- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778316129
感想・レビュー・書評
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「おとちん」のこだまさんの自伝的エッセイ。
壮絶です。壮絶な人生過ぎて笑ってしまう。
これだけ、運がなくて普通に生きられない人も珍しいのではないか。
世界運がない人ランキングがあれば間違いなく上位入選だろう。下手するとヒトケタの順位で。
一方で、生きているだけで儲けもの、という考え方もある。そんなポジティブさがこのエッセイ集を支配している。
悲壮感もなく淡々と綴られた壮絶な人生からは、不思議に温かみすら感じる。
こだまさんは、最強のユーモアと知性を持ち合わせた人だと思う。
「言えない」が好き。力強くて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと最近、新しい仕事に疲れて、落ち込んでいて……こういう時って、自分よりもっともっとドン底を生きた人の経験談が読みたくなる。性悪だな…と思うけれど。
読み進めてみると、確かに、こだまさんは、かなり運の悪い人。生まれ育った所は、ヤンキーと百姓が九割を占め、芸術や文化、コンビニも学習塾も駅も無い、最果ての集落。性格は内向的で地元を出るまで、友達と呼べる人は一人もおらず、容姿にもコンプレックスがあり、特病があるため、半年から数年で療養と転職を繰り返さねばならない。
でも、読む前にイメージしていたのと少し違っていた。自分の不幸をただ笑い話にしているのでも、朝ドラや24時間テレビのように「ハンディを乗り越え成功する姿」を上から描くのでもなく、自分の環境や自分自身、自分を取囲む人々を静かに受け入れ、愛情を注ぎ、その上で笑い話にしているのだ。
「無口で友達は一人もいなかった」と書いているが、本当は人間好きらしく、子供の頃からの夢を貫いて小学校教員になられた。結局、挫折して退職されたが、普通なら教員向きに思われないタイプでも自分の思いを貫かれたところに芯の強さを感じる。
何回かの入院や転職を余儀なくされるうちに、色々な人との出会いや連帯感が生まれたり、失望の中で一筋の光に励まされたりされている。
中でも面白い話が「春の便り」。山奥に転職することになり、住むのに見つかった家が「とてつもなく臭い家」だったらしい。余りにも便槽が臭くて料理することを旦那さんに禁止されたほどらしいが、旦那さんはその家に長くいたくないために、今まで精神を患って仕事を休んだり遅刻早退を繰り返していたのが、逆に朝早くから仕事に行き、夜遅くまで仕事をしたり飲み会に行ったりするようになったという話。逆境が人の生活を好転させることもある。「ピンチがチャンス」とか大袈裟なことではないが、こだまさんはどんな状況でも頑固に耐えてきたあとで、一筋の希望を掴んている。
家族に対する愛情が感じられる文章も好きだ。こだまさんのお母さんは昔は感情に任せて子供たちを罵ったり、張り倒したりの「雷おばさん」だったらしいが、こだまさんが大手術をした時、夜行バスで見舞いに来てくれ、「何か必要なものは無い?」と聞くので「無印のパンツ」を頼んだところ、「無印のパンツ」を「無地のグンゼ」と間違えて、何とも色気の無い真っ白な大きなパンツを買ってきたらしい。病室のみんなに笑われたが、無印良品なんて目にすることもない集落に住む母親には分からなかったのだと気づいて涙が溢れたという話。
こたまさんは、仕事を辞めてすることがなくなり、ブログを始めたところ、インターネットを通じて沢山のお友達が出来たと書かれているが、私はこの本を通じてこだまさんとお友達になれた気がした。 -
『夫のちんぽが入らない』もよかったが、これも良い だれにでもそれぞれ多少のコンプレックスはあり、ふとしたときにそういうものを気にしながら人間は生きているとおもう なかにはそれが耐えられなくなってしまう人もいるだろう そんなときに こだまさんは、読む人を笑わせながら、視点を変えるヒントをくれる
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20本のエッセイが収められた作品。中には思わず笑えるエピソードもあったが、小説と同じような雰囲気が強い。読んでいて息苦しくなることもあって、残念ながら自分には合わなかった。あくまでも個人の意見です。
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結構不幸な人生を歩んでいるのに何故か悲壮感が漂わない不思議な感じ、積極的にガシガシ前に進んでるって感じではないけれど、後ろ向きでもなく少しずつゆっくり前に進んでる感じがとても印象的だった
