酔っぱらいの歴史

  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791771271

作品紹介・あらすじ

酒に呑まれた人類史
石器時代から人は酒を飲んできた。シュメール人や古代エジプト人は何を飲んでいたのか。ギリシア人とローマ人とヴァイキングたちの宴とはどのようなものだったのか。蒸留酒があたえた衝撃とは。古代中国やイスラム圏、さらにロシア、オーストラリア、南米にいたるまで、酔っぱらいたちをめぐる人類史。

感想・レビュー・書評

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  • 酒、やっぱすごい…。そう思わせてくれる本でした。
    英国紳士が皮肉っぽいユーモア交じりで語る酔っぱらいの文化史。
    「並外れた飲酒強要能力(ロシア人を指して)」「世界大戦のときはいつもそうだが、アメリカ人はちょっともたもたしていた」等の英国的パワフル表現が本文中で炸裂しています。

    ※たまたま今日(2020年2月2日)、NHKスペシャルでお酒の特集をしていて、本著にも出ていた古代エジプトの酔っぱらいの絵がテレビにも出ていて、何となく嬉しい気分?になりました…。

    本著を読んで思ったのは、文化史はやっぱり面白い、ということ。個人的には「お酒」の歴史より、「酔い」の歴史の方が人間の振る舞いがわかって興味深く読めました。
    読み終わって、「酔っぱらい」のハチャメチャ度は昔の方がよっぽど酷かったなぁと。昔は酒の神秘性にまかせてとんでもない振る舞いがあったようで、この点でも、人類は進歩しているのかもしれません(笑

    個別のエピソードもなかなかで、人が酒を造って飲むために定住というスタイルが発生した、とか、禁酒法は上手くいった法律だった、とか、面白い語り口の中にエビデンスを入れながら、わかりやすく感心させてくれます。
    古代エジプトのリバースしてトランスするコトを目的に飲む飲み方は今どき大学のサークルでもやらないレベルです(最近は大学も未成年は飲まないらしいですね…)
    1点残念だとすれば、英国人らしくエピソードは欧米中心。東アジアは古代中国が1章あるくらいです。まぁ、東アジアで類著が出ればそれで良いのかもしれません。

    何はともあれ、総括すると読み口も面白く、目のつけ所も良い良著です。少なくとも、酔っぱらうコトがある方は、一度読まれると良いのではないかと!

    なお、細かいところですが、古代ギリシャのくだりで、女性たちが奇矯な振る舞いをすることをさして「ホラー版アルカディア女子会」と例えたのは元ネタが全く分かりませんでした。2017年の映画アルカディアのこと?脚注欲しかったです。

  • なぜ酒を飲むのか。飲まずにおれないのか。

    酒を嗜む人であれば、年に3回くらいはハメを外して痛飲してしまい、その度に翌日「もう酒は飲みません神様、どうか元に戻して」と呻きながら頭痛・吐き気と闘う経験があるだろう。

    またごく最近でいえば、コロナ期間で飲食店が休業している間も路上で酒を飲み酔っ払う老若男女さまざまな人々の姿が報じられた。

    そうと分かっているのにどうして酔っ払うのか。

    この素朴な疑問に対して、様々な地域の神話や伝承や歴史的事実をもとに著者が考察を寄せた’酔っ払い小史’ないしは’酔っ払いエピソード集’が本書であろう。この辺りはまえがきにも記されている。


    個人的には楽しく読めた。

    スマッシュヒットは〈7 聖書〉の章。冒頭で取り上げられるノアとロトの小話はひどい。というかキリスト教とワインは非常に密接な関係性にある事を初めて知った。いや、世界史の授業でブドウの木の話は聞いたことあったような?聖書って面白い本なのかもしれない。

    〈10 イスラムの飲酒〉p120、アル=ワリード2世の詩もとんでもない。王自ら「ぴちぴちの若い娘の頬を噛みたい」とはもはやベロンベロンのおじさんのうわごとのようである。

