど、AV女優のシリコンの巨乳に興奮する人間様も同じだった。

    でも、本書を読んで巨乳に興奮するのは最近、しかも、明治まで、日本人はオッパイには興味が無かった事を知った。面白いですね

  • これほど、一つのテーマで掘り下げて調べ尽くしている本もそうないと思う。明治以前の胸の扱われ方から、2000年代の爆乳まで網羅的に、巨乳の通史を描いている。
    戦後アメリカの影響でブームが来るも、ツイッギーのスレンダーブーム、ウーマンリブ運動に押されて沈静化し、グラビアブームで再び盛り上がるも、廃れる時期があるなど、流行に波があると言う点が興味深い。景気の波とかと関係があるのかもしれない。そして、90年代には他のサブカルと同じようにタコツボ化してしまうというのもおもしろい。

    それにしても、巨乳を巡る言説というのはいつでも、現代であっても女性を置き去りにして男性だけで盛り上がっているのだなと感じた。なんというか、若干虚しさがあるなぁ。一方的で、相手のことなどまるで考えてない。だからこそAVはファンタジーなのだろうけれども。うまく言えないけれど、これでいいのだろうか?と疑問を持ってしまう。
    女性を男性がどう見てきたか?男ってアホだな…というシニカルな視点で読むことをおすすめする一冊。

  • ヨーロッパでの、胸、あるいは、肉体に対する感覚が、ギリシャ時代からの思想やキリスト教の考え方から影響を受けているとか、それに反して日本の着物文化や社会風土により、春画などからも分かるように胸は顔の延長、性のシンボルとしては下半身のみ意識されていたという指摘は興味深い。ある方向(巨乳化)に進めば進むほど過度なところまで行ってしまって、その反動で真逆のものが出てきたりするのはどんな分野でも一緒なのだと思う。どんどん複雑化していったクラシック音楽が新古典主義に戻ったりとかみたいな。

  • 昭和になってからの「ニホンのエロ風景」を大まじめに調べ、民俗本として読めるものにした一冊。

    著者のこの手法は、かなり完成度が高く、そういえばそういう人がいた、と懐古しながら読むもあり、鮮烈な「アノ作品」が世に出るまでの時代の雰囲気を知るために読むこともできます。
    途中で「エロネタ」に堕しないように、つとめて平静に冷静に、女性の胸がどんな対象だったのか、その空気を変えたのは誰のどんな胸だったのか、歴史と史実をたどる旅をしているような感覚で読むことができます。

    ありとあらゆる刺激的なコンテンツがあふれている今、なんとなく行き着くところまでいってしまった感があります。過去の時代の興奮、その時代の異常なまでの受け入れられ方と廃れ方を見ると、今現在の状況の方が異常な感じすらします。

    性の対象は、つぎ、どこに進化するのだろう、と思わずにはいられません。それくらい、複雑で扱いにくいのが、エロ。そういうものなのかもしれません。

  • この国のマスメディアは「おっぱい」をどう扱い、より大きなソレへの欲望を焚き付けてきたか、その変遷を辿った記録である。もともと「巨乳」はそれほどもてはやされていなかったのだ。「ボイン」「デカパイ」などの語彙の発明、映画の宣伝コピー、雑誌の見出し、松坂季実子の伝説的デビュー作のタイトル『でっか〜いの、めっけ!』などなど、多種多様なフレーズをよくぞ考えたものだなと、しみじみ思う。

    下着デザイナーの鴨居羊子(鴨居玲の姉ですよね)がグラマー体型を女性の解放に結びつけていたという話が興味深い。いわく、「エレガントの優美さとか、小粋な魅力を今日的に否定する能動的な女の魅力」であると。シミラボのマリア様を思い出した。

    「愛らしい顔立ちとCDシングル大と言われる大きな乳輪のアンバランスさが魅力だった五島めぐ」(p.180)
    「そして1999年、94センチHカップのMEGUMIがデビューする。R&Bに傾倒し、シンガーとしてオーディションを受けては落ちることを繰り返していたという19歳である」(p.218)

  • <目次>
    序章   原宿に日本初の巨乳専門ショップがあった
    第1章  巨乳をめぐる世界史
    第2章  おっぱいは性的対象ではなかった
    第3章  グラマーの襲来
    第4章  ボインの時代 ナインの時代
    第5章  デカパイからDカップへ
    第6章  巨乳の誕生
    第7章  それは爆乳と呼ばれた
    第8章  21世紀の巨乳たち

    <内容>
    全般は歴史や世界を辿っていて、考察的。後半は駆け足で事実を並べただけかな?出てくるAV女優さんたちも知っている人もいれば、有名らしいけど知らない人も。日本のAVの歴史を辿っている部分もある。

  • メディアの視線に注目した現代史


    【書誌情報+紹介】
    価格 1600円+税
    判型 四六判
    ページ数 288ページ
    ISBNコード 9784778316051
    搬入年月日 2017.11.17

    巨乳? ボイン? デカパイ?

