私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット: 中国の富・権力・腐敗・報復の内幕

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794225993

作品紹介・あらすじ

起業家である筆者は、中国の権力と富の頂点に登り詰めるが、突然、元妻で共同経営者のホイットニーが失踪する(2017年9月、今も行方不明)。彼の、ユニークでセンセーショナルな回想録は、現代中国の、富を生むメカニズムの中で実際に起こっていたことを暴露した本だ。刊行以来、話題となっている。

一九四九年の共産主義革命のあと、デズモンド・シャムの祖父(蘇州の一族)は、かつての地主や富農が含まれる「黒五類」という卑しい階級に入れられた。それはシャム(沈)家が烙印を押され、貧困に陥ることを意味した。その結果、上海の貧しい教員の父母のもとに生まれたデズモンド(1968年生まれ)は、成長するにつれて、自分の人生をまったく違ったものにすると心に誓う。

デズモンドは、小学生の時、母の一族が住む香港へ移住、苦学(皇仁書院)するが、水泳選手として認められるなど、懸命な努力によってアメリカの大学(ウイスコンシン大学)へ留学、学位(経営学)を取得すると、中国に戻ってビジネスの世界に飛び込んだ。その時、中国経済は江沢民下の改革開放経済の中で急速な発展を遂げていた。ビジネスチャンスはいたるところにあった。そこで出会ったのが、やがて妻となる、教養豊かで彼と同様の野心を持ったホイットニー・デュアン(段偉紅)である。彼女は、男性が支配する中国社会で成功してみせると固く決意していた。その秘訣は権力機構や有力者とのコネ(グアンシー=関係性)だと言った。

デズモンドとホイットニーは、有能なチームを作り、「赤い貴族」の頂点に位置する人々(温家宝一族、特に温家宝夫人である張培莉、など)との結び付きに助けられて、一躍、中国の超資産階級の仲間入りをする。彼らは平安保険株の上海証券取引所への上場で大金をつかみ、その後北京首都国際空港に中国一の巨大な航空貨物施設(物流センター)を建設し、続いて、北京の高級街区ジェネシス(啓皓)北京の建設にかかわる。ここには安藤忠雄設計の美術館や北京でトップクラスのホテル「ブルガリ・ホテル」がある。華々しい成功を収めた彼らは、プライベートジェットで移動し、数百万ドルをビルへの投資や寄付に使い、高価なマンションや、車、美術品などを購入する。

ところが2012年以降、習近平体制下の腐敗一掃運動の広がり、それに伴う権力闘争に巻き込まれたか、二人の運命は決定的に分かれ、二度と引き返せなくなる。2017年、息子と一緒に海外に住んでいたデズモンドは、元の妻ホイットニーが、職場の同僚三人と共に姿を消した(官憲に拉致され拘束されたらしい)ことを知らされる。

この本はデズモンドの物語であり、自ら語ることのできないホイットニーの物語である。新中国の政治経済体制の中で実際に何が起こっていたかを当事者の眼で描いた稀有な記録。一代で財を成した新興企業家たちの前に何が待っているかを実例をもって描いた本である。

感想・レビュー・書評

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  • 失踪
    父と母 上海1968‐1979
    新世界 香港1978‐1989
    投資ビジネス ウィスコンシン・香港1989‐1997
    ホイットニー 北京・上海1997‐2002
    結婚 北京・カナダ2002
    張おばさん 北京2001‐2002
    温一家 北京2002‐2003
    平安保険株 北京2002‐2004
    空港プロジェクト 香港・北京2001‐2005〔ほか〕

  • 鄧小平の解放政策以降、中国経済の急激な成長とその裏側。驚きを持って読んだ。
    カネと権力と保身と身内の利益に奔走する共産党幹部とその取り巻き。こんなことが起きているのではないかと漠然とは思っていたが、ここまで赤裸々に暴露されるとその事実は衝撃だ。
    もちろん本書は著者1人が記したもので裏のとりようもないことばかり。それでも細部は置いても大方はこのようなのだろう。
    著者の勇気に感謝するとともに息子さん共々に無事であられますように。

  • 字が多すぎて読む気にならなかった

  • 中国北京において不動産開発などで一財を成した著者が半生を振り返る。かつて共同経営者だった前妻は当局に拘束され行方知れずとなり、著者自身はイギリスで息子と生活している。
    とても興味深かったのは、中国でのビジネスの仕方が日本や欧米とは根本的に異なっており、政府や共産党幹部などの有力者との特別な「関係」に依存していること。著者とビジネスパートナーの前妻は温家宝元総理の奥さんとの関係を使って成功を収めてきた。有力者と個人的な繋がりがなければ、錯綜する様々な許認可がスムーズに降りることはない。役人や赤い貴族の姉弟は見返りに、接待を受けたり、ビジネスの持分を持たせてもらったりすることで利益を享受している。
    本書初めの親に連れられて上海から香港に流れ米国留学し香港のPEファンドに就職する下りは良くある話でしかないが、北京に移ってから前妻に出会って一気に成功を収めていく箇所からは正にチャイナドリームの体現であり大変ドラマチックで面白く読めた。
    香港で育ちアメリカへの留学経験もある著者は「関係」中心の中国の在り方に疑問を持っていた述べているが、訳者は後書きでそうした言説は欧米向けのエクスキューズにすぎないとの見方を示している。
    欧米と中国の文化の違いを感じたのは、ニューヨークでの治療の際に医師個人や家族を接待したエピソードや、ニューヨークタイムズに記事が載るのを記者の台湾人の奥さんに情で訴えて止めさせようとしたエピソード。結果的にどちらも役には立たなかったようだが、違う価値観で物事が進んでいることを分からせるものだった。

  • 一個人の見解なので、これが全て事実かどうかは疑問だ。しかしながら、中国の権力構造や腐敗の一端が垣間見れる、貴重な本だと思う。

  • ドキドキしながら最後まで読みました。
    国家と地方、要人と経営者、人と人、色んな角度で中国国内が垣間見れます。

  • 「関係」をベースとした中国でのビジネスの善悪両面が垣間見える。

  • 中国の内幕が、その当事者を持ってして語られる貴重な本。人間の欲望の負の側面に満ちている。

  • 習近平恐るべし。
    後半はスリリングです。

  • 中国の政治・社会・経済の一端とともに、現代中国の富裕層の桁違いな資産や贅沢、そして、それがどのように形成されたのか、誰がそうやって儲けられるのかが分かる。結局、中国の共産党はあらゆるものを支配しているし、政治権力につながる赤い貴族が(政治的に失敗したり、極端にひどいことをしなければ)楽して豪奢な生活を送れるようにできている。国のトップがそうだから、様々な役所の小役人もこれを真似して立場を利用して利益を引き出そうとしている。これでよく経済成長ができているものだと思うが、中国全体の生活水準も着実に上がっているようなので、やはり膨大な人口や巨大な市場にはそれだけの余地があるということだろうか。

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著者プロフィール

デズモンド・シャム(Desmond Shum)
1968年に上海で身分の低い教員の家庭に生まれる。9歳のとき香港に移住し、名門の皇仁書院に入学する。アメリカのウィスコンシン大学で金融と会計を学び、1993年に卒業、香港に戻って株式仲買人となる。その後、投資会社に勤務しているときに、のちに妻となるホイットニー・デュアンと出会い、共同で都市開発事業に乗り出す。二人は、改革開放の好景気に乗って、北京空港の物流センターや北京中心部の再開発などの事業を成功させ、莫大な資産を築く。現在はホイットニーと離婚し、一人息子とイギリスに在住。

「2022年 『私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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