『パリの秘密』の社会史―ウージェーヌ・シューと新聞小説の時代

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  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788508866

作品紹介・あらすじ

フーコーが愛読し、バルザックを嫉妬させたシュー。連載時絶賛を博し、新聞小説の嚆矢となった『パリの秘密』。パリの街路や地下を微細に描写し、社会の悪を告発した小説。名のみ高いこの本が、メディア論、社会史的な観点から読み直すとき、あらたな魅力をもってよみがえる。図版多数。

感想・レビュー・書評

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  • 同著作者の『歴史と表象』で語られていた内容を、詳細な一例として紹介しているような印象だったかな。
    パリの秘密のあらすじにだいぶページを割いていて、挿絵の掲載も多いので、そこのところ見応えあり。
    『歴史と表象』の中で、当時の小説が、当時の知識教育的役割を果たしている…という話があって、 『「パリの秘密」の社会史』での「パリの秘密」は、まさしくそのラインで語られていた。
    新聞読者層に、下層階級の悲惨な実態を知らしめることや、社会福祉についての理想論を語ることと…。
    『ロマン主義とは政治化した文学運動で、革命とナポレオン時代を経て誕生した文学は政治的社会的になることが避けられなかった』(以上要約抜粋)だ。で、フランス新聞小説黎明期が、まさしくロマン主義の時代というか。そういう辺りか。

    「パリの秘密」が、当時は相当持てはやされたのにもかかわらず、現代においては(物語として)軽視されがちだってのは、でもちょっとはわかるんだ…そもそもロドルフ殿下が完璧超人すぎて面白味が無いんだよ。そりゃ当時は、いかにも(現実にはあり得ない)正義のヒーロー的側面を供えてたんだろうけど。

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著者プロフィール

1956年生まれ。東京大学大学院博士課程中退、パリ・ソルボンヌ大学文学博士。現在、慶應義塾大学教授。専門は近代フランスの文学と文化史。著書に『ゾラと近代フランス』『革命と反動の図像学』(以上、白水社)、『写真家ナダール』『愛の情景』『身体の文化史』(以上、中央公論新社)、『犯罪者の自伝を読む』(平凡社新書)、『パリとセーヌ川』(中公新書)、『近代フランスの誘惑』(慶應義塾大学出版会)、『「感情教育」歴史・パリ・恋愛』(みすず書房)、『歴史と表象』(新曜社)など、編著に『世界文学へのいざない』(新曜社)、訳書にユルスナール『北の古文書』(白水社)、アラン・コルバン監修『身体の歴史 II』(監訳、藤原書店)、フローベール『紋切型辞典』(岩波文庫)、ルジュンヌ『フランスの自伝』(法政大学出版局)など多数。

「2021年 『歴史をどう語るか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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