- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781650128
感想・レビュー・書評
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「働き方の話をするときに極端な事例を出すな」というのだけど「普通」ほど語りにくいものはない。凝集性がなく、最大公約数がとりにくいのが普通の働き方だと思うからだ。なので、極端な事例を批判できることはあっても、普通を深く論じることは困難なのではないかと思う。そうなるとこれからも「極端」がせり出してくるんだろうなーっていうのは容易に想像できる
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著者の主張には賛成できるが、これを一種の論文として読むには、いささか論拠が浅い印象を受ける。
「メディアを疑え」、「データやファクトに気を付けろ」という注意はまさにその通りなのだが、著者が主張は巷に溢れる言説のカウンターによって論証されている部分が多く、肝心の著者の主張の根拠がそもそもデータに裏付けされていなかったりする箇所がいくつもある。
また、そもそも論として、「普通の働き方」の定義が非常にあいまいである。
「ノマド」や「雑誌に載るようなビジネスマン」は特殊で、それ以外は「普通」だと言っているようにも感じれば、「中小企業に勤める人」が普通であるという印象も受ける。
「普通の働き方」という公式な定義は存在しないが、せめて著者の考える「普通」の定義付けはするべきである。
(そんなことをすればその定義に対する議論が出てきて、それをきれいに片付けることなどできないからあえて避けているようにも思えるし、おそらくその定義の中に著者は含まれない)
しかし、全体を通して著者の主張は間違ってはいないと思う。
各々が考える「普通」の中で、一生懸命働けばいい。
それが幸せかどうかはここでの議論の対象外である。
少なくとも、「メディアに煽られて無理な事に挑んで絶望するな、普通に頑張れ」というメッセージは、どんなビジネス書よりも日々の仕事の支えになるのではないだろうか。
(ただし、「プア充」のように「ほどほどで良い」という消極的な意味ではなく、あくまで努力することは推奨している) -
ブラック企業だ、グローバルエリートだ、ノマドだ、的な働き方ブームの中に一石を投じる本。
最終的にはものすごく噛み砕くとマジメにコツコツやろう、という話やったと読んだが、通底するテーマとしては、どんな生き方をしたいんですか?って話があるのかと思う。あなたがなりたいのはエリートなの?って話。
そこそこ働いて、そこそこ幸せに暮らしていくには、それこそ普通に今与えられた仕事をコツコツやる、今自分の生きてる暮らしを楽しくしていくことじゃないの?って投げかけ。
そこそこ働いて、そこそこ幸せってのがこの先どうなるか、維持できるのかって問題はあると思うけど、極論に走る前にちょいちょい!って牽制するような内容でした。 -
ノンエリートに焦点を当てた「働き方に関する言説への接し方」についての本。「はじめに」に書かれている、「働けないのか、働かないのか、働きたくないのかは整理して論じるべきだろう」という言葉は、この本の内容を象徴していると思う。
章ごとにかなり趣が違って、1章はブログ風エッセイ、2章は労働に関するデータ分析、3章は「働く」を切口にしたメディア・リテラシー、4章は酔っ払いのぶっちゃけ対談という構成。
最後にある海老原嗣生さんの「解説」がとても良く、本書の全体像をまとめてらっしゃるので、ミステリー小説ではご法度だけれど「解説」から読むのが良いかもしれない。
「普通」というのは難しい概念だけれど、相対的なものなので、結局のところ、属しているコミュニティによると思う。
例えば、義務教育(特に公立)のときはわりと多様性があるコミュニティなのだけれど、進学するにつれて(少なくとも偏差値などの面で)均質的になり、就職した後はもう自分の仕事の周りの狭い世界が「普通」になってしまう。その一方で、「これが本当に普通なのか」という疑問があって、そこで本書で指摘されているようにメディアが押し付ける「すごい人」や自己啓発書に目が眩んでしまう、といったことはあるかもしれない。
ただ、そこで目が眩まずにちゃんと見えるのであれば、「すごい人」と接することは有益だと思う(ちゃんと見れば、その辺にたくさんいる)。「あぁ、敵わないな」という相手との距離感を、いろんな人に対して多方向に持つことは、自分の立ち位置をある程度は決定づけるし、それが「周りに振り回されない『自分の普通(=無理の無い立ち位置)』」につながるのではないか、という気がする。
たとえ「自分探し」をやめても、それが「普通探し」になるのでは、たぶんあまり状況は変わらないだろう。
「ホンシェルジュ」に記事を寄稿しました。
http://honcierge.jp/users/646/shelf_stories/25 -
普通に働けの普通ってなんだ⁈