オーバーフローする脳―ワーキングメモリの限界への挑戦

  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788512610

作品紹介・あらすじ

◆「脳を鍛える」ことは可能なのか?◆

いまや脳は、情報の洪水に見舞われています。テレビを見ながら新聞を読み、連れ合いのお喋りにも耳を傾けていると携帯が鳴り出す──いまや同時にいくつもの事をこなすのは慣れっことはいえ、時々失敗するのも無理はありません。デジタル社会が生み出す情報の奔流に立ち向かっているのは、4万年ほど前の人類の祖先、生活環境もずっと単純だったであろうクロマニヨン人の脳とほぼ同じ容積の脳なのです。情報ストレスで、ダメージを受けないのでしょうか。本書はワーキングメモリという脳の機能に焦点を当てて、脳の限界と可塑性、脳機能を訓練する可能性について、最新の研究成果を一般の読者にわかりやすく解説した、興味深い科学読み物です。著者は、スウェーデンのカロリンスカ研究所教授、訳者は京都大学名誉教授。共にワーキングメモリ研究で著名な研究者です。

感想・レビュー・書評

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  • フローの概念
    作業に完全に集中し、浸り込んでしまう感覚
    困難度とその人がもつそれをこなす技能がマッチした時フロー状態となる
    ワーキングメモリの負荷がワーキングメモリ能力と正しくマッチし、マジカルナンバー7の限界にあれば、訓練は最大の効果を生む。

  • 個々のタスク(メール、仕事、思考)のレベルが上がっており、同時実行が難しく、結果として注意力散漫になりやすくなっているのではないか、と。なるほど。

  • 脳には、ワーキングメモリという領域がある。ワーキングメモリは、視空間スケッチバッド、音韻ループ、中央実行系さらにはエピソードバッファから構成されるらしい。

    ワーキングメモリに負荷を与え鍛えれば、脳はまだまだ発達する。年齢を問わず脳の可塑性を信じようと思う。

    読書もワーキングメモリを使う有効な手段であるとのこと。乱読により新たな情報をインプットしつづけることにより、脳を活性化できるのではないだろうか。

  • まったく、分からん。面白くない。

  • 読書日:2012年2月14日-17日
    Original title:Do you think you're clever?
    最近物覚えが悪くなってきたから何か活かせないかと思いながら読みました。
    ・人は2つ同時の行動はどちらかの行為の反応が遅くなる
    ・記憶を留めさす、集中力を持続される等の行為は脳内の特定部位に何度も学習させる事

    等々、神経学や脳科学の専門的な内容を著者自身が調べ纏めあげたものです。
    注意力散漫は脳内の部位によってcontrol出来るか出来ないか等
    興味を惹く箇所が多々見受けられました。
    きっと専門の人が読むと、高評価に値する内容だと感じました。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:491.371//K16

  • 個人的に早く結果を知りたかったので、だらだらとした解説にはうんざりする。しかしながら、専門を平易に解説するために、その研究の流れを示したものだろう。他の人の評価は、もっと高いにちがいない。

  • いわゆる多読というものを初めてから、それほど年月を重ねていないのだが、多読以前と以後で全く変わらないものがある。それは全体に占める、未読本の割合だ。年間50冊程度しか本を買っていなかった時も、年間500冊近く買うようになった今も、およそ30%が本の山に積んだまま、もしくはパラパラとめくっただけなのである。

    未読が発生するメカニズムについても、自分なりに、かなり解明が出来ている。仮に10冊本を買ったとして、7冊程度読み終わったところで次の10冊を購入。新しいものに目移りして最後の3冊は未読のまま。追加の10冊においても同様に7冊程度読み終わったら、さらに次の10冊を購入。最後の3冊は未読のまま。年間の総数に増減があっても、このサイクルの回転数が変動しているにすぎない。

    歯磨き粉も石鹸もシャンプーも完全に無くなって初めて、次のものをチンタラと買いにいくのに、なぜか本だけは絶対に読み切れない量を確保することに用意周到だ。そこに存在するのは、より早く、より多く、より複雑な情報に囲まれていたいという欲求と、処理しきれなかった未読本に対する罪悪感である。

