微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公-

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791768929

感想・レビュー・書評

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  • 2016.3.112016.3.22

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/9271

  • 生命誕生から今に至る地球全体の姿を炭素循環、窒素循環という大きな視点からとらえ、その根幹は全て微生物が担っており、それは今現在も変わらないという壮大なテーマ。
    葉緑素やミトコンドリアが生命活動で果たしているナノマシンとしての機能や、光合成での廃棄物である酸素が急激に大気中濃度をあげた理由が判りやすく説明されている。
    酸素濃度の増加は炭素が二酸化炭素に戻らず有機物として地層中に堆積、保存されたことにより、消費される酸素が減り、酸素濃度が上がっていき、それにより呼吸を行う生物が段々と繁栄していったとするもの。
    動物が動くようになったのは動くことによって自分の周辺の養分や酸素濃度低下を防ぐことができたからという説明にはとても納得。
    それが段々動物個体の中で呼吸、循環、消化器と機能が分化することにより「効率の良い」食物摂取、酸素吸入が可能となった。
    ただ、人間の営みがその微生物が保ってきた循環とバランスを非常に短期間で崩している。
    人間はこの100年余りの間に所謂化石燃料の使用によって、温室効果ガスの問題以前に地球の炭素循環バランスを、肥料の合成という窒素の固定化により植物の収穫を挙げ人口の増加に対応してきたものの、全体の窒素循環バランスを、それぞれ乱し続けている。
    これが近未来にどう影響するのかは判らないが、生態系云々以前に地球全体の大きなバランスを人間が壊そうとしているのは確か。
    人間が止められなかったとしても、微生物たちがこの大きな変化にも動じないことを祈る。

  • 面白いが、ちょっと難しい

  • 英語のタイトルが『Life's Engines』とあるように、微生物を生命のエンジンとして捕らえた内容の本。
    地球誕生後に最初に発生した生命である微生物。これらの働きにより、地球が地球らしくなり、さらにはいろいろな植物や動物が誕生してきたことを説明している。
    その中には、以前読んだ『スノーボールアース(ガブリエル・ウォーカー著)』も出てくる。
    細胞内のミトコンドリアなどが、実は大昔の生命であったという話は聞いたことがあったが、それがどのように取り込まれ、単細胞生物からいかに多細胞生物に進化したのかが、なんとなくわかったような、わからないような。
    自分の頭が悪いせいか、はたまた翻訳された文章のせいか、どうも内容がしっくりと頭に入ってこないので、星三つ。

  • 原題は"Life's Engines-How Microbes Made Earth Habitable"。
    「微生物が地球をつくった」といっても、微生物が地球本体をよいしょよいしょと捏ねて作ったわけではもちろんない。本書の主題は、いかにして地球が多くの生物にとって「居住可能」となったのか、その道筋に、「微生物」がどのようにかかわったかである。

    著者は海洋生物学者で微生物の進化論や生化学を専門とする。
    本書で特徴的なのは、生命を「エンジン」として見る見方だろう。エネルギーを生み出し、これを消費し、自身を維持する能力である。エネルギーは電気的勾配によって生み出されて、ATPなどのエネルギーの「基本通貨」に変換され、これが生命維持に必要なタンパク質合成などを行うために消費される。
    葉緑体は光エネルギーをATPに変換する。
    ミトコンドリアは膜上に位置し、膜内外の電荷勾配によってATPを作り出す。
    リボソームは、ATPを利用してアミノ酸をつなぎタンパク質を合成する。
    いずれも細胞内に存在する小さな器官だが、著者はこれを、生命というエンジンを動かすのに必要な小さな機械・部品=「ナノマシン」と見なしている。
    それぞれが小さなギアやモーターとして働き、生命活動を維持する縁の下の力持ちとなっているというわけである。

    これらの発展に大きな役割を果たしたのが微生物であろうと考えられるわけだが、微生物というのは化石として発見されにくい。その小ささゆえ、生きているものですら、存在が認められたのは17世紀のことである。何億年、何十億年前という単位の過去に、その真の姿がどのようなものであったかを知ることはかなり困難で、推測により埋めなければならない部分も多い。

    地球上の生物が現在のような多様性を持つまでにはいくつかの段階があり、1つの大きな出来事が酸素の蓄積だった。地球上ほどの高濃度の酸素は太陽系の他の惑星には見られないという。
    本書によれば、こうした酸素はそれを目的として作り出されてものではなく、副産物として生じたものである。太陽のエネルギーを通じて水を分解してエネルギーを得ることが可能な微生物が生まれたことにより蓄積してきたというのだ。現在、光合成可能な原核生物として知られているのは藍藻類のみである。当時、他のものがいたかどうかはわからない。
    さまざまな傍証から、酸素が大量に発生するようになったのは、24億年前であり、その時代には動物も植物もいなかった、したがって、おそらく微生物により、酸素が発生したと考えられる。
    ともかくもこうして、酸素を呼吸する生物を生む素地が整ってきたことになる。

    微生物はまた、葉緑体やミトコンドリア、リボソームといったナノマシンを伝播する能力もおそらく持っていたと考えられる。
    微生物はほとんどが「共生」して生きる。群落を作り、仲間の老廃物を使って生き、最小限の養分で暮らしていくのが一般的である。また、抗生物質など、自らに毒となるものを無効にする能力を身につけた仲間がいれば、「設計図」(=遺伝子)の形でそれをやりとりすることもある。1つの微生物が別の微生物を丸飲みすることもある。
    前述のようなナノマシンは、それ自体、かつては自由に暮らしていた細菌であった可能性がある。ミトコンドリアや葉緑体はそうした「細胞内共生」から生じてきたというのが定説となってきている。

    ナノマシンの発生、細胞内共生という形でのナノマシンの組み合わせ、そして酸素の蓄積。
    これらを基盤とし、長い年月を掛け、多様な動物や植物が生まれた。
    その原動力となったのが微生物であるとした点、生命活動の基礎をエンジンとして捉えた点が本書のユニークなところだろう。

  • 〈微生物の基本的な機能を、電子(あるいは水素イオン=陽子)のやりとりとして見る〉ことを軸にして解説。微生物が地球環境を現在のようなものにしているのだということを論証していく。
     自分にとっては、微生物のメカニズムを解説している5章までがおもしろかった。それからの地球改変物語は、いまひとつイメージ喚起力に欠けるというか、細部に入りすぎていておおまかな流れがわかりにくく感じた。

  • 請求記号 465/F 13

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