不動産業界大研究
■近年注目の私募REIT
・バブル崩壊後から不動産業界に登場
・上場して広く一般の投資家から資金を集めているのがJ-REIT
・上場せず資金を投資家との個別交渉で集めているものを私募ファンドと呼ぶ
・バブル期は売買資金を無尽蔵に銀行が貸してくれたが、今はファンドの手法が用いられるようになった
・資金を借りるリスク・物件を抱えるリスクを投資家に追ってもらう代わりに、運用に成功したらその成果は投資家と分け合う
・投資対象物件は、ファンド運営会社のものではなく、ファンドのモノ、つまり投資した出資者全員の共有財産。
■プロの知恵を総動員
・投資家から集めた資金でオフィスビル・賃貸住宅などを定期的に買い、空室率を下げたり賃料を引き上げたりして運用成果を高め、成果を投資家に還元する。
・ほとんどのファンドが償還期限を5~10年に設定。
・運用期間中は賃料収入から必要経費を差し引き、残りは投資家に配当。
・償還期限が来たら、投資対象物件を売却、現金化して投資家に返すか、改めて運用期間を設定しなおして運用を続ける、もしくは投資家を入れ替える。
■リーマンショックの影響
・景気後退が鮮明となり空室率が上昇、投資家から集めた資金を遊ばせたおけず、やむなく高値で取得した物件が多額の含み損を抱える。
・一方で不動産市況も悪化し各ファンドは物件を換金できなくなった。
・多くのファンドが物件を「塩漬け」し、私募ファンドへの業界全体の投資額は2012年まで横ばいが続いた。
・アベノミクスで物件処分が一気に進展し、2016年頃ようやく塩漬け物件の処分が一巡した。
運用機関に定めがあるのが不動産ファンドの弱点
→運用期間を定めない私募REITが登場
★2020年にはJ-REITと私募REIT合わせて21兆1000億円の規模に拡大
★不動産マーケットは、新型コロナでホテル・商業施設は大きくダメージを受けたが、物流施設は絶好調と物件ごとにばらつきがあり、今後の動向は不明
■上場しているのは意思を持たない「箱」会社
・投資法人とは、運用対象の不動産と現預金しか保有することを許されない会社
・上場している市場はJ-REITという市場で62社
・J-REITは償還期限はない
・私募ファンドには償還期限があり、期限到来のタイミングが市況の悪い時期に重なると、運用成績が投資家にとって不本意なものになる。
・私募REITは、私募でなおかつ償還期限がないもの
■スポンサーは物件と資金を供給
・私募ファンドーAMが収益アップのために運用方針(J-REITは投資信託委託会社)
・物件の供給源であるしスポンサーは必要
〇日本ビルファンド(三井不動産・住友生命)
〇ジャパンリアルエステイト(三菱地所・東京海上・第一生命)
■不動産会社の収益構造が激変
・J-REITによって不動産会社の収益構造が激変。
・突如巨大な顧客の市場が出現
・投資家が出してくれたお金で、投資法人は物件を買えるため、1部屋売るより1棟丸ごと売れる。
・私募ファンドも赤の他人からの資金で物件を買うので購買力は高いが、J-REITは証券市場から集められるためその日ではない。
・また、AMでも運用報酬、仲介手数料・PMフィーなどすべて設立母体の不動産会社・子会社で引き受けられる。
・つまり、投資家が出してくれたお金を元に、設立母体の不動産会社が合法的に設ける事が出来るシステムである。
・現在上場しているのは62社
■リーマン後も生き残ったデベロッパー系
・倒産第一号ニューシティ・レジデンスはモリモト系のビ・ライフともども大和ハウス工業がスポンサーになった
・2019年さくら総合リートの株式を、3.6%保有していたスターアジア投資法人の運用会社が合併
■新型コロナの影響
・J-REITの全銘柄の時価総額は、コロナ前の2020年1月17兆円だったが、9月末には13兆6,600億円と約2割下落
・物流施設中心の銘柄が上げ、ホテル・商業・オフィスが下げた。
・62銘柄中、圧倒的多数を占める運用タイプはオフィス型、もしくは総合型。
→今後テレワークの普及でオフィス減少によりJ-REIT市場全体の市況も影響を受ける可能性がある。