軽トラの本

著者 :
  • 三栄書房
3.60
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本棚登録 : 43
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779632716

感想・レビュー・書評

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  • いやはや面白い本だった。少し前に読んだ『スーパーカー誕生』の著者による本だが、あちらがその「取っ付き」に反して、読み終えるのにかなりの気力を要したのに対し、こちらは軽い驚きに満ちた納得感が、一気読みの背中を押してくれた。

    お客様にとって軽トラとは「選ぶ」ものではなく「代替えする」もの…ゆえに、モデルチェンジで1つでも「悪い」とされる点があることは許されない。ネット全盛とされる今日だが、農業・漁業コミュニティでの「口コミ」による情報伝播力さらにいえば破壊力は、ネットのそれとは比べものにならぬほど強力だ。

    一方で、衝突時の安全基準に準拠するための設計変更は不可避。市場規模は限られたゼロサムゲームの中、ワンモデルの寿命が乗用車の何倍(平均10年)にもなる軽トラ設計陣へのプレッシャーは、想像を絶するものがある。

    わがままなユーザーは、そのくせ「同じものを買ってる気持ちになるのは嫌なので」デザインには斬新さを求めるのだと。

    首位ダイハツがシェア45%、続くスズキが30%、ホンダのアクティは10%に満たないながら、独自性の高い設計と、乗用車との混流生産によるコストダウンで存在感を確立している。ちなみに、同車のエンジンは横置きミッドシップ、ランボ・ミウラと同じである。

    スバル・サンバー編では、牛を荷台に載せたら、荷台が凹んだクレームから始まる。一頭で600kg、脚一本で150kgが一点に集中すれば凹まないわけがない!

    タイヤ、エンジンなどの各論に触れた後の最終章は、再びスバルサンバーの赤帽専用車。チョイ乗りが大半の他の軽トラと異なり、平均年10万キロを走るこの車は、設計思想からして、他とは全く異なる、他車をベンチマークすらしていなかったという。

    1台100万円しないものが年間20万台、奇しくもランボルギーニ社の年間売上1790億円(2018年、販売台数は3千台ほど)とほぼ同じ規模というのが興味深い。

    「#軽トラの本」(三栄書房、沢村慎太郎著)
    Day212

    https://amzn.to/2DAHNH1

  • 740kgの車両に、空荷から法定350kgを超える800kgオーバーの積載
    身長145cmの女性も考慮、運転姿勢より乗降性
    小回り 半径3.6m
    軽乗用車同様の56km/hオフセット衝突安全
     高張力鋼フレームとドア内のビームで対応
    内法寸法1940x1410x290
    ポリタンク40個、リンゴ箱52個、ミカン箱48個
    防錆鋼板で錆3年保証
    リア板バネ リジットアクスル(ホンダのみドデオンアクスル)
    車両寿命の10年間で走行距離は1万キロに満たない

    SUZUKI キャリイ 2013年FMC 
     MT率75% →ATではなくAGS自動クラッチ5速
     先代は前車軸をボディ前端のセミキャブ
     安全性や 回転半径3.6mに増加が不評で座席下車軸のフルキャブに戻す
     空荷重視の乗り心地

    DAIHATSU ハイゼット 2014年FMC
     フロント外板樹脂化
     180cmの身長も可能、世代交代や外国人に対応
     ステップトルコンATを4速に 実際は3速入れっぱなし
     振動騒音性、フロントダイブ対策L型ロワアーム
     農業女子パック(エアフィルタ、バニティミラー、UV/IRカットガラス


    HONDA アクティ 2009FMC、2015MC
     シェア10%(ダイハツ46%、スズキ30%)
     車体構造は同じ生産ラインのS660やSUZUKIアクティに真似られる
     法定の3倍までの積載を考慮
     横置きミドシップ トランスアクスル 後輪トラクション有利
     荷台下のエンジンの遮熱材
     シート下に小物スペース、N-BOXと同じステアリングホイール

