- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784783709602
感想・レビュー・書評
-
詩歌
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いつもトイレで詩集や和歌や俳句を読んでいます。小熊秀雄、正岡子規、斎藤茂吉……いろんな詩を用を足しながら学びました。ある日、母がこう言いました。「いまトイレに置いてあるあの人いいね~」。トイレから脱臭しきれなかった匂いが漂ってくる中、母が晴れやかな顔で言いました。「わかりやすいわ~。私でもわかるわ~。いままで、くら~い詩ばっかりやったから、とーってもいいわ」と感心しきりでした。
杉山平一が亡くなったとき、戦後関西詩壇回想で足立巻一のエピソードを書いていたのを読んだぐらいだったが、ああこういう詩風なんだと頷いた。
ウィットとユーモアをきかせた生活人の視点にたった詩。長谷川龍生と正反対の世界。まあそう言ってしまえば簡単だろう。だけれども、詩をトイレに置き続けて、母が絶賛するとはどういうことか。
■
「不在」
お隣は 遠くへ
引越して行ったのに
シーンとした空家にむかって
幼ない女の子が呼びかけている
きいくちゃーん
あーそびましょおおー
ゆるやかに うたうように
信ずるものの澄みきった声で
■
父や母の世代には、まだ貧困地区のようなものがあって、あそこへ行ってはいけませんと、親の親は言ったりしていた。でもたぶん、貧困の話ではない。ある程度、戦後豊かになった。でも、情報というのは非対称で、すれ違いがあった。人はメールで待ち合わせをするのではなく、手紙や、直接家を訪ねていた。みんなよく歩いていた。そうして歩いてきた少女が、空家にむかって、遊ぼうという。このあと、この少女は「あ、きくちゃん、引っ越したんやった」と呟くのだろうか。何かをあきらめるのだろうか。こういった、いろんな想像を巡らせることのできることを、嫌だと思う人、つまらないと思う人もいれば、実にそれが切なくて楽しいと言える人もいる。
無人島に仲間と漂着したとき、長谷川龍生や小野十三郎よりは、杉山平一を持って行きたい。
僕は美しい文を書きたい。
と、川上明日夫は言っていた。
いい文章を書け。
いい文章とは、こういうところを丁寧に書くことだ。自分を飾るな。その鎧、脱げよ!でも、常套句には溺れるなよ。
弱々しいけど動かないものが強い。-
この本と西瓜さんに関わるエピソードは、
微笑ましいです。
詩は読まないんですが此のレビューには
興味をもちました。
本や映画(他の作品でも...この本と西瓜さんに関わるエピソードは、
微笑ましいです。
詩は読まないんですが此のレビューには
興味をもちました。
本や映画(他の作品でも)をみて、
何かを感じ取れる感性って素敵
ですね。2012/12/19 -
2012/12/20
-