    このような大量の情報へ接する時に感じるジレンマこそが、本書の標題にもなっているオーバーフローという状態によって生み出されるものだ。それもこれも全ては、脳が情報処理できる能力に制約があるということに端を発する。その脳の制約の正体を、とことん解明しようというのが、本書の骨子だ。

    われわれが今日もって生まれる脳は、クロマニヨン人が4万年前に生まれたときと、さして変わりがない。しかし、おそらくクロマニヨン人が一年間に出会った人々の数は、われわれが一日に出会う人々の数に匹敵するという。われわれが扱わねばならない情報量とその複雑性は増加の一途をたどっているのだ。

    はたして石器時代のクロマニヨン人の脳が、現代の情報洪水に見舞われたらどうなるのか?そんな秀逸な投げかけが、本書をやすやすと最終頁まで誘ってくれる。つまり、進化論という系譜の中で、脳の役割にフォーカスを当てている点が本書のユニークなところなのだ。

    そもそも、脳が情報を受け取る能力に制限があるのはなぜなのか?これは注意のメカニズムとも、深く関連する。 注意の力とは、情報の洪水が脳に届く直前のところではたらくものである。暗闇の中でスポットライトを照らすように、何かに向けて注意をコントロールするということが、すなわち情報を選択することになるのだ。仮にこの「コントロール可能な注意」というものが存在しなければ、無意識に入ってくる情報を遮断することができず、われわれは自分の意志で能動的に行動することすらできなくなってしまうという。

    さらに、この注意の力は、記憶力の一種によって形成されているというから興味深い。何に注意すべきかを頭に記憶しながら、同時並行で行動を行わなければ目的が達成されないためである。この機能を司るのが、ワーキングメモリという能力だ。

    ワーキングメモリは、普通数秒といわれる限られた時間の中で情報を保持する能力を指している。この能力にとりわけ注目が集まるのは、教示、電話番号や位置を保持するだけでなく、問題解決の能力においても重要な役割を果たしているからだ。さらに、ワーキングメモリは言語理解、学習や推論などの複雑な認知的課題に必要とされる情報の一時的な操作と保持も行っているという。

    前半はこのワーキングメモリのメカニズムが詳細に解説されているのだが、なんといっても気になるのは、このワーキングメモリが拡張可能なのかということだ。この点について、著者は数々の先行研究や自身の実験から、「訓練を通して改善されうる」という事実を明らかにしている。ワーキングメモリは静的ではなく、その容量の制約は拡張可能であるということが示されているのだ。

    そして、具体的なワーキングメモリの訓練方法の一つとして「禅」が紹介されているのも面白い。凡夫禅(僧侶でない一般人の禅)によって、心をコントロールしたり、集中させたりすることが、ワーキングメモリの拡張につながるというのだ。実際に、禅の修行僧の脳波を測定したところ、通常より高い脳の活動が見られたという。

    現代の情報化社会の特徴は、おおざっぱに「増大する複雑さ」と「高度な情報の流れ」と言われるが、これはワーキングメモリの負荷を増加させる方向への移動である。このような、われわれの能力の限界を広げる状況こそが、脳を最も訓練し、人類の能力水準をあげることにつながっているのだ。

    一方で、本書では情報洪水のストレスに対する警鐘も鳴らされている。ストレスのレベルは文脈的であり、置かれている状況の解釈とも関わりを持つそうだ。キーとなる概念は、コントロールしているという感覚を持てるかどうか。仮に未読本の山があろうとも、自身のコントロール下にあると思えばストレスにはならないということか。やるぞ、計画的未読!能動的積ん読!積極的置い読!

    読みもしない本を買いすぎちゃったよ、そんなことをボヤかれている方にとっては、格好の免罪符になる一冊でもあるだろう。例え未読であっても、情報圧力をかけることこそが人類の進化なのだ。ん、これは言いすぎか?どうやらワーキングメモリが不調の模様。 あしからず。

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