    〈15 オーストラリア〉も短編小説のような面白さ。次から次にろくでなしばかりが現れる。ニュー・サウス・ウェールズ軍団・第一〇二歩兵連隊。又の名をラム酒軍団の彼らは確かにひどい。


    …と、最後まで読んでもなぜ酔っ払うのか?という問いに筋道立った答えを見出すことは難しいが、見解のひとつとして’人類がもって生まれた矛盾性の発露による’という感じだろうか。
    酔っ払うとは’神’になること。
    ルールを遵守すべき素面の状態とルールから解放される酩酊の状態の間を行き来する切符の役割をアルコールが果たしているのかな。

    私もいつもいつでも’神’でありたい。


    2刷
    2021.11.27

  • 酒が好きな人はますます好きになり、「古代エジプトや古代ギリシャの連中に比べれば私の飲み方なんて可愛いもんよ」と開き直る口実ができる本。
    そして、酒が嫌いな人間にとっては「古今東西、酒飲みなんてろくなもんじゃない」ってますます酒が嫌いになると思われる本。

    それにしても,同じ「飲んだくれ」だとしても、みんなで祝祭的に楽しく呑んでハメを外す文化もあれば、マウント取ったり人を虐めたりする手段に酒宴を利用する文化,挙句の果てには支配者が周囲にヘベレケになるまで飲酒を強要して支配するという恐ろしい文化、酒の利用の仕方にはお国柄が出ていて面白かった。
    日本の会社の、めんどくさい宴会ルールやらお酌文化やらは儒教精神からきてるのかねぇ。

    アメリカの禁酒法が保守派から生まれたのではなく、進歩的なフェミニズムの産物だったってのは初めて知った。13年で撤廃されたとはいえ「当初の目的」は達成されたみたいだから意味はあったんだね。

    とても面白かったです。

  • 飲酒をテーマに、古代から近現代まで各地域をめぐる旅のような一冊。掲載されていない地域も、この人が書くとどう紹介されるか気になるね。
    私自身は下戸なんだけど、どうにも『酩酊』という状態に憧憬を抱いているんじゃないかと最近思うようになった。飲むだけで楽しくなれるってすごいじゃないか。
    閑話休題。この本に限ったことじゃないけれど、いわゆる通史的なものを読むと、ヨーロッパの各国ならびに宗教があかんものに見えてくるなぁ。

  • アルコールに関する小咄集。
    ウィットに富んだ語り口で読みやすい。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000053392  資料ID:0128823 請求番号:596.02/F39

  • 面白かったですね。酔っぱらいには必読かと思われます。「俺、お酒、好っきゃねんなあ~。なんでこう、いっつもいっつも、酔っぱらっちまうんだろうなあ、、、ぐは」って事を繰り返す人には、大変に為になる本ではなかろうか!?と勝手に思いますね。

    「あ、なんだ。俺の酔っ払いっぷりは、そんな悪くもないか。昔の人に比べりゃあ」と思うのか、
    「いやあ、、、昔っから、人間って、酔っ払ってきたんだねえ~。お酒、マジぱねえですね。楽しいなあ~」と思うのか、

    ま、感想は酔っ払いの度合いの具合によって、人それぞれ、だと、思います。ただ、、、お酒を嗜まない人、完全な下戸の人には、ちっとも、、、面白くないのではなかろうか?とも、思う次第です。

    歴史的に、「ああ人間って、こんなにも連綿と酔っ払ってきたのね。アホやなあ、、、ま、だからこそ、愛すべき感じだねえ~」って内容だと、ザックリ言うとそんな感じだと、思いますので、お酒を好きではないよ俺は、って人には、、、向かないんだろうなあ。多分。多分、そう思います。

    半分以上は、ホンマだと思う気持ちもあり、半分以上は、コレはネタでしょ?と笑いながら疑う気持ちもあり、話半分に思いながら、ビール片手に読むのがまさにジャスト!ってな本だとね、思うんですよね。いやしかし、お酒ってマジで素敵。

