- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791757312
作品紹介・あらすじ
生命の世界を、生物ばかりでなく組織や細胞までもがメッセージを交換しあう「記号圏」としてとらえる「生命記号論」。脳やDNAによる決定論的生命観を乗り越え、「自然」と「文化」の対立を相対化し、「意識」の誕生の謎に迫る。
感想・レビュー・書評
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生命の世界の記述に、「解釈を行う主体」を含む三項関係による記号論体系を導入した本著は、
デカルト的主客二元論の超克による生物側の主体性の回復、意識の座を巡る局在論の批判、記号論的ニッチの相似度による倫理の適用、などなどざまざまな問題に触れており射程範囲が広く、それ故にまだうまく纏められずにいます。が、とにかく知的好奇心を刺激するとても面白い本でした。
あとド素人の所感ですが、創発の概念を援用し、細胞というミクロな世界から生態系というマクロな世界まで、自己言及的なシステムが階層状に連なるとするところに、今西錦司の「生物の世界」に近い何かを想起しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ホフマイヤ氏が、「肉体的側面」と「精神的側面の相互作用を述べているのは勉強になったし、Rコンプレックスのことも面白かったです。
「脳のモジュールと身体の間に私たちの身体の機能を一秒ごとに面倒を見ている記号過程のループと全く同じものが、意識的な統一の中にも入り込み、私たちの環世界の断片を意識に換える際の選択過程を担っているということだ…肉体の活動、あるいはそれと等価な基本行動が、私たちの知性や意識の源泉なのである…意識とは身体の実存的環世界を肉体が空間的物語的に解釈したものである。」
この空間的物語は以前から興味のあったコンセプトです。それと病気・身体・精神・脳の関係の説明が自分の中でさらに体系化できました。