文庫 他人をほめる人、けなす人 (草思社文庫 ア 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218162

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;イタリアの著名な社会学者です。専門の社会学の他に、哲学・宗教・文学等にもわたる広範な教養人です。氏は単に博識であるだけでなく、人生の機微に通じた社会学者と言われています。多くの著作がイタリアでベストセラーとなり、「恋愛論」「友情論」等、多くの国で翻訳されています。
    2.本書;著者が、イタリアの代表的な新聞に、連載小説のように書ふき続けたエッセイを纏めた本です。第1章(日常的に出会う人)~第5章(自分らしく生きる人)の構成で、57項目あります。20年程前に発刊された翻訳本で、身近にいる人々の深層心理や行動を分析した本書は、当時の時代背景を受けて、発売年にミリオンセラーとなりました。
    3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
    (1)「第3章;社会を支える人」の中の、“真の教養がある人”より、「博識者は人生・生活から学ばず、もっぱら書物から学ぶ、彼は自分の目で見ることが出来ず、自分の頭で判断することが出来ずに、他人がすでに述べたことをひたすら繰返すだけである。・・・真の大いなる教養は人生の現実に密着しており、・・・大いなる知識の鞄を手にして、人間と様々の出来事に接近したからである」
    ●感想⇒博識をひけらかす人を時々見かけます。企業内にも、現場の苦労も知らずに、机上の数字(業績)にうつつを抜かす輩がいます。こういう人の言葉には重みがなく、学ぶ価値は少しもありません。私は、現場好きな本田さん(ホンダ創業者)の言動に魅力を感じます。
    (2)「第4章;よりよく生きる人」の中の、“成功だけを求める人”より、「自分の仕事に集中するのではなく、競争者、成功者の事ばかり考え、その人々に羨望を抱いている者は、・・・自分のエネルギーを浪費するだけでなく、自分が盲目になってしまう。・・・仕事がなんであるにせよ、・・・その仕事に全力を傾け、それを完璧に行えるように努める事だ」
    ●感想⇒人はともすれば、成功者を羨ましく思うことがある。しかし、羨んでも現状は変わらない。自分の能力を信じて、頑張る事しか道はない。長い人生の中では、窮すれば通ずと言うが、前向きに生きれば、良い出会いやチャンスが必ず訪れるでしょう。
    (3)「第5章;自分らしく生きる人」の中の、“高貴な魂を持つ人” より、「高貴な魂の人は、自分を過大に評価することなどなく、学ぶ事を知っており、謙虚である。高貴な魂は、相手を尊敬し、その価値と尊厳を認める」
    ●感想⇒世間には尊敬に値する人は沢山います。私のような凡人には、高貴な魂など毛頭なく、そうした人の足元にも及びません。但し、学び続け、謙虚に振舞う気持ちと感謝(尊敬)の姿勢は、持ち続けたいと思います。
    4.まとめ;レビューを書くに当って、本書を再読しました。日本とイタリアという国情の違いがあるものの、内容は少しも色褪せていません。世界では、コロナが蔓延し続けています。人間関係にも影響し、人々は暗中模索しているでしょう。こうした情勢の中で、人は豊かな生活を送る為に、良い人間関係を築きたいと望んでいると思います。本書は、学校や勤め先での人間関係の煩瑣に疲れた時などに、有益な助言を与えてくれます。前述3.の3点以外にも、「忍耐を習得できる人(⇒忍耐或いは我慢強さは根本的な美徳の一つ)」「情熱的に夢見る人(⇒欲求と情熱の重要性)」・・・等々、ことだまのアドバイスに溢れています。  ( 以 上 )

  • 他人をほめる人、けなす人
    著:フランチェスコ・アルベローニ
    訳:大久保 昭男
    草思社文庫 ア 1 1

    人をテーマとした、「べき」論のエッセイ
    原題 オプティミズム つまり、楽天主義

    気になったのは以下です

    ■日常的に出会う人

    ・オプティミズムとペシミズムは、一見したところでは、本質的には同質のもので
     しかも反対の長所と短所とをそなえているもののように思われる
    ・オプティミストは、より行動的、積極的である。けれども、困難を実際よりも小さくみなし、危険は路上で思いがけないリスクを冒すことがある
    ・これに反して、ペシミストのほうは必要以上に慎重で、多くの好機をむざむざ逃してしまうことにもなるやすい
    ・要するに、両者を適度にあわせたところが理想のように思われる。

    ・人生は、思いがけない、しかも予測不能な新たな情況へのたえざる適応のプロセスである
    ・生き抜くためには、未知の小道にもあえて立ち入ることができなくてはならない
    ・きわめて深刻な契機となるのは、飢えであり、失職である
    ・もう一つの契機は恋愛である、第三の契機は何かの理想である

    ・現代の社会では、ただ一つの役割を果たすだけですますことができるのは幼児だけである。
    ・大人はすべて、いくつもの役割を果たさなければならない。
    ・ある人物は、医師であるだけでなく、息子であり、父であり、夫であり、友人であり、親戚であり、同僚であり、何かの共同体の、どこかの政党あるいは、クラブのメンバーである

