本の愉しみ、書棚の悩み

  • 草思社
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本棚登録 : 98
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794213334

作品紹介・あらすじ

本が好きな人にとって、本はたんなるモノではない。頁の端がそっと折ってあったり、忘れられた書き込みを見つけた時のほろ苦さ。父の蔵書で積み木遊びをした記憶のなつかしさ。どの本にも言いしれぬ愛着があるものだ。色褪せた背表紙や、シェイクスピアの隣にジェームズ・ボンドが並ぶ書棚は、過去の時の流れを映し出す。自分だけのお気に入りの本たちが並んでいるだけで、ちょっとうれしい。それを収納する場所があれば、もっといいのだけれど。無類の本好きを自認する著者が、本好きゆえの悩みと愉しさをつづる珠玉のエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 「ある種の子どもは、深い眠りからさめるごとく本から目をさます」

    前書きにある、ひたすら本の世界に没頭する子どものことだ。
    たぶん皆さんもそうだったことだろう。
    著者であるアン・ファディマンもそのひとり。
    曽祖父から祖父へ、祖父から両親へと受け継がれた7千冊の本の中で暮らしてきた。
    そんな本との出会いを語る、14編のエッセイ集。
    本の紹介や批評ではなく、ひたすら本を愛してきたライフヒストリーだ。

    結婚して5年経って、お互いの蔵書をまとめようとした話。
    子どもに読み聞かせるだけでなく、夫婦でも朗読しあう。
    「現場での読書」を大切にするふたりは本の舞台まで出向き、当該箇所を朗読する。
    夫が妻に自作の本を贈るとき「遊び紙」に自筆で「愛する妻へ」と書いた話。今もそれが宝物であるという。
    特に素敵なのは、彼女への誕生日プレゼントの話。
    こっそり見つけておいた古本屋に夫が妻を連れて行く場面だ。
    そこで選んだ9キロの古本は「半キロの上等なキャビアの9倍も美味である」と著者は言う。
    これは本当に良く分かる。あまりにも分かるので小さな拍手までした。

    本を読むというのは個人的な行為そのものだ。
    しかし本書を読むと、人と人を結び付けるものでもあることに気がつく。
    同じ本を読んでいたり、同じ箇所に心を動かされた話などをすると、急に親しみを感じるのはよくあることで、活字の世界で同体験をしているのだ。

    両親がともに作家で、7千冊の本を自由に読みながら育ったという著者。
    本書の中にも未読の本や未知の作家たちが続々と登場する。巻末の人名索引の多さ!
    デフォルトから異なるのだから仕方がないが、もう少し読書の素地があればより愉しめたのにと、たまらなく残念だ。

    それでも、これが「癒し」というものなのだろう。
    「癒し」など求めたことがないので分からないが、読んでいる間ずうっとクスクス・・ふふふ・・と頬がゆるみっぱなしだった。
    全身で本を愛し、本への愛を語る魅力的な本。
    「本棚の歴史」の中に本書が何度も登場し、長い間気になっていた。
    今回ようやく読むことが出来た。
    「本の愉しみ」を与えてもらったのは、私の方である。これは手元に置きたい。

    • 夜型さん
      nejidonさん
      本日の一冊です。
      どんなふうに愉しまれてきたのか、確かめてみてください。
      「ウサギとカメ」の読書文化史: イソップ...
      nejidonさん
      本日の一冊です。
      どんなふうに愉しまれてきたのか、確かめてみてください。
      「ウサギとカメ」の読書文化史: イソップ寓話の受容と「競争」
      2021/01/19
    • nejidonさん
      ざざあるいは電気羊さん (^^♪
      お越しいただいてありがとうございます!
      ねね?この表現がなんともいいですよね。
      「なぜわたしがジョー...
      ざざあるいは電気羊さん (^^♪
      お越しいただいてありがとうございます!
      ねね?この表現がなんともいいですよね。
      「なぜわたしがジョージと結婚したのか、これでお分かりいただけると思う」
      ・・という言葉が続きます。
      内心では嵐のような拍手でした(笑)
      2021/01/19
    • nejidonさん
      夜型さん♪
      はい、ありがとうございます!
      ウサギとカメが教科書採用だったこともあるのですねぇ。
      どんな授業展開だったのでしょう?
      興...
      夜型さん♪
      はい、ありがとうございます!
      ウサギとカメが教科書採用だったこともあるのですねぇ。
      どんな授業展開だったのでしょう?
      興味津々です。
      しかしいつもどうやって探してこられるのか、夜型さんて不思議です(*'▽')
      2021/01/19
  • 本を愛する著者の本についてのエッセイ。
    この本を読んでアン・ファディマンさんのことがとても好きになった。
    共感したり、驚いたり、大好きな友人の話を聞いているかのような楽しい時間を過ごせた。