    SUBARU サンバー(旧型)(2012年からダイハツのOEMに)
     耐久性操縦安定性も1tまで見る(牛? 一足百数十kgで荷台が凹む?)
     直列4気筒RR セミトレ独立懸架 高価な樽型コイルスプリング
     荷物で最低地上高が減る

     他社との比較なし
     生産設備の変更の投資ができずRRを維持

    赤帽:年間15~20万km 時速120km
      赤の結晶塗装のヘッドカバー
      スーパーチャージャー 
      高耐久部品 3~4000円原価アップ
      軸受けメタル、ピストンリング、ガスケット、
      プラチナプラグ、ディストリビュータの防水カバー
      フライオフ式サイドブレーキ(仮眠用)
      2口コンセント
      リクライニングシート
    赤帽組合 1975年 
     小口でも助手付き2tトラックの時代
     1万名、1.2万台
     40万kmが買い替え目安

    タイヤ 横浜ゴム
     145SR12で統一 扁平率80%
     耐久性と剛性
     結果的には問題ない性能、荷重依存性低い
     軽積載の前輪2.0から法定いっぱいの後輪3.5kg/cm
     トレッドゴム耐久重視
     整備は販売店に任せる

  • 軽トラへの、スバルサンバーへの賛歌というかなんというかともかく書きたかったんだね、出したかったんだね。こういうのが楽しく読めるように書いてくれる人は素晴らしい。

  • -

  • 一時期軽トラの前輪が前へ行ったり戻ったりしたのはなんでかなと思っていたけど、これを読んでわかった。そういうことだったのか。

    軽トラを製造しているメーカーの開発担当者へのインタビューがメイン。そこから見えてくる軽トラというクルマの立ち位置があぶり出されてきていて面白かった。
    「乗用車=消費財、軽トラ=生産財」という図式も納得感あるし面白い。

    軽トラが欲しくなってきちゃうなぁ…

    以前、ツインリンクもてぎで開催されていた「INDY JAPAN」でチーム用に大量投入された軽トラ(アクティ)が外国人にかなり好評だったという話を思い出した。乗り降りしやすくて小回りのきく軽トラは場内トランスポーターとしては使いやすそう。パドックから少し離れたオーバルコースを使うINDYカーレースならなおさらかも。

  • ウンチク集だよね

     ところどころにはあるんだけど、もう少し写真やイラストほしいな。書いてることはニッポン天晴!って自慢できる気になるんだけど、イメージしにくいな。

     いずれにしても、サンバー亡き後のダイハツ一人勝ち状態は好ましくないな。スズキもホンダも気合入れてほしいな。もっとも、私はジャンボがあるハイゼットしか選択肢はないんだが。

  • メカニックに関する素養がないので、正直なところ、書いてある6〜7割程度しか理解できなかったが、読んでいるうちに、軽トラという厳しい制約の中で費用対効果を突き詰めた結果として生まれた車が好きになってしまう一冊。名著。

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著者プロフィール

1962年東京都台東区生まれ。生家は浅草で和菓子屋を営み、子供のころから職人の仕事を間近に見ながら育つ。早稲田大学第一文学部(美術史学)を卒業後、編集仕事を経て独立し、自動車評論家となる。抜きんでた機械設計の分析力を核に、理論派として鋭い設計評価を行うほか、試乗テスト時には、常にエアゲージや巻尺などをはじめとする7つ道具を持参する実証派でもある。クルマの運動性能とその構成要素に関する分析力では定評があり、自動車専門誌各誌に辛口の評論を展開している。また、内外問わずクルマに関する多数の書物を収集し、特にミドシップについては、長い年月をかけて過去に生産された全ての市販車や発表済みプロトタイプカーのデータを独自のフォーマットに落とし込み、比較分析するという地道な研究家の一面も持つ。近年ではグッドデザイン賞の選考委員を務めるなど、さらに活躍の幅を広げている。著書には『巨匠が愛したフェラーリ女優が恋したモーガン』(三栄書房刊)、『スーパーカー誕生』(弊社刊)、『午前零時の自動車評論』シリーズ(弊社刊)、『自動車小説』(弊社刊)、『自動車問答』(弊社刊)など。

「2020年 『午前零時の自動車評論18』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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