文庫 経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策 (草思社文庫 ス 4-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226082

作品紹介・あらすじ

不況下において財政刺激策をとるか緊縮財政をとるかは、
人々の健康、生死に大きな影響を与える。
世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、サブプライム危機後の
大不況まで、各国の統計から、公衆衛生学の専門家が検証。
同じように深刻な不況へ陥った各国が、異なる政策をとった結果は、
国民の健康にどのような違いを生んだか? 
長年の論争に、イデオロギーではなく、「国民の生死」という
厳然たる事実から答えを導く一冊。
緊縮財政が著しく国民の健康を害して死者数を増加させるうえ、
景気回復も遅らせ、結局は高くつくことを論証する。



第1部 過去の「自然実験」に学ぶ
 第1章 ニューディールは人々の命を救ったか
 第2章 ソ連崩壊後の死亡率急上昇
 第3章 アジア通貨危機を悪化させた政策

第2部 サブプライム問題による世界不況に学ぶ
 第4章 アイスランドの危機克服の顛末
 第5章 ギリシャの公衆衛生危機と緊縮財政

第3部 不況への抵抗力となる制度
 第6章 医療制度改変の影響の大きさ
 第7章 失業対策は自殺やうつを減らせるか
 第8章 家を失うと何が起こるか

結 論 不況下で国民の健康を守るには

感想・レビュー・書評

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  • 「ボディ・エコノミック」、すなわち「ある経済政策の下に組織された集団。その政策に影響を受ける集合体としての国民(ないし人々)」を念頭に置いて、この本は書かれている。

    その代表例が、2008年のリーマンショックを発端とする世界金融危機で、国家の財政破綻の危機を迎えたアイスランドだろう。

    IMFからは融資(21億ドル)と引替えに、緊縮財政策を条件に出された。これで苦しんだのは、1997年頃のアジア通貨危機で救済を受けたタイ、インドネシア、韓国である。これらの国々では貧困率が急上昇し、医療費もあがったため、死亡率が急増した。さらに、経済回復にいたっては、IMFの条件をのまなかったマレーシアよりも遅かったのだ。逆にマレーシア政府がとった政策は、投機的資本の抑制、社会保護政策であり、積極財政策を講じたのだ。

    IMFはソ連崩壊後の連邦諸国に対する策でも、特にロシアに対しては急激な民営化を推進するショック療法を講じたことで、同国の死亡率や自殺率を上げた。死亡率に関しては、ソ連崩壊前の1970年代の数値にまで戻っていない。

    このような歴史的背景がある中、アイスランドはIMFからの条件、さらにイギリス・オランダ政府から要求されていた「アイスセーブ(ランドバンキ銀行による高金利ネット預金)返済」の意思決定を、国民投票で決定した。

    国民はどちらも拒否した。そこで政府はGDPの58%を財政支出し、福祉予算は削らずに歳出削減し、歳入は富裕層への増税を課すという、ユニークな政策を講じた。

    結果、2011年には経済成長率4%を達成し、いち早く経済停滞から抜け出すことに成功したのだ。

  • 不況時には失業や健康への対策が第一にこなければいけない。

    近代の数々の不況への対策でとった政策がどんな結果をもたらしたかがまとめられている。

    健康と良い人間関係はやっぱり大事

  • 縦軸原点を恣意的に設定するのはやめてほしい。公衆衛生のくせに年齢階級別死亡率を出さないというのは故意だろう。

  • 不況下での経済政策――緊縮財政か公共支出増か、で人々の健康状態や自殺率に大きな差が出る。

    同じ苦境で違う政策をとった州や国でどういう違いが出たのかを見ることで検証する。ニューディール政策、アジア通貨危機、リーマンショック後の金融危機などの際、政策の差はどういう結果をもたらしたのか。統計データも用いて論じている。

    結論としては、不況下で緊縮財政政策を採ると人々の健康状態や自殺率を悪化させる。

    公衆衛生学・医学の研究者である筆者たちからすると、IMF、財務省が人々を死に追いやっていると。「借金」というと問題であるかのように思いがちだが、冷静に判断する必要がありそうだ。

  • わかりやすい
    荒さはあるけど

  • これは良い(?)文庫化。

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著者プロフィール

デヴィッド・スタックラー(David Stuckler)
公衆衛生学修士、政治社会学博士。イェール大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学などで研究を重ねる。オックスフォード大学教授を経て、現在イタリアのボッコーニ大学教授。著書にSick Societies: Responding to the Global Challenge of Chronic Diseaseがある。

「2022年 『文庫 経済政策で人は死ぬか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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