    以後、おっぱいについて語る者は、この本を避けて通ることはできないだろう。
    「おっぱい」はいつから性器になったのか。巨乳愛の虚実を谷間に探る! 都築響一(編集者)

    いつの時代でも大きなおっぱいが好まれていたわけではない。70年代にはユニセックスで華奢な体つきこそがファッショナブルであり、80年代のAV業界でさえも胸の大きなAV女優は人気を得ることができなかった。ようやく「巨乳」という言葉が誕生し、一般的に普及したのは1990年頃になってから。それまでは「ボイン」「デカパイ」「Dカップ」などと呼ばれていた。江戸時代から開国、敗戦、経済成長を経て現在、社会の「大きなおっぱい」の受け止められ方は、時代を反映して変わっていく。なぜ変わっていったのか。その理由と全貌をあきれるほどの調査で明らかにした革命的論考。
    http://www.ohtabooks.com/publish/2017/11/17155544.html


    【目次】
    はじめに

    序章 原宿に日本初の巨乳専門ショップがあった 
    原宿に巨乳ファンの憧れの地があった
    巨乳、特撮、プロレスが同居するショップ
    淀川長治の弟子が始めた巨乳メーカー
    巨乳フェチAV第1号『淫乳』
    初の巨乳専門AVメーカーの誕生
    マニアのための店「ヴイ・レックス原宿」
    ヴイ・シー・エーの失速と終焉

    第一章 巨乳をめぐる世界史 
    「巨乳」は古代から求められていたのか
    コルセットからブラジャーへ
    男性の興味は脚から胸へ
    拡大するグラマー幻想
    巨乳崇拝者ラス・メイヤー
    グラマーの失墜と復権
    豊胸手術の発展と破綻
    整形巨乳があふれたアメリカのヌード

    第二章 おっぱいは性的対象ではなかった 
    なぜ春画では乳房が描かれなかったのか
    日本人にとって裸体は顔の延長だった
    男性も女性も肉体は同じ?
    愛撫されなかった乳房
    おっぱいを表現する言葉は「乳」のみ
    貧乳が美人の条件だった
    巻き起こった裸体画論争
    禁じられた裸体
    腰巻事件が浮きぼりにしたもの

    第三章 グラマーの襲来
    肉体女優の出現
    日本初の巨乳アイドル
    国産肉体女優たち
    グラマーという表現
    巻き起こるグラマー・ブーム
    日本流グラマー= トランジスタ・グラマー

    第四章 ボインの時代 ナインの時代
    若者向け雑誌の登場とグラビアの隆盛
    ボインの誕生
    ボインの語源
    ボインが注目された1967年
    胸の大きなナオンは時代遅れ?
    胸の大きい女性は頭が悪いという神話
    清楚な女の子は胸が小さいはず?
    コイン、ナイン、ペチャパイ
    グラビアアイドルの元祖、アグネス・ラム
    麻田奈美、リンゴヌードの衝撃
    オナペットと呼ばれた巨乳たち

    第五章 デカパイからDカップへ
    巨乳専門誌『バチェラー』の誕生
    デカパイという表現
    ビニ本の人気は「素人」っぽさ
    AVユーザーは胸に興味がない?
    初の「巨乳AV」が発売
    ジャンルとなった「巨乳AV」
    巨乳はDカップと呼ばれた
    男女のカップ表記に対する温度差
    Dカップ京子、デビュー!
    Dカップ女優たち
    グラビアアイドル第1号・堀江しのぶ
    漫画へ波及したDカップ
    なぜ「Dカップ」だったのか?

    第六章 巨乳の誕生 
    松坂季実子の衝撃
    AV業界に吹き荒れた巨乳ブーム
    「巨乳」はいつ生まれた言葉か
    そして「巨乳」は成長した
    毎月1日は巨乳の日
    堀江しのぶを継ぐもの
    伝説の眼帯ブラ
    そしてグラビアの時代へ

    第七章 それは爆乳と呼ばれた
    驚異の104センチIカップ
    季実子もケイもかなわない
    タイタニック・ティナの幻
    爆乳とプランパー
    マニア化する巨乳
    次々と登場する爆乳女優たち
    爆乳化するグラビアアイドル

    第八章 21世紀の巨乳たち
    ダブル専属デビューした超大型新人・麻美ゆま
    もはや特殊ではなくなったHカップ
    爆乳着エロアイドルのAV侵攻
    非現実的なまでのナイスバディ女優たち
    微乳の誕生
    微乳の魅力とは何か?
    史上最も売れた巨乳
    TOEIC990点の爆乳女優
    妄想が実体化していく時代

    おわりに
    巨乳年表 1871〜2017
    参考文献一覧

  • 江戸時代は胸までが顔の一部と考えられていたため、あるいは服を着たまままぐわうことが多かったため、巨乳は付加価値ではなかったという。

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著者プロフィール

1967年埼玉県生まれ。ライター、アダルトメディア研究家。
美学校考現学研究室卒。主にアダルト産業関連をテーマに執筆。特にエロとデジタルメディアの関わりや、アダルトメディアの歴史の研究をライフワークとしている。AV監督やカメラマン、漫画原作者、トークイベントの司会者などとしても活動。
主な著書として『痴女の誕生――アダルトメディアは女性をどう描いてきたのか』(2016年)、『巨乳の誕生――大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか』(2017年)、『日本エロ本全史』(2019年、いずれも太田出版)、『AV女優、のち』(角川新書、2018年)、『ヘアヌードの誕生――芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』(イースト・プレス、2021年)などがある。

「2023年 『日本AV全史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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