「反戦」のメディア史: 戦後日本における世論と輿論の拮抗 (世界思想ゼミナール)

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  • 世界思想社教学社
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790711964

作品紹介・あらすじ

国民は「先の戦争」に何を読み込んできたのか。「原爆」の語りと「沖縄戦」の語りにはいかなる相違があり、また、それらはどのように変化したのか。戦争観の位相差と変容、そして、世論popular sentimentsと輿論public opinionの葛藤を描いた、画期的な戦後メディア論。

感想・レビュー・書評

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  • ALLREVIEWS2022323掲載 評者:竹内洋(教育社会学博士。関西大学東京センター長。京都大学名誉教授・関西大学名誉教授wiki)

  • [ 内容 ]
    国民は「先の戦争」に何を読み込んできたのか。
    「原爆」の語りと「沖縄戦」の語りにはいかなる相違があり、また、それらはどのように変化したのか。
    戦争観の位相差と変容、そして、世論popular sentimentsと輿論public opinionの葛藤を描いた、画期的な戦後メディア論。

    [ 目次 ]
    序章 「反戦」のナショナリティ
    第1章 「前線」と「銃後」に映る自己像―『ビルマの竪琴』『二十四の瞳』
    第2章 「学徒出陣」の語りと戦争体験―『きけわだつみのこえ』
    第3章 「沖縄戦」を語る欲望の交錯―『ひめゆりの塔』
    第4章 国民のアイデンティティと「被爆」―『長崎の鐘』『原爆の子』『黒い雨』
    終章 「反戦」の世論と輿論―その限界と可能性

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  戦後の特攻、沖縄、原爆等をめぐる作品に込められた思い、それを受け入れる側の反応を、論理としての「輿論」、感情、心情としての「世論」から分析したもの。竹山道雄の『ビルマの竪琴』をもとに戦後まもなくつくられた映画はさして反響を呼ばなかったのに、85年に中井貴一主演で再度つくられたときは大ヒットとなった。また、『二十四の瞳』は戦後すぐにつくられた映画では大ヒットだったのに、87年に田中裕子が主演したときはあまり反響を引き起こさなかった。さらに、戦後まもなくの『ひめゆりの塔』はヒットしたのに、同じ沖縄をあつかった『健児の塔』はそれほどでもなかった。なぜこうしたことが起きたのか。本書はその答えを戦後の「輿論」と「世論」のせめぎ合いの中に求める。長崎の原爆をめぐる作品の評価も興味深い。本書を読めば、戦後すぐの『長崎の鐘』等の作品は原爆投下を神の摂理としてとらえようとしたために、GHQが許したとか、これを世界に訴えるときに、加害者としての日本人をどう位置づけるかが問われたとか、現在における戦争責任論につながるものがすでに戦後60年の「反戦」をめぐるメディアの中で論じられてきたことがわかる。「輿論」と「世論」の対立は靖国問題についてもいえる。高橋哲哉の『靖国問題』は緻密な論理に貫かれた良著ではあるが、素朴な心情である「世論」を無視してしまったのではないか。

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著者プロフィール

1969年、熊本市生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。現在、立命館大学産業社会学部教授。専攻は歴史社会学・メディア史。単著に、『二・二六事件の幻影』(筑摩書房、2013年)、『焦土の記憶』(新曜社、2011年)、『「戦争体験」の戦後史』(中公新書、2009年)、『殉国と反逆』(青弓社、2007年)、『「反戦」のメディア史』(世界思想社、2006年)、『辺境に映る日本』(柏書房、2003年)がある。

「2015年 『「聖戦」の残像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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