越境とアイデンティフィケーション―国籍・パスポート・IDカード

制作 : 陳 天璽 
  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788512757

作品紹介・あらすじ

◆国家のシステムと人のアイデンティティの桎梏◆

現在、世界中で2億人を超える移民が暮らし、2050年には4億人以上となることをご存知でしょうか。移民がグローバル化し、多様な出身地からなる人々が共存する世界において、複雑化する国家と個人の関係はどうなっていくのでしょう。本書は個人が誰であるか確認する行為、つまり「アイデンティフィケーション」に焦点をあて、その現状認識から未来の眺望を拓きます。国家は個人をいかに識別し、逆に個人はどう自己証明するのか。国籍をめぐる法原理の側面、アジア・ヨーロッパ・パレスチナ/イスラエルの人々の実践の側面、パスポートなどモノが語る側面から、越境社会を明らかにする力作論集です。

感想・レビュー・書評

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  • 『越境とアイデンティフィケーション――国籍・パスポート・IDカード』
    編者:陳 天璽
    編者:近藤 敦
    編者:小森 宏美
    編者:佐々木 てる
    装幀:虎尾 隆
    出版社:新曜社
    ジャンル:社会学
    出版年月日:2012/03/22
    ISBN:9784788512757
    判型:A5
    ページ数:490
    定価:5,280円(本体4,800円+税

     2億人を超えてなお増え続ける移民。移民がグローバル化した世界において変わり続ける国家と個人の関係はどうなるのか。国籍をめぐる法原理・人々の実践・モノの側面から,アイデンティフィケーションの現状を明らかにし越境社会の未来を問う。
    [https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455722.html]


    【目次】
    序論[陳天璽・近藤敦・小森宏美・佐々木てる] 001


    第一部 法からのアプローチ:国籍をめぐる法原理とアイデンティフィケーションの変容編集責任:近藤敦] 

    第1章 国籍とジェンダー─国民の範囲をめぐる考察[森木和美] 020
    はじめに
    1 どのように「国民」になるか
    2 「国際結婚」と国籍移動
    3 「国際結婚」にみる子どもの国籍
    おわりに

    第2章 血統主義と親子関係――最高裁判決を素材にして[館田晶子] 043
    はじめに
    1 最高裁判例に見る国籍法の理解
    2 立法過程における血統主義と親子関係の考え方
    3 血統主義の意味
    おわりに

    第3章 外国人とは誰か?[柳井健一] 069
    はじめに
    1 外国人の人権という議論枠組
    2 新たな枠組を求めて
    むすびにかえて

    第4章 複数国籍の容認傾向[近藤敦] 091
    はじめに
    1 国際的な動向と日本の判例・学説の状況
    2 反対論と賛成論の根拠の検討
    3 複数国籍に対する諸外国の対応
    4 日本の国籍選択制度をめぐる国際法上および憲法上の論点

    第5章 血と国――中国残留日本人孤児にみる国籍の変遷 イ[冬 岩] 116
    はじめに
    1 出生時の国籍
    2 国籍の変遷と錯綜
    3 戦時死亡宣告と血統主義
    4 日本の戸籍をもつ中国籍者
    5 未判明孤児の就籍・永住帰国
    まとめにかえて


    第二部 人からのアプローチ:公的アイデンティフィケーションは桎梏か?[編集責任:小森宏美] 

    第6章 「掌握」する国家、「ずらす」移民――李大媽のライフ・ストーリーから見た身分証とパスポート[木村 自] 136
    はじめに
    1 李大媽の生い立ちとミャンマーへの移住――交易と戦争
    2 李大媽とミャンマー国籍
    3 李大媽の生活――ミャンマーの経済・政治・治安
    4 ミャンマーからタイへ
    5 台湾への移住
    6 分析――国家による「掌握」と「掌握されるもの」による「ずらし」

    第7章 国境を越える子供たち――タイ・マレーシア国境東部における日常的越境と法的地位[高村加珠恵] 166
    はじめに
    1 調査対象地
    2 日常的越境者に対する法的取り決め
    3 華文小学校に越境通学するマレー系ムスリムたち
    4 越境通学する華人たち
    5 子供たちの越境通学
    6 国境空間における日常的越境と法的地位――結びにかえて

    第8章 並存するナショナル・アイデンティティ――離散パレスチナ人によるパスポート、通行証の選択的取得をめぐって[錦田愛子] 200
    はじめに
    1 ヨルダン国籍とパレスチナ人
    2 国境を越える道具
    3 パレスチナ人のナショナル・アイデンティティと越境をめぐる意識
    おわりに

