ホロコーストからガザへ パレスチナの政治経済学

制作 : 岡真理  小田切拓  早尾貴紀 
  • 青土社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791765126

作品紹介・あらすじ

「パレスチナ問題」を経済学的に分析し、世界的に注目される著者が明らかにするイスラエルの占領実態と国際社会の援助の行方。ホロコースト生存者の娘という出自から問う、人間の記憶と倫理への思考。

感想・レビュー・書評

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  • 2023年10月7日に起きたハマスによるイスラエルへのテロ。その報復として未だ続くパレスチナへの攻撃。

    教科書だけの知識ではその背景や問題を理解出来ないので手に取った。
    書店で数多くあるパレスチナ問題の書籍から偶然引き当てたのだが、著者であるサラ・ロイ氏はパレスチナ、イスラエル問題の第一人者と言える人物だとか。
    更にサラ・ロイ氏はイスラエルを批判的に見ているが、彼女の両親はホロコースト・サヴァイヴァーであるというバックボーンを抱えている。

    自分はあまりにもイスラエル、パレスチナの知識がないため、オスロ合意など平和への第一歩なんだって思い込んでいたが、実態はイスラエルによるパレスチナを支配するための政策の一つでしかなかったということを本書を読んで初めて知った。
    1948年にイスラエルが建国されてからのパレスチナ人の苦難の歴史、その背景にあるイスラエルの思惑を深く俯瞰しており、本書を読むことで今起きているパレスチナへの攻撃がより深く理解出来た。
    そして改めて今回のイスラエルの行いは虐殺なんだと。

    本著のなかでも個人的に特に印象的だったのは、サラ・ロイ氏個人のバックボーンから語られる第二章の”ホロコーストからパレスチナ‐イスラエル問題へ”とサラ・ロイ氏と徐京植氏の東京大学での対談を収めた”〈新しい普遍性〉を求めて ポスト・ホロコースト世代とポスト・コロニアル世代の対話”がとても良かった。

    パレスチナ問題を扱った本として最初に読む本としてはとても難しいので、2冊目3冊目に読むのをお勧めするが、今起きている問題を知るには間違いなく読まないといけない本だった。
    自分も1回読んだだけでは到底理解が追いつかない部分があったので、またいくつかパレスチナ、イスラエル関係の本を読んでからまた読み直したいと思っている。

  • 169ページからの「パート2」
    特に「ホロコーストからパレスチナ イスラエル問題へ」の
    42ページが最も読みやすかった
    パレスチナ問題の現状と歴史についてかなりの理解ができたけれど
    それでも依然としてユダヤの歴史の大きな謎が見えてこない

    そしてこの本で気になるところもある
    その一つを上げるならば266ページで杉原千畝のドラマを取り上げて
    話を乱暴に進めているところである
    ここで対談者でもありインタビューアでもある徐さんは
    突如として浮き彫りにされた杉原ブームを都合よく真に受けて
    論じているように思えてならない
    どう同贔屓目に見てもブームを鵜呑みにしたまま
    裏付けをとっているようには見えない
    自分の論を正当化するために無理をして勇み足となっているような
    強く固まった姿勢を感じてしまう
    この事についてサラは発言していない

    少なくともイスラエルの政府の人種差別は支離滅裂だろう
    選民意識に特権意識に依存した上でそのことを自己弁護するために
    嘘と秘密を傲慢さによって正当化しようとしているようだ
    人並みならない計算力は有るがあまりにも視野が狭く
    物質性に偏り精神的に成長していないように思える

    その一方で極端に物質への固執が強く
    如何にしてこの世の全ての力を我が物にするべきかについてのみに
    特化して成長し自然を牛耳ろうと研究を重ねて来たようで
    一見いかにも秀でているようなのだけれど
    幸せに無くてはならない最も基本である環境について
    驚くほどに無知であり愚かだと言うしかない