    例えば「蔵書の結婚」。
    別々の書棚を使っていた夫婦の蔵書をまとめるという一大プロジェクト。
    分類方法や並べ方、重複している本はどちらの本を残すかも決めなきゃいけない。
    相手の意見を尊重しながらも譲れない点は主張する2人のやりとりと、残す本の決め方に驚いた。
    そして私流のこだわりが少しずつゆるやかになっていくという話も素敵だなと感じた。

    そして「本を大事に」に書かれている本の愛し方についても、何に驚けばよいのやら、人によってこんなにも考え方が違うものだとは!
    彼女の言うところの「騎士道的恋愛の実践者」は、本をテーブルの上に伏せておくことも許さないらしい。
    そして「肉欲的恋愛の実践者」にはページを破りとって食べる強者までいたとか。
    …わぁお。すっごい。

    私はそのどちらでもなく、中途半端に「騎士道的恋愛の実践者」寄りかもしれない(本に書きこみをしないし、破ることもないから)。
    昔は親に買ってもらった漫画に色鉛筆で好きな色を塗るくらいのことは平気でしていた記憶がある。(特にお気に入りのページは切り取っていた可能性も…)
    いつからただ読むだけになったんだろう?
    ただ読むだけ、なんて考えないくらい読むことが楽しかったのだけど、ファディマンさんの文章を読んでいると書きこみのある本を読むこともすごく楽しそうなのだ。

    今までは当たり前だった本とのつき合い方をちょっと考え直したくなってしまった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「今までは当たり前だった本とのつき合い方を」
      積読に占拠された部屋を何とかしなきゃ、、、←ダメダメの見本ですね。
      とっても面白そうなので...
      「今までは当たり前だった本とのつき合い方を」
      積読に占拠された部屋を何とかしなきゃ、、、←ダメダメの見本ですね。
      とっても面白そうなので、他にどんな著書があるのかチェックしたら、「At Large and At Small」と言うのがあって、此方も面白そうです(邦訳出ないかな)
      2014/04/15
    • takanatsuさん
      「積読に占拠された部屋を何とかしなきゃ、、、←ダメダメの見本ですね。」
      分かります!私の部屋の一角も…(ガタガタ)。
      「「At Larg...
      「積読に占拠された部屋を何とかしなきゃ、、、←ダメダメの見本ですね。」
      分かります!私の部屋の一角も…(ガタガタ)。
      「「At Large and At Small」と言うのがあって、此方も面白そうです(邦訳出ないかな)」
      装丁が素敵な本ですね!
      内容紹介の英文はあまりきちんと解読できませんでしたが(涙)、私の好きなタイプのエッセイの予感がしました。
      邦訳出たら読みたいです。(英文を解読する自信がない…)
      2014/04/16
  • 本書の表題が、全てを表している。本を読むことの楽しさや、蔵書の整理の大変さを凡人のスケールを超えた次元で、楽しげに日常的に過ごしている人のエッセイでした。
    「現場で読む」が私のお気に入り。その書籍の舞台現場で、しかも原語で読めたらそれは芳醇な時間を過ごせることでしょう。例えば、夏目漱石さんの『坊っちゃん』を四国の松山で読むようなもの。道後温泉を訪れ、坊っちゃんに思いを馳せる。こんな想像をしてしまいました。海外が舞台の場合は原語で読むことは、努力が必要で簡単ではなさそうなので、想像できませんでした。
    「遊び紙に記されたことば」では、献呈の辞を記す場所にルールがあることを教えてくれます。扉(表題紙)に書いて良いのは著者だけなのだそうだ。
    「首相の本の帝国」も印象に残ります。
    読み返すたびに、味わい深く、楽しめそうな本なので、手元においておきます。

  • 本をいかに愛しているか。
    読書をいかに楽しんでいるか。
    言葉を紡いできた作家たちを、いかに尊敬しているか、が、伝わってくるエッセイ。
    そして、本で繋がる家族がいることが、とても幸せに思っていることも。
    それにしても、騎士道的恋愛主義者な本の愛しかた、なんていう考え方には、笑った。

  • 本への愛情

    日常生活の中での本にまつわるエトセトラを描いている。
    夫との蔵書統合や、幼い頃の思い出、古書を巡る思いなどなど。
    著者は非常な読書家であり、愛書家でもある(そして、活字中毒でもある)。
    それは貴重なものとしてショーケースに飾るのではなく、余白への書き込みや積み木代わりなど本を「使う」ことでより愛を深めていく。

    きっと、彼女に育てられた子どもたちも自然に読書家になっていくのだろう。
    読書が高尚な嗜みではなく、中毒的な趣味として。

  • 原題は“EX LIBRIS : Confesssinons of a Common Reader”。本を読む、とんがり帽子をかぶった天使の背中の丸まりぐあいがなんかいいです。

    著者・アンさんの本にまみれた生活と、本そのものについてのエッセイ。まず、「蔵書の結婚」に軽く驚いた。我が家では昔も今も本棚は各自単位なので、「蔵書をまとめる」悩みは発生しない(はず)。「それって、そんなに大層なこと?」とツッコミを入れつつ読んだけれど、あくまでも「結婚」であって、片づけマインド由来ではないことがポイントなのだろう。それにしても、アンさんとは、極地探検の本が好きという点でお友達になれそうな気がしている。そうそう、スコットが最後までつけていた日記と遺した手紙は、涙なくしては読めません!

