酔っぱらいの歴史

  • 青土社 (2018年12月20日発売)
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感想 : 15

なぜ酒を飲むのか。飲まずにおれないのか。

酒を嗜む人であれば、年に3回くらいはハメを外して痛飲してしまい、その度に翌日「もう酒は飲みません神様、どうか元に戻して」と呻きながら頭痛・吐き気と闘う経験があるだろう。

またごく最近でいえば、コロナ期間で飲食店が休業している間も路上で酒を飲み酔っ払う老若男女さまざまな人々の姿が報じられた。

そうと分かっているのにどうして酔っ払うのか。

この素朴な疑問に対して、様々な地域の神話や伝承や歴史的事実をもとに著者が考察を寄せた’酔っ払い小史’ないしは’酔っ払いエピソード集’が本書であろう。この辺りはまえがきにも記されている。


個人的には楽しく読めた。

スマッシュヒットは〈7 聖書〉の章。冒頭で取り上げられるノアとロトの小話はひどい。というかキリスト教とワインは非常に密接な関係性にある事を初めて知った。いや、世界史の授業でブドウの木の話は聞いたことあったような?聖書って面白い本なのかもしれない。

〈10 イスラムの飲酒〉p120、アル=ワリード2世の詩もとんでもない。王自ら「ぴちぴちの若い娘の頬を噛みたい」とはもはやベロンベロンのおじさんのうわごとのようである。

〈15 オーストラリア〉も短編小説のような面白さ。次から次にろくでなしばかりが現れる。ニュー・サウス・ウェールズ軍団・第一〇二歩兵連隊。又の名をラム酒軍団の彼らは確かにひどい。


…と、最後まで読んでもなぜ酔っ払うのか?という問いに筋道立った答えを見出すことは難しいが、見解のひとつとして’人類がもって生まれた矛盾性の発露による’という感じだろうか。
酔っ払うとは’神’になること。
ルールを遵守すべき素面の状態とルールから解放される酩酊の状態の間を行き来する切符の役割をアルコールが果たしているのかな。

私もいつもいつでも’神’でありたい。


2刷
2021.11.27

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月27日
読了日 : 2021年11月26日
本棚登録日 : 2021年11月26日

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