    まるで自分の尻尾を食べている蛇のように
    欲張るほど身を滅ぼしていくパラドシカルを見ているようで
    哀れをもよおす程である

    肉体労働の全てを蔑み植民地化した多民族を家畜のように
    こき使いもてあそぶことですさんだ貴族社会を賄おうとしている
    外国人出稼ぎ労働者を得た今
    さんざん酷使してきた先住民でありかつての同胞である筈の
    パレスチナ人を必要としなくなり
    目の上のタンコブを殲滅したいがごとくにあらゆる手段を考えだして
    国際世論を周到にコントロールしながら理不尽極まりない行動を
    とっているとしか見えない状態である
    ひょっとすると毛嫌いしながらも今だに建国の礎にしている
    ナチスのホロコーストさえ
    自作自演なのではないかと思えるほどに酷似しているのである

  • 両親がポーランド出身のホロコーストの生き残り、という著者サラ・ロイ。
    戦前はユダヤ人ゲットーに住んでいたという母と叔母は、戦後、アメリカとイスラエルに別れて暮らすことになった。どちらもきっかけはホロコースト。「ここではないどこか」を選ばざるを得なくなったとき、二人の考えは対照的だった。
    叔母さんは「あんな目にあって、世界の中にユダヤ人の場所はどこにもないことが分かった」という理由でイスラエル=シオニズムを選んだ。お母さんは「寛容こそがユダヤ教の教え、それが実践できるから」という理由でアメリカ=ジュダイズム(ユダヤ教)を選んだ。
    著者は、母親に違い立場から、イスラエル政府の行っているガザ地区とヨルダン川西岸の占領を非難する。ふむ。確かに、内田樹のレヴィナス論に描かれるユダヤの教えもそのようなものだ。
    また、フィールドワーク中に体験したイスラエル兵によるパレスチナ自治区内での抑圧を「父から聞いていたナチスによるユダヤ人迫害と同じ」と指摘する。もちろん、イスラエル人だって同じことを耳にしているだろう。そこで「過酷な目にあったユダヤ人が他の民族を過酷な目にあわせていい理由」が必要になる。本書曰く、それは「ホロコースト時代のユダヤ人は愚かで弱かったから力の前に屈したのだ」というロジックらしい。ホロコーストサバイバーは、イスラエルで救われるのではなくセカンドレイプにあっているようなものではないか。絶句……
    他にも、占領された状態とはどのようなことなのかを、統計的な数字と具体的な場面の両面から描くことで説得力をもって描いている。
    発言の自由がないとはどういうことなのか。
    住居の自由がないとはどういうことなのか。
    移動の自由がないとはどういうことなのか。
    職業の自由がないとはどういうことなのか。
    貿易や産業に必要な許認可を恣意的に運用されると何が起きるのか。

    そして、一番感銘を受けたのは、それを告発調に叫ばない温度。悪いのは全部あれのせいだ、と陰謀論に訴えない節度。異議申し立てと寛容の精神こそがユダヤ教の本質というその言葉通りの態度。

    すでに20世紀最長となる占領期間だというイスラエルによるパレスチナ支配。イスラエルに限らず、世界的に広がっている右翼化国粋化他民族排斥の動きを見るとどこに解決の糸口があるのかまったくわからない。
    著者はホロコーストサバイバー(の系譜)だからこそ持っている諦めない姿勢をみせている。頑張れ、幸あれ。

  • イスラエルにとってはパレスチナ人を就労させることで人件費を大幅に削減できる。ホロコーストと占領が大きく異なっているからといって、そのことが占領の残虐さを軽減できることはない。

  • これは非常に難しい本でした。
    僕には全てを理解することはできませんでした。


    これは本がダメということではなく、僕自身の能力不足。
    中東問題・宗教問題の根深さは簡単には理解できない。

  • ガザの現状、西岸の現状。オスロ合意と「和平」と「自治」の正体。私たちが知らず知らずのうちにやらかしたこと。

  • 2010.01.17 朝日新聞に紹介されました。

  • 100117朝日新聞書評
    “極限まできた「反開発」、独立しても中身の経済は消失”

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