    訳文も、なんといいますか、ええ感じに軽妙洒脱、みたいな感じで、マーク・フォーサイズ氏の原文も、多分ね、相当にイカした文章だと思うんですが、篠儀直子さんの訳文、なんかね、ええ感じなんですよ。全然堅苦しくなくて、フワッとホワッとされてる感じで。このユルい感じを感じさせてくれるのって、嬉しいですよね。うん。名訳だと、思います。堅苦しい作品の文章は堅苦しく訳す。ヨッパラッチったよオイラ、な文章は、ヨッパラッチッた体で訳す。それでエエんではなかろうか、とね、思う次第ですね。

    日本の酒文化の歴史も、書いてもらえたら嬉しかったなあ、って思うんですけどね。それは無かったのが、残念無念でした。やっぱ俺、日本に住んでるし。日本という括りのこの島国で、この島国に住んできた人々が、歴史の流れの上で、どう酔っ払って、どうアホなことして、どう愛しく生きてきたのか、ってのをね、知りたいですね。堅苦しくないイメージで知りたいですよね。だって、お酒の話だもん。シャッチョコばった感じはイヤよ、ってなもんですね。

    英語の原題も、良いですねえ。「A SHORT HISTORY OF DRUNKENNESS」ですね。
    「SHORT」ってのが、良いんだなあ。「LONG」じゃないよ、っていうね。短くパパッといくよ、ってなね。ま、十分シッカリとした内容の、長い本である、とは言えるのですが、テイとしては「SHORT HISTORY」なのだ。

    だって、酒の席だもん。長い話は無理なんよね。だって俺ら、酔っ払ってんじゃん?短く行こうぜパパッと行こうぜ後は飲もうぜガハハだぜ、っていうね。このタイトルの「SHORT」に込められた意味は、そんな酔っ払いの愛すべき戯言、だとね、勝手に解釈しました。素敵だなあ~。

  •  本書は、人々がアルコールとどのように付き合ってきたかについての民俗学的な小史であり、様々な時代と場所でアルコールがどういった位置づけだったのかを偉人たちや町人たちのエピソード、時には神話から知ることができる。
     アルコールは神々からの恵みとして、また人間関係の潤滑剤として、あるいは国家権力が国民を支配する手段として用いられてきた。人々はアルコールが持つ様々な性質を、その生活様式に合わせて利用してきた。国や地域によって好まれる酒の種類が異なることも興味深い。場所の違いを無視して大まかに自分なりの解釈をすると、古代、アルコールは全ての人々にとっての神からの恵みであったが、徐々に男たち(特にその地域でのマジョリティである民族や白人男性)が力を誇示したり欲望を開放するために利用されるようになり、近代には国の税収を増やすため(戦争には金がかかる)、女性の社会参加とともにアルコールはすべての成人のものとなった。ともあれ、ヒトの誕生以前からアルコールは存在し、人類の歴史はアルコールの歴史でもある。
     酒の席で所かまわず嘔吐する人には、(おっ、古代エジプト式か。なかなかやるな。)と思えるし、「俺の酒が飲めないのか」と激怒する上司を心の中でイワン雷帝と呼ぶことにする。それだけでも有意義な書だったと感じる。

  • 人類が定着生活を始めたのは、酒を作るためだと言う、もう、シュメールから禁酒法時代まで、ダメ人間について語る、エッセイと言って良いのか。

    面白くなくはないんだが、途中から面倒くさくなったのも事実。

    酒飲まない人には、全く意味がない。

  • 翻訳者のクスクス笑う声が聞こえそうな軽妙な語り口が魅力的。
    そして翻訳者が面白い魅力的と思ったものがそのまま読んだ人に伝わってきます。
    とても楽しい、お酒が飲みたくなる一冊です。

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