アフリカの日々 (ディネーセン・コレクション 1)

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794913364

感想・レビュー・書評

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  • 「アフリカは一瞬にして果てしなくひろがり、その大地に足をふみしめるデニスと私は無限に小さくなった。」

    20世紀前半、アフリカで農園を経営したデンマーク女性の回顧エッセイ。
    時代もあるにしても現地の人々はもう同じ生き物と思っていないくらいで、その一種無邪気なくらいの偏見に前半は読むのがしんどかったが、文章がめちゃくちゃに良いので、読むのをやめられなかった。
    手帳につらつら書いたこと、という体裁で、短い話が並べられている4部は、寓話や神話のような色合いを帯びている。
    そして、農園を手放さざるを得なくなり、大切な人も失う5部は胸が詰まる。
    圧巻の文章力だった。
    筆者の小説も是非読みたい。

  • すべてが言葉だけで語られたというのが信じられないくらい、ケニアの風景や生き物たち、人々の暮らしぶりが鮮やかな映像として記憶に残っています。うっとりしながら読みました。すばらしい時間だった。

  • ディーネセンは『バベットの晩餐会』が有名だけれどもこの本はその前に書かれている、男爵と結婚してアフリカ(ケニア)にわたり農場の経営者となるのだが、そこで現地の人々とのかかわり合いが丁寧に描かれている。
    おそらく医者の免許は持っていないのだが、現地の人々の怪我や病気の人の面倒をみたり、火傷には蜂蜜を塗ってあげたりしているうちに、手先の起用な子供が料理が得意だということがわかり調理の使用人になる。筆名はアイザック・ディーネセン(男性の名前)、本名はカレン・ブリクセンであり、ブリクセン男爵夫人とも呼ばれたが、もちろんそんなことはアフリカの人々には関係ない。自宅には時々ヨーロッパの要人が来客してくる。この物語の語り手はどうも女性であるらしいというのはだんだん分かってくるのだが、あくまで著者は男性名なのである。
    現地人の独特の言い方、考え方には日々発見がある。丘の火事を知らせるのに「神がやってくる」と伝える言い方にはっとさせられる。しかし神もいろいろなのだ。アフリカで信者を獲得しようとするキリスト教にも複数の宗派が存在し、回教徒(イスラム教徒)もいたりする。はたして神に違いはあるのか。
    あるときは美しいガゼルの子を見つけて自宅で飼いならす。可愛さのあまり犬より手厚くもてなすが、成長したある日ふいに屋敷から出て行ってしまう。その後、パートナーの鹿と子供を連れて庭に帰ってくるシーンには心動かされる。

    今の時代に日本語で読むことになる読者は、著者が「カレン」という名の女性であることを知っているわけで、男爵夫人のはずなのに、本の中に旦那がどうして出てこないのかと思えば、出版は「アイザック」という男名なわけで、性が分かるようには確かに書いていないのであった。(後で分かる箇所がある)
    ヨーロッパの白人女性がアフリカでこんなふうに暮すのかと知ることができるということは純粋に面白く読める。映画『愛と哀しみの果て』の原作。

    長い本だった。長い旅をしているような読書だった。あとがきにまた別の物語がある。男爵夫人となったディーネセンは気の毒にも夫に性病をうつされて治療のためにヨーロッパに戻ったこともあったとか、ハンナ・アーレントはそれを知っていたらしいということまで今となって分かっているのだが、さすがに梅毒云々というところまでは本には書かれていない。
    おそらく多くの人が読んだであろう、歴史がある手垢のついた本を、図書館から借りて読んだ。その共有すら、愛おしい。

    **

    ちなみに村上春樹の『1Q84』BOOK3単行本p105に天吾が看護婦に『アフリカの日々』を読み聞かせるシーンがあるが、サリンジャーの『ライ麦』にも『アフリカの日々』が登場するシーンがあり、春樹はそれを意識しているのかもしれないが、どう繋がるのかはいまいち不明。

  • 男爵夫人となった白人女性が女領主のように過ごしたケニヤでの日々を回想して綴る。執筆の男性はソマリ人で、住民のキクユ族は彼が羊飼いのようにまとめている。マサイの人々は戦いを封じられた戦士であり、、、など、微妙な力関係などが興味深い。
    著者はアフリカの人々、動物、自然それぞれに精神性をみてとり、気高さを見い出す。

    それはある意味、白人女性の美しい誤解や理想化の賜であって、真のアフリカの姿とは言えないだろう。しかし、アフリカを故郷と呼ぶ白人のメンタルに個人的に興味があり、参考になった。

    メリル・ストリープが演じた映画は全編ラブストーリーなのに対し、この原作は恋人のことを語るのはー章分に抑えられている。ただしこのー章に物凄い恋愛を感じた。
    著者は強い女性としての自分を書こうとしたが、周囲では映画の主人公のように周囲には映っていたのではないのかな。
    自然描写が美しく、第一次大戦から戦間期の、白人富裕層にとって楽園のようなアフリカへの募情あふれる作品。

  • 文章が詩的で美しい。そこに描かれるアフリカそのものがきっと美しいのだろう。

  • 知人に薦められて読んでみる。
    現代は"Out of Africa"、アフリカでよく見るいかにもなお土産屋の名前はおそらくここからきているんだろう。

    デンマークからナイロビ近くに入植した農場主として、アフリカの自然の中での日々が淡々と描かれる。子供が老人がそしてライオンなどの野生動物が死んで、殺される場面が多く、そこに逆説的に生きることと生き残ることの尊さが浮かび上がってくる。

    何度も読みたくなる不思議な魅力をもった一冊。

  • 「アフリカの日々」はディーネセンがアイザックという男名前のペンネームで書いた自伝小説である。
    1914年、北欧からアフリカへと渡り、ケニアでコーヒー園を経営する女農場主として18年生きた間の、土地の人々との出来事。アフリカの大自然との出来事。白人との付き合いなどが、緻密な筆で描かれている。
    最初は、「キャッチャーインザライ」と「1Q84」に出てくる本なので興味を持った。翻訳本特有の読みにくさに閉口したが、次第にアフリカの世界観へと引きずり込まれた。乾いた大地にやって来る雨期。部族の習慣と気質。特にマサイとキクユは印象的だった。
    印象的と言うとブッシュバックのルルのエピソードやンゴマの祭りがそうだった。
    やがて農園は行き詰まり手放す事となり、彼女もアフリカを後にした。
    壮大なアフリカのサーガというだけはある。しみじみアフリカの土埃っぽい風を吸い込んでみたい方は是非どうぞ。

  • -山の輪郭は、距離というものの力によって次第にやわらげられ、やすらかな面影となって、私の記憶に残った-

    アフリカの農園当主となった女性の人生ドラマ。男として生きることを決意したディネーセンと重なります。アフリカの大地は荒々しく、やさしく、そこに生きる人の心と体を創るんだなあ。小さな島国で、小さな日常に悩むより、外に出て深呼吸して生きていこう、と思えます。生命力美。描写力がまたすばらしい。映画『愛と哀しみの果て』の原作。

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