- Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
- / ISBN・EAN: 9784783709565
感想・レビュー・書評
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正しすぎず難しすぎず、かなしみを含んだ愛にあふれて、しんどい時には必ずページをめくる、私のバイブル。
もちろん、辻征夫詩集、続・辻征夫詩集も所持☆ -
収められている詩、散文のうち一割はとても気に入り、3割はわりと気に入り、残りはあまり好きでありません。
とても気に入ったものは、抒情的・生活的な雰囲気、臭いを漂わせるもの。たとえば、『俳諧辻詩集』からの作品など素晴らしい。たとえば作品<床屋>では、
床屋出てさてこれからの師走かな
という既存の俳句にまつわった詩を書いている。それが下町の一年の〆を感じさせて、とても良い。
あまり好きでないものがわりと多くある理由は、すこしく修辞が勝ちすぎている傾向があるからです。すなわち、詩のもつ趣に比べ、修辞が過剰で、疲れる。構成よりも修辞に重きを置いたせいで修辞のパッチワークのようなものになってしまっているものがあり、それは好きでありませんでした。
しかしひらがなだけの作品<宿題>のような素晴らしい修辞と構成の妙が見られるものもあるので、腕は確かだと思います。ブレなく創出するタイプの人でないだけでしょう。作品<宿題>は、老年の男性が、遠くない未来に失われる自分の過去を見つめて、執着しようとしたり、遠ざけようとしたり、それでもなお過去を慈しむ詩趣が感じられ、とても良い。
作品論・詩人論において引かれている、辻の作品<あしかの檻>においてあらわれる あしか は金子光晴の作品<おっとせい>においてあらわれる おっとせい との比較で倍楽しまれるでしょう。 -
辻征夫という詩人には、すごくやわらかな視線と、透徹とした視線が混在しているように感じられます。「かぜのひきかた」という詩がとても好きです。