オウバアキル

著者 :
  • 思潮社
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本棚登録 : 100
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783719571

作品紹介・あらすじ

現実はこんなに過酷で残酷なのに、ぼくたちはなんでこんなに幸福なのだろう-。心の傷口から零れ落ちる痛みが、コトバの最涯で結晶化する。現代詩手帖賞詩人、鮮烈なる処女詩集。第42回現代詩手帖賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 暗いけど、心に刺さる

  • 幻覚が見えてきそうな切迫感。あとほんのすこしのやさしさか。

    >急がなければあなたに、
    >間に合わないかもしれない

    「回想電車」がすきでした。なんだかでもばらばらとした印象のなかにほどけていってしまい、「これだ」と思えるような詩はないような気がします。全体として読んだときに、最後にくる「わたしたちは幸福なのかもしれない」という言葉の乾いた感触はかなり効いてくるのですが。自傷行為やいじめの光景がくらく、本全体をのたうっていて、なにか事件を目撃したときのようなじっとりとした手応え。それをあまり感動とは呼びたくないのですが。

  • 何故線を引くのか。
    何故壁をつくるのか。
    この詩人が対峙する関係にはいつも区切りが入る。
    大きな壁を隔てた私とあなた。

    「にんげんがすきなのだよ」と詩人は言う。
    「にんげんがすきだから」とも詩人は言う。
    「失望したくないし音をたててドアを閉める」と語られた、
    「にんげん」への線引き。

    失望が続けば絶望になる。
    絶望が続けば何もかもがどうでもよくなる。
    壁なんか壊せばいいと思っていたけど、なんか分かる気がする。
    僕もまだ当分、人間のこと好きでいたい。

  • この人は、詩人だと思う。書けば詩になる人。表現方法としての詩、なになにとしての詩ということでなく、なにも限定されない原初の詩。
    言葉が妥協していない。生きにくいだろうなと思う。でも、ほんとは、だれにとっても生きにくいはずなのだ。誤魔化さなければ。誤魔化しのないところで成り立っている詩。

  • 中原中也賞受賞作品ということでたまたま手に取ってみたのだが、独特な改行、ちりちりと痛い単語の羅列に、自然と魅了されていた。解説にあった「魅惑に満ちた過酷な世界」まさにその通りの…。
    危うく、激しく、ときに息苦しく、力強く…読む側も痛いのに、それでも言葉を追わずにはいられない。そんな不思議な魅力を持った詩人・三角みづ紀の作品をこれからももっと読みたいと思う。

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著者プロフィール

北海道札幌市在住。一九八一年鹿児島生まれ。大学在学中に現代詩手帖賞、第一詩集で中原中也賞を受賞。第二詩集で南日本文学賞を受賞。執筆の他、朗読活動も精力的に行い、多くの国際詩祭に招聘される。一カ月の間、欧州を旅して執筆した第五詩集『隣人のいない部屋』で萩原朔太郎賞を受賞。代表詩篇は翻訳されアメリカ、メキシコ、フランスをはじめ他国でも紹介されている。二〇二〇年に第八詩集『どこにでもあるケーキ』をナナロク社より刊行。

「2022年 『空気の日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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