文庫 ルーズベルトの開戦責任 (草思社文庫 フ 2-1)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794222664

作品紹介・あらすじ

元共和党重鎮が、戦争反対世論をねじふせ、対日最後通牒を隠してアメリカを大戦に導いたとしてルーズベルトの責任を厳しく追及。太平洋戦史を一変させる重大証言。

感想・レビュー・書評

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  • h1-図書館2019.5.12 期限6/11 読了6/15 返却6/16

  • 無責任な大統領

  • 米下院議員のハミルトン・フィッシュによる本書。非干渉主義者。米国での発表は70年代だが、日本語訳が出たのは最近。これは大勢の日本人が読むべき書。FDR神話に基づいた本は読んでいないので、どちらが正しいかは正直分からないが、ハミルトンの本書には説得力がある。しかし歴史はそんなに単純なものではなく、当時の空気感も含めて今の時点での状況とは大きく異なり、様々な意見を有する人がいる。正しい歴史を判断するのは難しいが、当時世論の80%近くが参戦に反対していた事、FDRは何とかしてドイツとの戦争に関わりたかった事、だから何とかして日本に最初の一撃を打たせて、米国の参戦世論を高めたかった事には大きな説得力がある事を感じた。更にヤルタ会談でのスターリンに対する大幅の譲歩や付録に付いていたドイツの反ヒトラー派からの和解提案の黙殺など、成る程と思わせる事が多い。戦前の日本の体制が続いていたとするとそれも恐ろしいが、違う歴史もあったかもしれないという事には好奇心をそそられた。フーバーの裏切られた自由も読もうと思った。

  • 本書より抜粋
    「私は(日本に対する)宣戦布告を支持するためにこの演台に立たねばならないことを悲しく思う。そして日本に対して腹立たしい気持ちで一杯である。私はこの三年間にわたって、わが国の参戦にはつねに反対の立場をとってきた。戦場がヨーロッパであろうが、アジアであろうが、参戦には反対であった。
    しかし、日本海軍と航空部隊は、不当で、悪辣で、恥知らずで、卑劣な攻撃を仕掛けてきた。日本との外交交渉は継続中であった。大統領は、日本の天皇に対してメッセージを発し、ぎりぎりの交渉が続いていた。日本の攻撃はその最中に行なわれたのである。このことによって対日宣戦布告は不可避となった、いや必要になったのである。
    参戦の是非をめぐる議論の時は終わった。行動する時が来てしまった。
    干渉主義者もそうでない者も、互いを非難することをやめるときが来た。今こそ一致団結して、大統領と、そして合衆国政府を支えなければならない。一丸となって戦争遂行に邁進しなければならない。日本の(信義を裏切る)不誠実なわが国への攻撃に対する回答はただ一つ。完全なる勝利だけである。われわれは血も涙も流さねばならないだろうし、戦費も莫大になろう。しかし、日本による一方的なわが国領土への攻撃に対しては戦争によって対処するしかなくなった。
    私は再三再四、外国での戦争にわが国が参戦することに反対を表明してきた。しかし、わが国が攻撃された場合、あるいは合衆国議会がアメリカの伝統である憲法に則ったやり方で宣戦を布告するなら、大統領および合衆国政府を最後の最後まで支援しなければならない。
    日本民族は、神が破壊せしもの(民族)に成り果てた。日本人は気が違ってしまったのである。一方的な軍事攻撃を仕掛けてきたが、これはまさに国家的自殺行為である。私は先の大戦で志願して戦った。このたびの戦いにも時機を見て志願するつもりである。そして今度も黒人部隊に入って戦いたいと考えている。
    国を守るためにはどんな犠牲を伴っても致し方ない。気の触れた悪魔のような日本を完膚なきまでに叩き潰すためには、どのような犠牲であれ大きすぎることはない。
    戦いの時は来た。手を携え、堂々とアメリカ人らしく戦いを始めよう。そしてこの戦争は、単にわが国に向けられた侵略に対する防衛の戦いというだけではない。世界に、自由と民主主義を確立するための戦いであることを知らしめよう。勝利するまで、わが国はこの戦いをやめることはない。
    国民に、そしてとくにわが共和党員や非干渉主義を信条とする者たちに訴える。今は信条や党派を超えて大統領を支えるときである。最高指揮官の大統領を支え、わが軍の勝利に向けて団結するときである。
    わが国の外交はつねに正しくあれ。万一間違っていることがあろうとも、アメリカは祖国なのである。」

    共和党の重鎮ハミルトン・フィッシュの演説。ルーズベルトに騙されハルノートの存在も隠されているとはいえ、愛国心があって素晴らしい。日本の政治家にこのような人物がいるだろうか?

  • FDRがあれだけの実績の残した割にはアメリカの歴史において評価があまり芳しくないのは以前から不思議の思っていたが、本書を読んでその疑問が氷解した。歴史の見方とは難しいものだ。

  • 「THE OTHER SIDE OF THE COIN,How We Were Tricked into World War 2」の翻訳(2017/04/10発行、1080E)。

    本書は、第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトの失政や策略を明らかにした、アメリカの共和党重鎮であったハミルトン・フィシュ下院議員による著書です。

    アメリカ議会は日本に対する最後通告「ハルノート」の存在を知らなかったという、興味深いことも書かれていますが、第三者を介した話や推測によるルーズベルト批判を行っているところもあり、信憑性は微妙な感じです。
    又、ポーランド回廊問題(ダンツィヒ問題)については、本書を読む限り当時のヨーロッパの複雑な状況を把握できていないように感じ、この辺も評価を下げる要因となっています。

    とは云え、貴重な史書ではあると思いますので、興味のある方は、一度手に取って見られても良いのではないでしょうか。

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著者プロフィール

1888-1991年。ニューヨークのオランダ系WASP(通称ニッカーボッカー)の名門に生まれる。祖父はグラント大統領政権で国務長官をつとめ、父は下院議員に選出された政治家一家。ハーバード大学卒業後、1914年、ニューヨーク州議会議員となる。第1次大戦では黒人部隊を指揮して戦う。帰還後の20年、下院議員に選出(~45年)。共和党の重鎮として、また伝統的な非干渉主義の立場から第2次大戦への参戦に反対するも、対日最後通牒(ハル・ノート)の存在を隠して対日参戦を訴えたルーズベルトに同調する議会演説を行なう。後にこれを深く後悔、戦後は一貫してルーズベルトの、ニューディール政策に代表される議会を軽視した国内政治手法とスターリンに宥和的な外交を批判し、大統領の開戦責任を追及した。

「2017年 『文庫 ルーズベルトの開戦責任』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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