津山三十人殺し: 村の秀才青年はなぜ凶行に及んだか

著者 :
  • 草思社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794201331

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    ── 筑波 昭《津山三十人殺し ~ 村の秀才青年はなぜ凶行に及んだか 19810101 草思社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4794201338
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20030521 津山事件 ~ 30+1人 ~
     
    (20181031)
     

  • 横溝正史の八つ墓村のモデルとなった津山事件。犯人 都井睦夫が幼少期からどのような生活を送り、前代未聞の凶行を起こすに至ったのか 警察資料を中心とした多くの資料から、仔細に問い明かしていく。

    鬼気迫る事件描写で恐怖情景が脳裏に浮かんでくる。

  • そもそも私がこの本を読もうとしたきっかけは、T.カポーティの「冷血」にあった。
    「冷血」では、アメリカの閑静な一地方で起きた凄惨な殺人事件について“ノンフィクション・ノヴェル”という手法により迫ることで、人間誰もがもつ心の奥底に潜む闇の性情が、種々の要因が重なってしまうことで、ほんのささいなきっかけによって暴発的な犯意が誘発され、非情で悲惨な犯罪へと表出する過程が描写されていた。

    つまり、冷血の手法を、日本人の事件に当てはめ、日本人の心情に写し取ることで、動かし難い人間の負のドス黒い心情というものが、日本に生きる私たちの身近にも存在するということを否が応でも突き付けてくれることを期待していたのだが…

    この事件は冷血の事件と異なり犯人の自殺により公判が開かれておらず、また、著者の取材も犯行から数十年経過した後のものである。そこから類推するに、ほんの少し残されたこの事件についての資料に、当時起こった全く別のエピソードや著者の興味本位による創造が切り貼りされていると考えるほうが腑に落ちる。逆にこの本の記述をすべてリアルに捉えてしまうと、ともすればこの事件を遠い時代の話として受け止めてしまい、今の私たちの生活圏に、この事件の犯人と同じ性情を抱いている人間がウヨウヨいるという事実を想像できないのではと考えてしまう。
    つまりこの事件を、当時の日本の陰鬱で閉鎖的な貧しい山村において、一人の特異な人間によって起こされたというように「特殊化」するのは、本質を見誤った発想だということだ。

    私は犯人が犯行前にゲートルをきちんと巻くなどの身支度を整えていく部分の記述に注目する。犯行が起こった昭和13年は、日本と中国との戦闘が泥沼化したころ。
    つまり、当時の中国大陸では、都井と同じようにゲートルを巻きながら戦意(殺意)を高め、中国との戦闘に当たっていた日本人はそれこそ数えきれないほどいたはずで、都井だけが特別に狂気だったという単純な話ではないのではないか。

    ちなみに、火野葦平の「麦と兵隊」が発表されたのは、この事件が起こったのと同じ昭和13年。麦と兵隊を読めば、この事件と同時代に、30人どころかもっと多くの中国人を殺していた日本人がいたと考えるのが自然だと思う。

    だから、この本が「冷血」のように普遍性にまで迫りきれていないのが残念でならない。両親を早くに亡くした後の祖母の溺愛や、都井個人の病歴や性愛遍歴などの特殊事情の影響ももちろんあるだろうけど、都井の個人的な資質にのみ犯行原因を集約させるのではなく、当時の日本人には、戦争などの時代背景によって、このような狂気が“誰もに”少なからずあって、都井は何かのきっかけでそれが暴発したのだということ、そして、戦争状態ではないものの、超競争社会という、ある意味似たような状況下を生きる現代の私たちも含めて、その暴発を常に抑えてコントロールしていないと、とんでもない結果を誘発する危険を“誰もが”持っているのだ、ということを肝に銘じておくべきだ。
    (2013/8/13)

  • 昭和13年、日本で本当にあった話。
    コレをベースにして横溝正史氏の『八つ墓村』がある。

    第一部と第二部に分かれている。
    第一部は事件のあらまし、警察の生き延びた人からの事情聴取。
    第二部は『都井睦夫』の出生から自殺までの克明な記録。
    犯人たる都井は、自殺を遂げているが3通の遺書を残しているので、推察の域を出ないところは ある。
    けれど、かなり克明に期されている。

    両親をまだ認識できぬ時に失っているので、祖母に育てられた。
    その祖母は非常に可愛がりすぎた。
    今でいえば『モンペア』の一種。
    そのモンペアに大事に抱え込まれながら育った 秀才 は己の世界に没頭していく。
    うーん。
    本人否定しているけど、彼は本当の精神障害を持ってたんだろうと思われる。
    否定すれば否定するほど強まる疑惑。

    勝手な被害妄想、疎外感。
    しかし。
    彼の書いていた『物語』はとても楽しいと思う。
    最初の章とlastは載っているが、全文読みたいと思う。
    当時にしてはかなりの冒険活劇だと思うし。

    だからといって、人を殺しても良いという結果には繋がらない。

    この『筑波昭』氏の推理小説はペンネーム『黒木曜之助』氏。

  • 題材は興味深いが書き方が気に入らない。
    古いから仕方ないといえば仕方ないんだけど、自分の倫理だけで物事を見る目線が鼻につく。

    犯人の言葉は、自己顕示欲のかたまりのようで延々と綴られるにもかかわらずどこにも出口がない。
    ぐるぐる回るばかりで言葉が思考の助けにならない。
    ただ言葉を吐き出すだけで、コミュニケーション(を通じた現状打破のための)道具になっていない。変えられるという発想がない。
    それが悲しい。

  • 祖母は都井の独立心を阻止した。
    元凶はここか。

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