十階: 短歌日記2007

著者 :
  • ふらんす堂
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本棚登録 : 216
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781403144

作品紹介・あらすじ

◆短歌日記2007
記憶とは伝えておきたい願い

感想・レビュー・書評

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  • 有限会社ふらんす堂さんという出版社のホームページに2007年1月1日から12月31日まで連載されていた歌人・東直子さんの短歌日記。
    その日の日記とその日の短歌が本の中で息づくように綴られている。
    日記の短文も、短歌も、詩的で、私的で、読んでいると、何があったんだろうと、ドキドキしてしまう。
    わからなさ、と、わかる、がミックスされていて、ミステリアス。
    自分も日記を書きたくなった。
    続いたためしないけど。

    この短歌日記シリーズは他にも他の歌人のものが何冊もある。
    現在も続いていて、今は大口玲子さんが書かれている。(俳人の俳句日記もある)

  • 東直子さんの歌文集ですね。
    東直子さん(1963年、広島県生まれ)歌人、小説家、脚本家。
    あとがきに『この本は、2007年一月一日から、十二月三十一日まで、ふらんす堂のホームページで、「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたものです。』と、語られています。
    一ページに1首とエピソードが添えられています。
    同時に五つの小説も連載されていた時期だそうで、すごいですね。バイタリティーもですが、一日に一首を確実に詠まれる感性の発露も、驚嘆を感じます。

     海からの風にゆがんだスマイルが
       回転しつつつきぬけてゆく

     自転車で風ひらきつつ結末を
       忘れてしまう果てのない坂

     さわさわと拡がる雲を追いかけて
       黄色い蝶が国境こえる

     水の上に花をうかべて流れ去る
       までのようです一夜のことは

     あのような言葉ではないものたちを
       あたしは抱いて眠るのだった

     陽光を浴びて深く呼吸する
       古書店ひとりふたり出入りす

     わたしだけの場所があることうれしんで  
       浮かぶ本日どこまでも青

     夏風の吹くほうへゆく人々の
       眼(まなこ)おさめし写真を閉じぬ

     貝殻をふみつけあゆむ子どもらの
       あなうらの傷あらう白波

     そののちは雲になりたい夏空に
       浮かびすっかり消えてしまうよ

     青いインクを筆にひたして綴りたる
       文字しなやかに未来を語る

     かん高い声とを交わし合う
       身体いっぱいうれしい子供

     丘の上のとんぼ自転車ひめりんご
       まるごと呑みて秋陽ここにも

     窓に咲く花も土に咲く花も
       このときだけの空をみていた

     生まれたての草の芽しろき毛をもちて 
       初冬の部屋のかすかなぬくみ

     年賀状とポインセチアの赤並び
       呼び合うことば集めてやまぬ

     冬の薔薇ながく保ちて誰もみな
       誰かが産んだ子供であった

     あたらしい手帖に記す約束の
       時間と場所とあなたのことば

     瑞々しい短歌に詩情を感じます。豊かな感性に驚きと羨望を禁じ得ません。
       

  • 2007年の1/1〜12/31までの毎日、短文が添えられて短歌が綴られてる

    1年の季節感を一気に通り抜けたようで、また年末の寒さに戻って寂しくなった。
    所々で自分は、あの人はこのとき何してたんだろうとか想像して、なんにも覚えていなくて、どうでもいいことでも何らかの形にしていくことは素敵だと思った。

    以下、個人的にすきだったやつ
    .

    6/3
    昨日、映像の中で白い地平線を見た。
    今、ここてやいのやいの言っていることは、いずれ無意味になるのだなと、ほほえましい気持ちになる。

    金属のこすれるような音を出し少女は三メートル走りぬく

  • 手に馴染む小さめのサイズと不思議な装丁に惹かれて。
    歌人・東直子さんが毎日Webに掲載した短い日記と短歌一首を、365日分集めたもの。

    日常生活の中で紡がれた言葉だからなのか、全体的にやんわりとした印象を持ちました。
    ページをめくる中で、どこか引っかかる歌やハッとする歌に出会い、しかしさらにページを繰るうちに、その感覚がだんだん遠のいてゆく。
    その移ろいゆく様が日常そのものであるように思えて、愛おしいと思いました。

