時は流れず

著者 :
  • 青土社
3.41
  • (1)
  • (5)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 123
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791754847

作品紹介・あらすじ

哲学・科学の根底にある「時間」概念を根底から覆し、フッサールやウィトゲンシュタインも解けなかった「他我」問題を解消、西洋思想の根幹としての「意識」の虚構性を暴くことによって、現代科学の隠れた陥穽を突く。画期的「自我論」への予兆を秘めた大森哲学の新展開。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 哲学

  • 「過去とは過去物語である」。

    あらゆる存在者の歴史性とは、すなわち宇宙の茫洋たる一大物語の隅を占めるひとつまみのちいさなエピソード。その語り部を担うのが我々である。我々が語る、とは宇宙自身によって示された物語を語るのであって、勝手な妄想や思いつきで語られるのではない。物理的宇宙の自然科学的な手法に基づくビッグバンやらなにやらの宇宙史ですら、宇宙が示したある種の物語と言える。過去を語るとは、宇宙が我らをして、宇宙自身について語らしめること。この意味で科学者もかなり弁の立つ語り部。

    我々自身が、その物語のなかにいる。
    我々が語ることで、宇宙は物語として在る。世界も自我も理論概念だというのならば。今と過去・未来との意味の相互連関とでもいうべきもの、これがなければ、現実は現実として成立しえない。物語なくして、現実は現実たりえない。物語として理解される宇宙は、我らをして、みずからについて語らしめる。私が語ること、私が語らしめられること、私がその物語の中に居、かつこれを形成する登場人物であることは同時。物語は、物語自身をも、自身の物語において物語る。無限。

  • 「時間と自我」「時間と存在」に続く三部作の最終巻。というより、前二巻のまとめ、という内容。哲学に意識なんて観念は必要ない、などなかなか過激で切れ味のいい論考が面白い。過去の実存性をめぐる話はなるほどと思った。

  • 日本の戦後の哲学の第一人者、大森荘蔵は、物理学科を卒業した化学哲学者ですが、その遺書となったのがこの『時は流れず』です。「過去とは人間の作り上げる物語である」というユニークな時間論を展開します。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1921~1997。岡山県生まれ。東京帝国大学理学部物理学科卒業、海軍技術中尉となる。哲学を学ぶため、戦後に同大学文学部哲学科に再入学。卒業後、数度のアメリカ留学を経て、東京大学教養学部教授、放送大学教授を歴任。時間、自我、知覚などにおいて独自の哲学をうちたて、多くの後進に影響を与えた。

「2021年 『新視覚新論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大森荘蔵の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×