    アンさんは「読む人」であるし、だからこれだけ微に入り細をうがった本との付き合いをお持ちなんだけれども、やはり「書く人」なんだなあと思う。本の遊び紙に記された、あるいは自分が記す献辞に愛着を持ち、長年愛用した執筆用の万年筆(元カレからのプレゼントではあるけれど)との生き別れを悲しみ、同じモデルを探し求める。書かれた本だけでなく、ことば全般に対する興味と愛情にあふれたかたなのだろう。だから、「日の下に新しいものはない」の章のような、ユーモアとスパイシーな皮肉の効いた文章を書けるのだと思う。私は読むのも書くのも好きだけれど、本とここまで密な付き合いをしているという感覚はない。

    アンさんと本の関係は日本語の「親密」じゃなくて、まさに英語の“intimate”だなと思った。この語は、「いつも手に届くところに置いてある」ような距離の「近さ、親しさ」というよりは、「下着」や「まあ、そういう関係」という、ナマっぽい距離を指すことが結構ある。別にエッセイからそういう生々しさを感じるわけではないけれど、皮膚的な距離感が明らかに違う。「血肉とする」ってこういうことなんだろうな…と思いながらページをめくった。記された情報を吸い取るように読む、自分の読みかたは無粋なのかもしれないなあ…という苦笑いとともに。

    全体的にみれば、大仰な書物愛というのはほとんどなくて、知的でじんわりと温かい書物愛にあふれた本だった。読み終えたあと、最後の既刊案内ページのすみっこに、「2004.11.⑧」という書きこみがあるのを見つけた。日付かな?そうだとしたら、本の奥付け(2004年7月の初版)から考えると、この本を扱っていた古本屋さんではなく、たぶん最初の持ち主さんの書き込みのような気もする。丸囲みの8がものすごく気になるのですが、この謎をどなたかご存じでしたら、こそっとお教えください。

  • タイヘンです!
    この本はもっと読まれなければっ。
    本好きは、至急探して読むべし。

  • 同作者の『精霊に捕まって倒れる』に続いて読んだ本。全然違って両方良い!特に「蔵書の結婚」がお気に入り。パートナーと暮らす本好きな人たちみんなにお勧めしている一冊。

  • <内 容>
     本好きの家庭で育ち、本好きの夫を持った著者による、本大好きエッセイ14本。同居6年、結婚5年目にしてやっとお互いの蔵書をまとめる決心をした「蔵書の結婚」、献辞について考える「遊び紙に記されたことば」など。巻末に書名索引と人名索引あり。

    <ひとことコメント>
     原題は『蔵書票:一般読者の告白』。ちなみに、新潟県の弥彦村には、「ロマンの泉美術館」という蔵書票の美術館があります。なかなか怪しげな美術館です。
    原題“Ex Libris: Confessions of a Common Reader” 訳:相原真理子

  • p47まで読んで返却した。

    この本の中で知った人物や本
    p3
    ジョン・マッギャハン

    p5
    ヴァージニア・ウルフ『一般読者』

    p41
    バイロン・ドーベル

    メアリ・ウルストンクラフト

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著者プロフィール

作家、エッセイスト、編集者。1953年、ニューヨーク市生まれ。初の著書である本作The Spirit Catches You and You Fall Down(Farrar Straus & Giroux, 1997)で高い評価を得て、全米批評家協会賞(National Book Critics Circle Award)をノンフィクション部門で受賞(1997年)。本作はその後、米国の医学、看護学、文化人類学など幅広い分野の学生の課題図書となり、刊行から22年後の2019年にSlate誌の「この四半世紀の最も優れたノンフィクション50作」に選ばれている。編集者としては1998年よりファイベータカッパ協会発行の雑誌The American Scholarの編集長を6年半務める。ニコルソン・ベイカー、J・M・クッツェー、オリバー・サックス、ジョン・アップダイクほかの作家たちの出版に携わった。2005年、イェール大学初の終身待遇のライター・イン・レジデンスとなり、現在まで同大学を拠点に活動。ほかの著書に、Ex Libris(1998)〔相原真理子訳『本の愉しみ、書棚の悩み』草思社〕ほか。

「2021年 『精霊に捕まって倒れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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