    私生活が忙しい時期に読んでしまったため、一首一首を十分に味わえなかったように感じています。
    本当はリラックスしようと思って読み始めたのですが、結局せかせかと読み終えてしまいました…残念。
    歌集は心にゆとりのあるときに読むべし、ですね。

  • 東直子(1963年~)氏は、広島市生まれ、神戸女学院大学家政学部卒の歌人、小説家。1990年より短歌等の投稿を始め、1996年に「草かんむりの訪問者」で歌壇賞(公募による短歌の新人賞)を受賞。これまで、NHK短歌、歌壇賞、角川短歌賞、東京新聞歌壇、山陽歌壇(山陽新聞)などの選者・選考委員を務める。
    本書は、『春原さんのリコーダー 』、『青卵』に続く第3歌集で、2010年に出版された。
    本書は、2007年の1月1日から12月31日まで、ふらんす堂のホームページで「短歌日記」として毎日連載されたものまとめたものである。著者は当時八王子の丘の上の団地の10階に暮らしており、1ページに、その日のエピソードの短文と短歌が一首書かれた本書は、題名通りの短歌による日記となっている。
    私は最近現代短歌に興味を持ち、現代短歌の代表的な歌人である著者の本書を手に取った。これまでは30余年前に俵万智(1962年~)の『サラダ記念日』を読んだことがあるだけで、今般、穂村弘(1962年~/東氏との共著や対談も多い)の『ラインマーカーズ』、木下龍也(1988年~)の『つむじ風、ここにあります』などを併せて読んでみたが、それぞれの作風にはやはり違いがあり、それぞれの良さが感じられた。全くの素人としての、著者の作風に対する感想は、とんがり過ぎず、なめらか過ぎず、また、同世代(とはいえ、本書の歌が詠まれたのは十年以上前だが)としてとても共感を覚えるものだった。
    いくつか印象に残った歌を挙げてみると。
    「十年後それぞれに老いそれぞれに生きているのか祝祭つづく」
    「誰がなにを言ったとしても春風のざっくばらんな私を生きる」
    「窓に咲く花も土に咲く花もこのときだけの空をみていた」
    「今つよくおもったことを告げたくて花道走るように枯葉は」
    日記形式で四季を巡るコンセプトや装丁も素敵な歌集である。
    (2021年5月了)

  • 【推薦者】O.K@襟足バンビ教室 師範代

  • 好きな歌
    1/19「ぜんぶ見えているとしたって私の紐の中には立ち入らないで」
    2/13「なにをしているかわからぬ者ですが不思議に今日も生きております」
    2/17「正座別血液型別運不運明るく決めつけられて不愉快」
    5/1「やあ君は五月の鳥だ幾らでも迷ってもいい五月の鳥だ」
    5/13「物語は読み返せてよいよねえ あたしの時間はもどせないのに」
    6/16「十年後それぞれに追いそれぞれに生きているのか祝祭つづく」
    8/3「生き物である苦しさに真夜中を抜け出し歩む道なまぬるし」
    9/7「もう雨は止みそうにない隣り合った人とこのまま暮らすのでしょう」
    10/19「現実と真実のごとブランコは二つ並んで一つが揺れる」

  • とても美しい本
    毎日がこのように印象深ければ人生はどれだけ豊かだろう

  • 日々の短歌と日記。

  • 2012.2.11読了。

    心にとまった短歌を書きとどめていったら、偏りすぎてて笑った。読む年齢、場所、季節によって響くものは変わるだろうとおもう。

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著者プロフィール

歌人、作家。第7回歌壇賞、第31回坪田譲治文学賞(『いとの森の家』)を受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説に『とりつくしま』『ひとっこひとり』、エッセイ集に『一緒に生きる』『レモン石鹼泡立てる』、歌書に『短歌の時間』『現代短歌版百人一首』、絵本に『わたしのマントはぼうしつき』(絵・町田尚子)などがある。「東京新聞」などの選歌欄担当。近刊にくどうれいんとの共著『水歌通信』がある。鳥好き。

「2023年 『朝、空が見えます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

東直子の作品

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