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前作「夫のちんぽが入らない」よりパワーアップした衝撃度バツグンの自伝的お話が満載。その生きざまが「やっていることは古代人とさして変わらなかった。」などのエピソードがあり、お腹をかかえて笑ってしまうものもあった。楽しく読んで、スカッと生きましょう。
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おしまいの地に住む主婦、こだまさんのエッセイ。
「夫のちんぽが入らない」の作者であることから気になってパラパラめくり別に読まなくてもいいかな〜と一度は思ったのですが、なんとなく、最後まで読むべきだという気がしました(読むべき本を読むには得てしてそういう直感を大切にしなければならない)。
おもしろかった。辺鄙な集落で育つ、暗くて内気な一人のちいさい女の子がいた。
生まれながらの不遇というか、持って生まれた運の悪さというか、災難を悲壮感でラッピングしたエピソードばかりが綴られていく。けれどその幸薄い感じが飄々とした文体とあわさって、病みつきになる独特な読み心地に仕上がっているのだ。
他人の目ばかり気にしてしまう。劣等感のかたまり。小心者なのに大それたことをしてしまう。我慢が板についてしまう。そもそも自分のことが分からない。
ごだまさんの性格(あるいは性質、習性)には共感できる部分が多すぎた。
最終的に得た知見、「人はどのようにも生きられる」は深いなぁ。
一見分かりやすいような言葉だが、そこには死に損なったか、極限に一度でも達したかした者でないとみえない悟りの景色が広がっている。 -
なかなかにブラックでハードなことが書かれているのに、読む人の気持ちを暗くさせない筆致がすごいなぁ。
これはもう天が与えし才能なんだろうな。
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前作「夫のちんぽが入らない」がとっても良くて、読んだ後、すぐにこの「ここは、おしまいの地」も購入。それが2018年頃?
でも、前作はあんなにすっと読めたのに、これは当時の私にはあまりしっくり来ず、3分の1くらい読んだ所でそのままになっていた。
(前作のような衝撃を求めすぎてた?私の中でおしまいの地は前作に比べて緩やか?で淡々としたイメージ)
そして、現在
先日、本屋さんでおしまいの地シリーズが3作目まで出ているのを発見。やはりこだまさんの書く文章が好きだったし、コンプリートしたいなと思い再スタート。
なんで以前の私は読むのを辞めたのか。
面白い。笑える。
と、思いきやたまに心がギュッとなる。
そして、懐の深さを感じる。 -
スーパーの鮮魚コーナーを物色していた父が、一匹八十円と書かれた蟹を見て「虫より安いじゃねえか」と呟いた。
『夫のちんぽが入らない』から1年。“ちょっと変わった"人生のかけらを集めた自伝的エッセイがついに書籍化!(Amazon紹介より)
影のある人の自伝はなぜこんなにも濃密なのだろう。謎のエネルギーを感じる本でした。過去の失敗やネガティブなこともこうしてエピソードとして吐き出せるのは、それだけ人生経験を積んで、過去と向き合う勇気があるからなんだろうな。だからなのか、ネガティブで暗い中にもちょっとした余裕や明るさが感じられました。どんな生き方でも、将来笑えればそれでよい人生だと思える一冊です。 -
こだまさんは クラスの卒業文集で
「早死にしそうな人」ランキングの
一位を取ったそうですので
イメージを覆し
ぜひ 長生きしていただき
こんな笑ってはいけない笑えるエッセイを
沢山書いていただきたいです -
こだまさんの文章を読んだあとは 決まってこだまさんをギュッと抱きしめたくなる。
おしまいの地での思い出の記述は、自分の幼い頃の感覚(アザとか赤面症とか対人恐怖とか親の暴力とか)が蘇ってくるよう。どこか似ている。似ているので、笑いながら泣いてしまう。小さかった自分がここにいたら、きっと何も言わず抱きしめているだろう。
『川本、またおまえか』が特に残る。大人になってからの川本の最後の言葉に、胸がいっぱいになった。 -
逆境を受け入れて楽しむ。自らに清濁を併せ持って人間は完成する。筆者の円熟した魅力が読者にも感じられる。読む人に人生の果てしなさを教える。
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おしまいの地というタイトルそのもののど田舎でたくましく?生きてきた姿を開き直って開示する.大変な経験だけどどこか笑いに昇華させる今のこだまさん,人生丸ごと肯定して吹っ切れたようで良かったです.
