- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784779124419
作品紹介・あらすじ
太宰が最も尊敬し、芥川、川端が恐れた作家
豊島与志雄の全貌が明らかになる代表作が
現代仮名遣いによって甦る!
芥川龍之介に
「山間の湖の如く静かなのは、豊島与志雄氏の作品である」
と言われた豊島は、「忘れられた作家」と呼ぶには
あまりにも大きな存在である。
太宰治、坂口安吾、田中英光らは豊島を深く尊敬した。
太宰は「先生も、私と同様に、だらしがない。
そうして、日本で、いちばんの教養人だ」と評し、
川端康成は、「終始孤高の高士であるが、
そのひとりの世界では魔につかれて、
なにをしているかわからぬ怪物である」と言った。
本書では、初期の作品から戦後のものまで収録しているが、
どの時期の作品も、深いメランコリーの影が射している。
そして終始一貫して理知的であった。
怜悧さ故の虚無感に包まれながら完璧への希望をも
持ち続けた隠れた名作をお届けします。
感想・レビュー・書評
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第三次『新思潮』のメンバーであったり、太宰治の葬儀委員長を務めていたり、レ・ミゼラブルの翻訳(仏文学者)をしたり、児童文学を書いたりなど、多方面で活躍した事で知られている豊島与志雄の作品集。
大正三年~昭和二十七年に発表した作品を、だいたい年代順に収録しており最初から順番に読んでいくと、下宿で強迫観念に追い詰められて極度の神経衰弱に陥っている学生を描く「蠱惑」。心中まで思いつめた男女二人のの心の機微を描いた「丘の上」や「常識」。大戦の不穏な香りが漂う中国を舞台に、説話的な手法を使って描いた「碑文」や「秦の憂鬱」。戦後の復興の中生きる人を描く「沼のほとり」「絶縁体」……と、それぞれ作品を書いた時代の風潮を切り取りながらも、その中に一貫して主人公がそれこそ「神経症的」に(サブタイトルにもなっている、まさに「メランコリー」な印象が凄く強い)自己の内面を述懐する、ある意味ちょっと難解な、でもどれも不思議な余韻を残す面白い作品集でした!