    ■人の上に立とうとする人

    ・権力というものは、たとえ獲得しても、けっして決定的なものではありえない。たえず獲得しなおすことが必要である

    ・独断的な人、狂信者、頑固者などは、極度に非論理的であることが多い。しかし、彼らが抱いている貧しい考えをくり返すその執拗さと、あらゆる論理に対抗する鈍感さとは、他の人びとをしばしば辟易させる
    ・反対に、聡明で分別のある人物は、一貫性をもち、理にかなった行動をし、熟考をへた思想をもっているのが普通である。その上、自分の知識、能力の限界も心得ており、深く知らないことについては、口にしない

    ■社会を支える人

    ・誰かが、適任でないポストを占めるときどういうことがおきるのか
    ・第1のタイプ、自分の無能力を悟らず、それを認めようともせず、あるいは認めることができない
     このタイプが最も多くみられ、しかも大きい害をもたらす
    ・第2のタイプ、それを容認する
    ・第3のタイプ、状況に立ち向かうのに必要な資質を自分がもっていないことに気づくことができる人物
     妬んでなどはいられず、援助をもとめる
     自分のつまずきを事実として受け入れ、自身仕事を変えようとする勇気をもたなければならない
     ⇒変えることができるという柔軟性もまた、一つの能力である

    ・専門化とは
     自分の関心を一つの分野に限定し、それに関することだけをきちんとやることを意味する
     実際は ⇒ たえざる深化であり、不断の刷新である
     変化することなしに、そのままの自分でいることは誰にもできない

    ・大きな組織で求められるのは
     かつて 正格さ、細心さ、系統性、秩序尊重、従順さ、慎重さ
     今日は 進取的精神、創造性、企画性

    ・マネージャーに必要な二面性
     創造的であって、新しい問題、新しい解決策を究明しなければならない
     一方で、いつでも断念できる用意もなくてはならない

     野心的で、競争心が強くなければならない
     一方で、仲間と下僚と強調することも忘れてはならない

     合理的で冷静でなければならず、厳正な方式・方法を策定しなけれならない
     他方で、新しいものをとらえることに巧みで、膨大なデータから重要なものを見分けることができる

    ■よりよく生きる人

    ・忍耐は根本的な美徳の一つである
    ・忍耐は習得するものであり、強い意志の力でもって作り上げるものである

    ・挑戦し続けることが出来る人:最良のものをつくりだし、優れた企画を立て、不可能と思える事業に挑むべく人びとを駆り立てるのは、社会環境、文化、人間関係でなければならない

    ・一時の成功に溺れることなく、尊大にならず、長持ちできる人:ふつうの人であり続け、自分を他の人びとと同じに見続けるられる者だけである。そして、成功とは、多くの人の支援を受けたおかげであることを理解できる者のみである

    ■自分らしく生きる人

    ・道徳が与えるのは、権利ではなく、義務のみである

    ・誰しも、誤って、自分の真の心からの使命に反する。しかし、そのあとすぐに、疑念にとらわれ、それに気づき、自分の過ちを正すものである。一貫性を失わず、徹底して勇気を保たなければならない

    目次
    日常的に出会う人
    人の上に立とうとする人
    社会を支える人
    よりよく生きる人
    自分らしく生きる人
    訳者あとがき

    ISBN:9784794218162
    出版社:草思社
    判型:文庫
    ページ数:272ページ
    定価:650円(本体)
    2011年04月25日第1刷発行

  • 会社の同僚が貸してくれたので読んで見た。タイトルは「他人をほめる人、けなす人」となっているが、原題は「オプティミスト」だそうだ。

    本書は、新聞に掲載された短編エッセイを編集したもののようで、どちらかというとコミュニケーションを行う上で、知っておいた方がよい人物タイプについて述べられた本のように思う。

    大タイトルは次の流れ。
    「日常的に出会う人」
    「人の上に立とうとする人」
    「社会を支える人」
    「よりよく生きる人」
    「自分らしく生きる人」

    最初の「日常的に出会う人」では、一般論としての人物タイプについて述べている。

    次の「人の上に立とうとする人」では、会社など組織人としての人物タイプについて述べている。

    3番目の「社会を支える人」は、社会人としての人物タイプについて述べていると思われる。

    4番目の「よりよく生きる人」では、人間的な向上を目指すためのヒントを、最後の「自分らしく生きる人」では、完成度の高い人格モデルを示しているように思われる。

    新聞での第1回目の連載が「楽観的な人、悲観的な人」であった。この連載の導入として、楽観主義(オプティミスト)と、悲観主義(ペシミスト)との特徴が示されている。前者がプラスイメージ、後者がマイナスイメージである。

    そして、その次の連載からは、世に思い当たるタイプを登場させて、それが楽観主義によるのか悲観主義によるものなのかを関係づけしながら、話を展開していく。次の「皮肉っぽい人、熱狂する人」では、「皮肉っぽい」のは悲観主義の否定的で、人を信じられない特徴からくるタイプと述べる。逆に「熱狂する人」は楽観主義の特徴からくるタイプであると述べる。