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ここは、おしまいの地
著作者:こだま
発行者:太田出版
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
読むと勇気をもらえると評判の話題作のエッセイ。 -
読み始めは、さくらももこの再来ぐらいの捉え方で楽しんで読んでいたが、そのうちこの作家の無自覚な狂気が伝わってきてどんどん引き込まれた。ちょっとこの人、狂ってる。今後も追いかける作家が、1人増えた。
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“どうかそっとしておいてほしい。だから、もう誰もこっちを見るな。”
私と一緒だ。泣きそうになった。
普通の人に近付きたいと思ってる。
大人になってもまだこんなこと思ってる。
大変な出来事もこだまさんみたく面白おかしくネタにできたらどんなにいいか。 -
前作の方がはるかに重い話だったけれど、読んでいる私はこっちの方がしんどかった。なんでだろう。
特に、子供のころの話が読んでいて辛かった。
脅えて縮こまって、体の不調をギリギリまで我慢している小さな姿が目に浮かんでやるせなかった。今もそれほど変わっていないのがなんだか辛い。もっと自由に生きていいのに、と外野が言うのは簡単だけど、こういう人たちにとっては、我慢するのが一番楽なんだよなぁ、と思う。
教師の力って、あなどっちゃいけないんだなぁ、とも思った。こだまさんみたいな子供はきっと世の中にたくさんいるんだろうけれど、一人でも多く、相性のいい先生(こだまさんにとっての青山先生みたいな)と会えることを心から祈る。
しかし、ほとんど実話みたいだというのが、ちょっと驚く、というか、周囲に作家だということを秘密にしたままでいいのか?と心配になる。
実話をフィクションに組み替える技をどこかで学んだほうがいいのでは・・・?
まじめな人だからか、いろんな意味でストレートなので、周囲にバレた時に、大切な誰かの心を傷つけてしまうのでは、と心配(非常に余計なお世話なんだけど)。
フィクションだって、絶対おもしろく書ける人だと思うだけに。 -
今年度で終了が決定した講談社エッセイ賞を受賞した作品。つまり同賞の最後の受賞作だ。
『夫のちんぽが入らない』に続く第2弾で、幼少期から現在までの出来事を綴った自伝的エッセイ集になっている。
前作は、題材とタイトルのインパクトによりかかっている面が、なくはなかった。題材が比較的地味な本書によってこそ、著者の素の才能が評価されるだろう。
そして、この人の文章と言葉のセンスは、やはりすごい。本書所収のエッセイと同じ内容を凡庸な書き手が書いたら、面白さは半減以下だろう。
版元の特設サイトで本書の一部が試し読みできるので、冒頭に収められた「父、はじめてのおつかい」だけでも読んでみてほしい。
この面白さ、物悲しさ、読後に残る不思議に心地よい寂寥感……。これこそ「こだま」だ。