- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791754847
作品紹介・あらすじ
哲学・科学の根底にある「時間」概念を根底から覆し、フッサールやウィトゲンシュタインも解けなかった「他我」問題を解消、西洋思想の根幹としての「意識」の虚構性を暴くことによって、現代科学の隠れた陥穽を突く。画期的「自我論」への予兆を秘めた大森哲学の新展開。
感想・レビュー・書評
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哲学
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「過去とは過去物語である」。
あらゆる存在者の歴史性とは、すなわち宇宙の茫洋たる一大物語の隅を占めるひとつまみのちいさなエピソード。その語り部を担うのが我々である。我々が語る、とは宇宙自身によって示された物語を語るのであって、勝手な妄想や思いつきで語られるのではない。物理的宇宙の自然科学的な手法に基づくビッグバンやらなにやらの宇宙史ですら、宇宙が示したある種の物語と言える。過去を語るとは、宇宙が我らをして、宇宙自身について語らしめること。この意味で科学者もかなり弁の立つ語り部。
我々自身が、その物語のなかにいる。
我々が語ることで、宇宙は物語として在る。世界も自我も理論概念だというのならば。今と過去・未来との意味の相互連関とでもいうべきもの、これがなければ、現実は現実として成立しえない。物語なくして、現実は現実たりえない。物語として理解される宇宙は、我らをして、みずからについて語らしめる。私が語ること、私が語らしめられること、私がその物語の中に居、かつこれを形成する登場人物であることは同時。物語は、物語自身をも、自身の物語において物語る。無限。 -
「時間と自我」「時間と存在」に続く三部作の最終巻。というより、前二巻のまとめ、という内容。哲学に意識なんて観念は必要ない、などなかなか過激で切れ味のいい論考が面白い。過去の実存性をめぐる話はなるほどと思った。
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日本の戦後の哲学の第一人者、大森荘蔵は、物理学科を卒業した化学哲学者ですが、その遺書となったのがこの『時は流れず』です。「過去とは人間の作り上げる物語である」というユニークな時間論を展開します。