    以下、「陰口をたたく人」「浪費する人」「習慣を変えない人」「ニヒルな人」「他人を認めない人」「自分の弱さを利用する人」「自分をひけらかす人」「はてしなく話す人」「未熟な人」と、世に思い当たるタイプを列挙してくる。

    読者は、「これは自分のこと?」とか、「これはあいつのこと?」とか、胸にてを当てたり、顔を思いうかべながら読み進めていくことになる。

    「人の上に立とうとする人」の章の第一番目は、「他人を指導する人」に、「現実にはのん気に習慣に頼っていられるような活動などどこにもない」と厳しい指摘がある。リーダーシップをとろうと思えば、のん気な時間をもとうなんて諦めろと。

    リーダーには厳しさが求められる。自分のことだけ考えてるんじゃだめだよということを様々なタイプを通じて述べていく。

    「社会を変える人」の章の最後には、「真の教養がある人」という項目がある。ここでは、フロイトやアドラーやユングが独学の心理洞察家であると同様に、巷にいるマンションの女性管理人もまたその分野の心理洞察家であると述べる。

    ここで書物から学ぶものと体験で学ぶものとの差を述べている。本から学んだ知識よりも、実際に女性管理人が人と接していく体験の中で学ぶもののほうが得られる教養の質が高いということだ。

    次の「よりよく生きる人」の章の「真に旅する人」の視点も興味深かった。

    旅の真の効用は、「そこで出会う異なる世界からだけでなく、我々のいつもの自分からの離脱から生じる」「新しい事物に接することよりも、すべてのものを異なる眼で見るのを学ぶことから生じる」

    出口治明氏がご自身の教養の源として、「本を読むこと」「人と会うこと」「旅をすること」の3つをあげられるが、やはり人格形成には、この3つの要素は大きいのだなと再認識した。

    最終章へ向かうにつれて、「覚悟すべきこと」「自身への戒め的なこと」が示されていく。

    「羨望に支配されない」「危機を受け入れる」「先入観にとらわれない」「正体を見破る」「高貴な魂を持つ」「自分の過ち気付ける」等。

    本書のタイトルどおり、自然体で「他人をほめる」ことができるようになれば、オプティミストに近づけているのかもしれない。逆に心の中に「けなす」気持ちが渦巻いているならば、まだ自身の軸足がペシミストに傾いていると反省すべきなのかもしれない。

  • いいことも書いてあるのだけど(特に後半)、何せ翻訳が読みづらくて、日本語として不自然だったり、意味が取れないところが多すぎる。学校だったら✖もらっちゃうレベルじゃない?もったいないと思う。

  • レビューは散々な感じがするのだが、実際に読んでみたらそれほど酷いわけではない。

    パーソナリティ(など)を分類する試みはいろいろあるのだが、この本の場合、行動や思考の個人差を「XXな人」という典型的なタイプに分類
するというあたりは淡々としていていい。
    ただ類型論のようにまとめるにはちょっと「XXな人」の種類が多すぎな気もするけど。

    読み物として十分におもしろい。自問自答しつつ他者の振る舞いについても考える人向けか。

    なぜレビューの点が悪いのかちょっと不思議。

  • 他人をほめる人けなす人というタイトルだが
    他にも○○な人ということで様々な人格やせいかについてを述べている。
    様々なパターンを言っているので心理学っぽい
    といってもホントにだらだらと述べているだけで、よく理解できない… 著者が外国のかたでよくあるパターンだが文章も読みにくくなかなか進まない…
    外国

  • 非常に分かりにくい本だった。おそらく翻訳家に力量不足ということもあるのだろうが、日本語が心に伝わってこない。
    むしろ英語の原文を読んだ方がまだ良い気がする。
    内容も哲学チックでいまいちでした。
    例えば、
    「旅の真の効用は、そこで出会う異なる世界からではなく、我われのいつもの自分からの離脱から生じる。肝心なのは、新しい事物に接することよりも、すべてのものを異なる目で見るのを学ぶことなのである。」
    なんか大学受験の現代文のようだと感じた。

  • 新聞連載されていたものを書籍にしたものらしく、一つ一つ短くまとまっていて読みやすい。
    「いるいるこんな人」と思ったり、これは自分に当てはまってるなと反省するところも。
    独りよがりになっている時、周囲にイライラしている時なんかに読むと良いかもしれない。

  • 本屋でおすすめされていたので手に取った。
    前半は人の良くない特徴、後半は良い特徴を一言で述べ例示している。例えば習慣を変えない人、他人を認めない人、だらしない人、自分を重要に見せたがる人、など。会社の困ったさんを思い浮かべることもあるが、自分に刺さる内容も多く、傷つきすぎて読み進められない。元々イタリアの新聞連載だったそうなので、そうした読み方ならよかったのかもしれない。

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