    第9章 移動の制度化に見る国の論理、人の論理――エストニアの独立回復とEU加盟過程でのパスポートの意味[小森宏美] 230
    はじめに
    1 ロシアの旅券からエストニア・パスポートへ、そしてソ連パスポートへ――国民国家の獲得と喪失
    2 再国民国家化への道
    3 EU加盟と国境管理――脱国民国家化の諸相
    むすびにかえて――越境体制の一元化と多様化

    第10章 中国朝鮮族と国籍――移動の規制と家族の多国籍化[具 知瑛] 249
    はじめに
    1 移動から問う国家・国籍――近代化からグローバル化へ
    2 国民国家の形成期における移動と国籍――流民から国民へ
    3 グローバル時代における移動と国籍
    4 「朝鮮族」にとって国籍の意味とその活用
    まとめにかえて

    第11章 対外関係史と国籍政策の関連性――ポルトガルの事例から[西脇靖洋] 273
    はじめに
    1 一九世紀の国籍政策
    2 権威主義体制期の国籍政策
    3 権威主義体制の崩壊と国籍政策
    4 国籍政策の欧州化
    5 現在の国籍政策
    おわりに

    第12章 国籍とアイデンティティのパフォーマティヴィティ――個別引揚者と「中国残留日本人」の語りを事例に[南 誠] 295
    はじめに
    1 国籍・カテゴリー化とアイデンティティ
    2 個別引揚者西条正の事例
    3 中国残留孤児奥山イク子の事例
    おわりに

    第13章 社会資本としての国籍とジェンダー ――タイ「山地民」女性のグローバル移動から[石井香世子] 320
    はじめに
    1 国籍をめぐる視座
    2 タイの住民管理制度と「山地民」
    3 国境を越える「山地民」女性
    おわりに――社会資本としての国籍とジェンダー


    第三部 モノからのアプローチ:パスポート・IDの歴史とアイデンティフィケーション[編集責任:佐々木てる] 

    第14章 戦前期の旅券――形式の変遷を中心に[柳下宙子] 340
    はじめに
    1 形式の変遷
    2 移民と旅券――変更の最大要因
    おわりに

    第15章 日本における出入国管理と渡航文書の実務[大西広之] 367
    はじめに――出入国審査と渡航文書
    1 入管法上の旅券――狭義の旅券
    2 入管法上の旅券――旅券に代わる証明書
    3 乗員手帳
    4 入管実務上認められる渡航文書
    5 出入国審査で提示されるその他の文書
    おわりに――渡航文書の現在と未来

    第16章 揺れ動く「うちなる国境」と渡航文書・パスポート[山上博信] 395
    はじめに
    1 前史――第二次世界大戦の敗戦に伴う三権分離
    2 特別地域とわが国本土の間の旅行(判例に見られる密航事件)
    3 日本本土から特別地域に渡航する場合における「身分証明書」制度の誕生
    4 身分証明書の効力が争われた事件(重光丸事件・1962年)
    5 琉球軍政本部の発給した「パスポート」
    6 琉球列島米国民政府(USCAR)の設置と「琉球パスポート」
    7 琉球パスポートのあれこれ
    おわりに

    第17章 パスポート以前のパスポート――国内旅券と近代的「監理」システム[佐々木てる] 428
    はじめに
    1 手形の種類
    2 手形の確認と通行システム
    3 移動の管理
    4 手形の終焉とパスポート
    まとめ――ポストナショナルな時代のパスポートとは

    第18章 国家と個人をつなぐモノの真相――「無国籍」者のパスポート・身分証をみつめて[陳 天璽] 444
    はじめに
    1 国籍、無国籍、それを証明するパスポート
    2 「無国籍」者と複数のパスポート――林氏のケース
    3 祖国に帰れない「無国籍」者――丁氏のケース
    4 国籍保持者から「無国籍」者へ――李氏のケース
    おわりに


    あとがき
    索引 (1)

  • 東2法経図・6F開架:329.9A/C38e//K

  • アイデンティフィケーション 【identification】: 同一であることの確認、証明。
    自分は○○である、と思うだけでも名乗るだけでもなくて証明する/される、ということか?

    そのわかりやすい形が国家による証明。国籍・パスポート・ID。
    これらを切り口にして色んな場所の色んなケースをとりあげながら、越境を論じる。

    外国の、完全に知らなかった部分はへーなるほどそうなんだーと読んだ。
    日本の、国際結婚やその子供の国籍や中国残留孤児の部分は、きちんと知らないまま報道どおりのイメージだけをもっていたことを恥じながら読んだ。
    知らないことが多いな。

    佐々木てるのパスポート以前、江戸期の手形のところが面白かった。
    (下々の)移動の自由が許される範囲が拡大することは、実は(お上が)管理できる範囲が拡大した結果でもある。

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