現代台湾鬼譚: 海を渡った「学校の怪談」

  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787220509

作品紹介・あらすじ

日本語の「幽霊」を意味する中国語「鬼」は、現代の台湾でどのように恐怖の対象になっているのか。海を渡って日本から台湾に広まって台湾流にアレンジされたこっくりさんや「学校の怪談」を、実例=怖い話とともに紹介して、台湾のオカルト事情を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 台湾の大学で教える日本人が、教え子の卒論(ある小学校で怪談をテーマに調査した)をベースに書いた本。かならずしも怪談は専門分野ではないということだが興味深く読んだ。

    「学校の怪談」があるのは日台共通だし日本から伝播した話もあるようだが、台湾では鬼(幽霊)に悩まされて退学してしまう学生がいたり、まじない屋みたいなのが繁盛していたり、日本よりかはだいぶ前近代的というか、幽霊が近しい存在であるようだ。

    そんな台湾の大学でもっぱら女子学生に囲まれながら、陰陽眼のあるという(霊感があるみたいな)学生から個別の聞き取りをしたり、鬼について絵を描いてもらったりするアンケートをしたりしている。半分はクールに研究対象として日本のアニメの影響を見たりしているが、半分は霊の存在を信じる台湾社会にどっぷり浸かっている感じであり、その臨場感が面白い。

    他にも、キョンシーやこっくりさんや日本兵の霊やオカルトなど盛りだくさん。

  • 台湾の大学の日本語学科の先生と教え子が書いた本。
    あとがきの、台湾の学生が東日本大震災の死者を台湾のやり方で自主的に追悼、せっせと死者の名前を日本の新聞から紙に書き写すエピソードが心に残った。

  • ●:引用 他:感想

    ●「忌まわしい前代」の象徴として旧日本軍が持ち出されるのは、あの戦争に関係した国や地域ならばどこでも想定されうるし、実際、報告例も少なくない。(略)しかひながら、戦後の歩みはそれぞれの国・地域で異なっているため、現代の噂や世間話に登場する旧日本軍の位置づけは、多種多様である。たとえば台湾の場合、日本統治時代終了後に始まった2・28事件(1947年)と、それに続く白色テロによって、二つ目の「忌まわしい前代」が作られた。すなわち国民党時代である。それは台湾が民主化が始まる1980年代半ばまで続く。その結果、旧日本軍の噂は、国民党の圧政の事実を取り込むかたちで伝承されることになった。旧日本軍の噂は日本統治時代以前の伝統的な台湾文化をめぐる話にも取り込まれた。

    →妖怪(幽霊も?)というのは、その土地や人(価値基準を同じくする者たちが営む共同体)に根付いた共通の記憶(特に自然災害などの負の記憶)が創造したもの。台湾の場合、日本植民地時代、国民党独裁政権時代が、その形成に大きくかかわっているように思えた。

    幽霊(鬼)は学校という抑圧された環境に現れる。前近代の農村や軍隊にかわって?→宮田昇?

    幽霊(鬼)は普通教室には現れない。特別教室、地下室、トイレ。(日本の「学校の怪談」が輸入される前からあった?怪異が、”トイレの花子さん”という名前とともに広がっていった?。)台湾ではプール、体育館には現れない。=プール、体育館がある学校が少ない
    ため。バスケットボールコート(のそばの鬼館(お化けやしき))

    台湾では国民党独裁政権下の弾圧が、日本植民地時代の記憶に重ねられて伝承される。

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著者プロフィール

1972年、北海道生まれ。國學院大學文学部教授。専攻は伝承文学。著書に『江戸の俳諧説話』(翰林書房)、『ツチノコの民俗学――妖怪から未確認動物へ』『江戸幻獣博物誌――妖怪と未確認動物のはざまで』『ネットロア――ウェブ時代の「ハナシ」の伝承』『何かが後をついてくる――妖怪と身体感覚』(いずれも青弓社)、『怪談おくのほそ道――現代語訳『芭蕉翁行脚怪談袋』』(国書刊行会)、『ヌシ――神か妖怪か』(笠間書院)、共著に『現代台湾鬼譚――海を渡った「学校の怪談」』(青弓社)、『恋する赤い糸――日本と台湾の縁結び信仰』(三弥井書店)、編著に『福島県田村郡都路村説話集』(私家版)、共訳に尉天驄『棗と石榴』(国書刊行会)など。

「2023年 『怪談の仕掛け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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