- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784787233981
作品紹介・あらすじ
「くねくね」「八尺様」「南極のニンゲン」――都市伝説的な奇妙な「ハナシ」は、ネット時代にどう伝承されるのか。「ハナシ」がインターネット上で増殖していく仕組みと内容の変容を巨大掲示板やSNS、動画共有サイトを事例に解き明かす異色のネット研究書。
感想・レビュー・書評
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ネットを発祥とした怪談がどのように流布したかを考察する本。くねくねや八尺様などオカルト板で有名な箇所の考察は特に面白かった。後半は既存メディアからネットへと盛り上がりを見せたあまちゃんについても取り上げている。オカルト、メディア、民俗学が好きな方におすすめしたい本です。
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「宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019」に出ていたので。
民間説話の研究では、時代に無関係な「昔話」、歴史時代が舞台の「伝説」、同時代が舞台の「世間話」に分類する。
(これに対して、始原の過去が舞台で、神々が舞台である「神話」がある)
そして、ネットで生まれた説話だけでなく、
ネットの世界で流布して広がっていく説話を「電承説話」つまり「ネットロア」と著者は呼んでいる。
インターネットの登場は、説話の世界にも革新的な変化をもたらした。
地縁・血縁を母体としない説話(従来型の都市伝説)はすでに存在していたが、
「超都市的空間」で流通する伝承説話では、
巨大化した「関心や興味を共有する人間関係」によって、
異なるスピード、時間軸、流れで説話が発生し、拡大化していく。
(勝手に「拡大化」という表現を使ったが、
ネットの性質上それは物理的な広がりではなく、
他の媒体(書籍や口コミ、テレビ)への伝播の意)
いろいろ面白かった。
そもそも、元のお話「くねくね」「ビニール紐」「八尺様」を知らないので、
その話自体が興味深かったし、
その話題に右往左往するネットの人々、
しかも「板」によって、不可思議な現象を理解しようとする傾向と、
理解による解決を遠ざけようとする傾向があるとの解説も面白かった。
残念ながらアングラな方の鳥居みゆきを知らないので、
その章は共感度が低かったが、
理解したら発狂するという「くねくね」の電承を支えているのは、
解釈しようという欲求だとか、
電承の場を支えているのは送り手ではなく、圧倒的な多数の受け手たちであるとか、
興味深い指摘が散見された。
「ビニール紐」の話では、
探偵ナイトスクープで取り上げられた話が、
実際の番組内容より、ネットで書き込まれた内容の方が怖かったというオチが
可笑しかった。
キーワードでテレビ番組が自動的にじゃんじゃん録画されて、
ネットにすぐアップできるような時代でなかった頃は、
テレビって一度見逃すと二度と見れない貴重な媒体だったのが嘘のようだ。
あとはところどころで、
ネットの特性を思われる事項を、既存の文化に置き換えるところが笑えた。
趣味や興味を共有する人間関係を、江戸の俳人同士の交流を例示に出したり、
画面のスクロールさせたり画像をうめこみ興味を引く手法を、源氏物語絵巻と大差ないと断じたり、
ニコニコ動画に登場した「八尺様」を題材とした連続静止画の作品で、
視聴者たちのコメントが殺到した画面を、
歌舞伎における玄人客の掛け声を連想するとコメントしたり。
という訳で最も怖かったのは、
混んだ朝の電車の中で、
くすくす笑いながら次々とこの本に付箋を貼っていく自分を見かけた人だろう。 -
ポップな表紙に反して、わかりやすくも専門的な民俗学の本。
なぜ都市伝説とインターネットがこうも相性がいいのか?そもそも都市伝説とは何なのか?が少しわかったような気がする。 -
ネットロア=電承。2ちゃんねる(本書で取り上げられていないが、おそらくパソコン通信から)を中心とした事例が、これまでの伝承とどのように異なるか。良い悪い、ではなく、民俗学的に分析・解体。特に「正解」も出さない。
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・「ネットロア」…インターネット上で流通している説話。
・「電承」…インターネット上の伝承
・口承、書承、電承
・「電承体」
・「情報縁」
・ロム組、透明な送り手
・テレビ経由とテレビ還流
・「地下」の「地上」化
・「ネットが口承・書承の場を維持させ、語り手/聞き手、書き手/読み手の身体にネットが染み込んでいく。口承と書承と電承のメディアが混交し、三位一体となった状態――これが二十一世紀の説話伝承の実態だろう」(p158)。
・「ネット時代の本当の「異郷」「秘境」とは、クリックしてもたどり着けない場所にあるのではないだろうか」(p158)。