大衆社会の処方箋―実学としての社会哲学(叢書 新文明学1)

  • 北樹出版
3.18
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779303920

作品紹介・あらすじ

我々のこの近代文明は、「大衆化」という重篤な病に冒されている。本書は、そんな「大衆化」という病の構造を、実証的な社会哲学を用いて明らかにせんとする。その上で、いかにしてその重篤な病と付き合い続けながら生きていくべきなのかを思索、探索した結果をとりまとめたものである。

感想・レビュー・書評

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  • 傲慢で自己閉塞的な(筆者曰くゾンビのような)大衆が多いという批判と、そうならないための処方箋。多くの哲学者の言葉を引用しつつ、現代人の性質に警鐘を鳴らすとともに対応策を紹介している。
    キーワードとあらすじは以下。

    ・大衆、大衆性(オルテガ)
    端的に言うと「自らに何も求めず、それに不満を感じず、より高みを目指して努力することのない人間」としている。
    悪くなると「自分の意見を絶対的に信奉し(傲慢で自己閉塞的)、私利私欲に絶大な興味を寄せ、その時々で刹那的な行動をとる人間」となる。この心理性をvulgar(俗悪性)と呼び、反対の選ばれた人間の持つ心理性をnoble(高貴性、貴族性)と呼ぶ。大衆は、弁証法的な議論が行えない。また公共性が低いため社会的に悪である。ニーチェは末人と呼ぶらしい。

    ・人間疎外(ヘーゲル)
    友人関係、帰属する組織、地域、国家に対して一体感を持てないこと。これにより自己閉塞感が高まってゆく。したがって人間疎外は大衆化をもたらす契機となる。

    ・運命愛(ニーチェ)
    自らの人生を、人生において発生するイベントを、そのまま愛すること。これが高まると、人間疎外にならなくなってゆく。運命愛を持つ人間は超人とされる。

    ・本来的時間(ハイデガー)
    自らの死に対する「先駆的覚悟性」に裏づけられた時間こそが本来的時間。この本来的時間性を感じることが、運命愛が生まれる契機となる。

    ・大衆化しないために
    「生の循環(解釈学的循環)」を回し続けること。
    心的・社会的状況(思い/先入観)と、環境構造(モノ/解釈)の間で循環を回すこと。前者への働きかけは心理的方略、後者への働きかけは構造的方略とされる。

    生の循環を回すためのポイントは3つ
    「運命焦点化」:死を意識した上での人生について注意を増幅させ、解釈学的循環を促進させる。
    「独立確保」 :自らの精神の解釈学的循環に合わない外部要因に制御・支配されることを避け、自律的な解釈学的循環に戻ることを期する。
    「活物同期」 :自らの精神の自己閉塞空間の外にある活物に触れることで、自らの精神の解釈学的循環を活性化させる。

  • bullshit が飛び交っているのはどこか?
    大衆人の比率が最も高いところはどこか?

  • 15/06/12。

  • オルテガとニーチェの思想や指摘を軸に、日本社会の大衆化を警告する一冊。

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著者プロフィール

京都大学大学院工学研究科教授、1968年生。

京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学教授等を経て現職。

2012年から2018年まで安倍内閣・内閣官房参与としてアベノミクス、国土強靱化等の政策アドヴァイスを担当。

2018年より保守思想誌・『表現者クライテリオン』編集長。


「2024年 『「西部邁」を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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